第1話 死者蘇生の対価 編

死者蘇生の対価_1

 その青年、ライト・マーガリンは棺を背負って歩いていた。

 棺の中に眠る遺体は青年の妹のものだ。

溺愛していた妹である。

 小柄で華奢な体つきの儚げな容姿をしていたが、

その外観とは裏腹に、よく笑う、元気で、人をよく思いやる、

誰からも愛されるような少女だった。

 妹の死を知らされた時はまさに、青年は世界が終わりを告げられたかの如く

絶望した。

 これまで騎士として必死に鍛錬に励み、勉学にも打ち込んだ

それがどんなにつらく苦しい日々でも耐えられたのは、その先の未来には常に

愛する妹がいる事を信じていたからだ。

 もはやそれが叶わない世界になど、一体何の価値があるのだろうか。

そんな暗闇の中で青年は思い出した。

「黒魔女亭」

 王都の外れにある森の中にそう呼ばれる館がある、

そこには「黒魔女様」と呼ばれる、

人道を外れ、禁忌を踏み越え、

どんな願いをも叶えられる程の力を得た真っ黒な魔女が住んでいるという。

 それが本当ならば、死んだ人間を生き返らせる事もできるのではないか。

だが、その魔女を頼るという事は、己もまた、人道を外れ、

禁忌を踏み越える事になる。そうも聞いていた

 それでも、たとえ己の全てを犠牲にしても。妹が生き返るなら何でも良い。

青年はそのたった一つの希望を目指し、覚悟を決める。

 そう、この時は確かに覚悟を決めたのだ。

 そのつもりだった。

 自分が目指したものが希望の光などではなく、

暗闇よりもっと暗い、深淵の闇であった事を知るその時までは。

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