昆虫大戦争_6

 うさみが地に伏したまま項垂れていると、道の向こうからガラガラと

大きな台車を引いて来る音と、複数の人間の声が聞こえてきた。

「いたぞ! あれだ!」

「2体いるぞ? そんな報告聞いてないが!?」

 自警団の援軍である。何台もの台車のついた大砲を引いて駆けつけたのだ。

「構わん! とにかく狙える方から撃て!」

 その中の指揮官が叫ぶと次々と大砲に弾が装填され、狙いをつける。

当てやすいと思ったのであろう、図体の太い巨大カブトムシから先に狙われた。

「撃てーーーッ!!」

 掛け声とともに、次々と大砲から弾が発射される。

「ああっ、カブちゃんが!」

 いつのまにかカブトムシに名前をつけていたヘル子が叫ぶ。

 巨大カブトムシの強靭な外骨格には、多少の砲弾が当たった跡こそ残るものの、

その内側の本体にまではダメージが届かないようで、巨大カブトムシは

のそのそと大砲の方に向きを変え、突進してくる。

「まずい! こっちに来るぞ!」

 慌てて大砲を引き、退避しようとするが巨大カブトムシの角で

一斉に薙ぎ払われてしまう。

「全員! 一旦その巨大カブトムシから離れろ!」

 指揮官の声が響き、巨大カブトムシ周辺の自警団が一斉に散る。

指揮官が取り出したのは黒い球状の形に導火線のついた、クラシックなデザインの、

爆弾だった。

「喰らえぇーーーっ!!」

 そしてボウリングの弾を転がすような洗練された綺麗なフォームで

巨大カブトムシの身体の下に爆弾を投げ入れる。

「爆弾だって!? どうしよう、うさみちゃん!?」

 カブトムシの方に近寄ろうとしていたヘル子がうさみの方を振り返る。

「危ないですミ! ヘル子ちゃん離れますミ!! お館様は前に出て壁になりますミ!!」

「何でですか」と言う黒魔女の後ろにうさみはヘル子を抱えて回り込み、

ヘル子に覆い被るようにして地面に伏せる。

 直後、大きな爆音と爆風が同時に巻き起こる。

 うさみ達の位置は爆発地点からはそれなりに離れており、

大した衝撃は無かったが、爆風で起こった砂ぼこりに全身が包まれた。

「うわああ、うさみちゃん大丈夫ー!?」

「大丈夫ですミー!!」

 やがて風が止むとうさみたちの視界が開ける。

 突っ立ったままの黒魔女は砂ぼこりで全身真っ白になっており

「やれやれ」と言いながら髪を手のひら状に変形させぺしぺしと全身の砂を

払っていた。

 うさみは体を起こし巨大カブトムシの方を見る。

「カブトムシがですミ……!」

 さすがに今のは効いたようでカブトムシは巨体をひっくり返し藻掻いていた。

「よし! 効いているぞ! もう一発用意しろ!」

 指揮官がそう言い、自警団たちはは巨大カブトムシに止めを刺すべくもう

一発の爆弾を準備する。

「カブちゃん死んじゃうよー!」

 ヘル子も体を起こし声を上げる。

月星ムーンスターボールですミ!今なら弱ってますミ!」

 そう言ってうさみは黒魔女からふんだくっていたボールをポケットから

ひとつ取り出す。

「あっ、わたし投げたい!」

「わかりましたミ、任せますミ」

そう言ってヘル子はうさみからボールを受け取ると巨大カブトムシに駆け寄り、

力いっぱい月星ムーンスターボールを投げる。

「えーい!」

 自警団たちを後ろからすり抜けギリギリボールが届くと巨大カブトムシは

それに吸い込まれ、数回揺れた後カチッと音がして見事封印された。

「やったぁー! 一発ゲットぉー!」

ヘル子は片手を上げてジャンプする。

「だーっ! ヘル子ちゃん! ゲットとか言っちゃダメですミ!

封印! 封印成功ですミ!!」

 自警団たちには突然巨大カブトムシが消えた様に見え、戸惑っていたが、

とりあえずいなくなった事を確認すると巨大カマキリに目標を変え、走って言った。

 ヘル子がカブトムシが封印された月星ムーンスターボールを拾うと、

うさみ達も巨大カマキリの方に向かった。

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