死者蘇生の対価_6〈完〉
「本当に、ありがとうございました!」
ライトは清々しい、晴れやかな表情で黒魔女に感謝の言葉を伝える。
青年ライトは黒魔女亭の門の前でうさみと黒魔女に見送られていた。
もちろん隣には、最愛の妹ヒダリーも並んでいる。
ヒダリーの体は生前の、儚くスレンダーな体系に戻っていた。
少し口惜しそうに平らに戻った自分の胸をペタペタさわっている。
だが、その心の内は、また兄と暮らせる喜びに満ちていた。
「いろいろ無礼な振る舞いをしてしまい、申し訳ありませんでした」
「いえいえ、最初からこの方法を提示できていれば、
あんな悶着起きずに済んだのですから」
謝罪するライトに黒魔女はひらひらと手を振って返す。
一歩引いた場所からその様子を眺めていたうさみは、ライトの胸部に目をやった。
彼は巨乳になっていた。
あの時、地下で黒魔女はいきなりライトを殺すと、
すぐさまヒダリーと共に奥の実験室に運んだ、
実の兄であるライトの体であれば、魔法を用いた簡単な加工で、
生命維持に必要な部分だけを妹の体と置き換えることが出来るのではないか
と思い付いた、体格の差もあったがその程度の調整などは
黒魔女の手に掛かればさしたる問題ではなく、
それをぶっつけ本番で見事成功させたのだった。
失敗したらどうするつもりだったのかと、うさみはブチギレたが、
それにより妹は従来の姿を取り戻すことができた。
その後、ライトの方は最初に妹に行ったのと同じ施法で蘇らせたのだった。
ヒダリーはうさみに手を振りながら、大好きな兄と共に黒魔女亭を後にした。
うさみはそれを何とも言えない表情で見送る。
「まあ……この程度で済んだのなら…お館様の思い付きにしては、
マシな結末でしたミ……?」
結果だけ見れば、青年が巨乳になっただけで済んでいた。
帰ってゆく2人の姿も幸せそうだったので、うさみは今回はこれで良しとした。
ゆっくりと日が落ちて行き、街の方ではぽつぽつと明かりが灯ってゆく。
第1話 死者蘇生の対価 編〈完〉
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