聖剣女伝説_3

「あ、あの場所は広く、所々瓦礫が崩れて隠れやすいのでドラゴンが根城にするには絶好の場所なんだな。出没した場所から察するに、そこを拠点にしている可能性が

高いんだな」

 丘の上にある神殿廃墟への道を歩きながら、セツメイが説明する。

 討伐隊は3部隊に分かれ、タイノ率いる第1部隊はドラゴンが潜む可能性が

最も高い丘の上の神殿廃墟に向かう。うさみとソラスもこれに同行する事となった。

 他の部隊はふもとの周囲を散策する部隊と、状況に合わせて対応できるよう

教会付近で待機する部隊に分かれた。

 丘の上は木々が生い茂り、道は一応舗装はされていたが普段はあまり人が

通らないようで、所々荒れている。

「あ、その辺りは土が崩れやすいので注意してください」

 討伐隊を先導していたのはソラスだった。

 うさみは道すがら、ソラスに問いかける。

「ソラスさんは、この辺りの道に詳しいのですミね?」

「ええ、丘の上の神殿には、何度か足を運んでいるんですよ」

「廃墟になっているのにですミ?」

「ええ……実は、私には昔の記憶が無いのです。ちょうど1年前くらいでしょうか、気付いた時にはこれから向かう神殿の廃墟の傍に居て、道もわからず麓に

下りたところ、丁度マッコイ教会があったので、そこを訪ねてそのまま

住まわせて貰う事になったんです」

「なんと、記憶喪失という奴だったのですミね」

「ええ、覚えていたのはソラスという名前だけで、

それと、この妙な力を持っていたせいで聖女なんて呼ばれてしまって」

 ソラスは片手を掲げて見つめるとその手の平から、金色の光が溢れ出す。

「おお、これが噂の魔法とは違う不思議な力って奴ですミか」

「これで人の怪我を治したり、何かバリアーみたいな結界も作り出せるみたいで。

それで、神殿の傍に居たのはあの神殿と何か関係があるんじゃないかって

何度か入って中を調べたことがあるんです」

「あ、あの神殿は伝説があるんだな」

 後ろから、並んで歩く2人の間にセツメイの頭が割り込んできた。

 うさみとソラスはぎょっとしながら間を開く。

「昔、魔王と戦った勇者が使っていた聖剣が封印されていたという噂なんだな」

「え、ええ。私も、その言い伝えは教会で聞きました」

ソラスは少し困惑した視線をセツメイに向けた後、視線を道の先に戻す。

「一度魔族を退け、平和になった後、再びこの世界を脅かす存在が現れた時の為に、

そこに残していったと言われているんだな。そしてその聖剣は意志を持ち、

気たるべき時に、その封印が解かれると言われているんだな」

 セツメイはやたらメガネを指で押し上げたり下げたりしながら話す。

「ほーん、それはなかなかファンタジーですミね」

 うさみは半信半疑と言った表情で応えた。

「ま、まあ、遠い昔の話なんだな、これまで何度も調査はされたらしいのだけど

それらしき痕跡は発見されなかったんだな。ああでもたしか、去年くらい

だったのだな、遺跡の調査をした隊員が奥に隠し部屋のようなものを発見したという話があったんだな」

「へえ、それは知りませんでした」

ソラスはそう言ってセツメイの方に目を向ける。

「と、とうとう何か見つかるかもしれないと、調査隊は意気揚々と部屋の中を

探索したらしいのだけど、結局そこは蛻の殻で、なんにもなかったらしいんだな」

「まあ、それはとんだ肩透かしでしたね」

「で、でも何かがそこにあった事は間違いなさそうという話だったんだな。

誰かが、そこにあったものを調査隊より一足早く、持ち出したのではないかと、

僕は睨んでるんだな」

「聖女と聖剣ですミか……それは、何か関係があるのかもしれませんミね」

 うさみがそう言った後、ソラスが道の先を指した。

「見えてきましたよ、あれが、その神殿です」

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