昆虫大戦争_7

 自警団の放つ大砲の弾を巨大カマキリは恐るべき動体視力で弾いていた。

 しかし、さすがに全弾というわけにはいかず度々被弾してよろけ、

体には所々損傷の跡が見える。

 巨大カブトムシとは違い、こちらは大砲の弾でもダメージを負っているよう

だった。

「よし、効いてるぞ! そのまま打ち続けて足止めしろ!

爆弾で止めを刺す!」

 先程の指揮官らしき男がそう言って、あのクラシカルな爆弾を用意させる。

「うさみちゃん、このままじゃカマキリさんが!」

 ヘル子がうさみの方を向いて言う。

「月星ボールですミ! 怪我を負った今ならいけるかもしれませんミ!

うさみが行きますミ!」

 巨大カマキリがあの爆弾を喰らったら恐らく死んでしまうだろう、

そうなる前に封印しようとうさみは巨大カマキリに走り寄る。

「いっけーっ! ですミーッ!!」

 うさみは大きく振りかぶり巨大カマキリ目掛けて月星ボールを投げる。

 その時。

「た、たすけてくれ~」

 突如壊された瓦礫の中から逃げ遅れた見知らぬおっさんが突然飛び出してきた。

「あっですミ」

 そのおっさんにボールが当たり、おっさんは見事に封印される。

「お、おい……今おっさんが突然現れて突然消えたような……」

 自警団員の一人がそれを目撃していた。

「何言ってんだ? 気のせいだろ?」

「いやしかし……」

自警団たちは少し辺りを見回すが、すぐに巨大カマキリに目を戻した。

「お、おっさんを封印してしまいましたミ……!!」

 うさみは青ざめた顔で立ち尽くしていた。

「まあ封印されている間は時間がほぼ止まるので健康上の問題はありませんよ」

 黒魔女が後ろから声をかける。

「大丈夫だって。良かったねうさみちゃん!」

 ヘル子は呑気に言ってうさみの背中を軽く叩く。

「また……やっちまいましたミ……」

 うさみはまたその場に崩れ落ちるがすぐにそんな場合じゃないと立ち上がり、

まずはおっさんを封印したボールを拾いに行こうとする。

「おい! 危険だ! 離れてなさい!」

「ちょっ、ちょっと!? 止めないで欲しいですミ!

見知らぬおっさんがですミ……!!」

 しかしうさみたちに気づいた自警団に遮られ、強引に後ろに下げられてしまう。

そして指揮官が爆弾を掲げる。

「投げるぞ!離れろ!」

 そう叫んだ後、爆弾が投げられ、巨大カマキリの足元に爆弾が転がる。

「ああっ、まずいですミ!」

 巨大カマキリの方に目を向けて、うさみが声を上げる。

 爆発まであと数秒。

「やめてくれえーーーーーっ!!」

 男が一人、自警団の脇から回り込み、全速力でカマキリの元まで走ってゆく。

「何やってる!? 戻れ!!」

 男に気付いた自警団の一人が遮ろうと立ちはだかるがその男はそれを跳ねのけ

カマキリの足まで駆けつけると爆発寸前の爆弾を掴み人の居ない方へ投げる、

だがすぐに空中で爆発してしまう。

 男は大きく吹き飛ばされ、巨大カマキリも爆風で体制を崩し、近くの瓦礫に

倒れ込む。

うさみは自警団を押し退けその男に駆け寄る。

高級そうな服もボロボロになり、大けがを負ったその男は、

巨大カマキリの飼い主、カマーであった。

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