第9話 永遠の23歳

「先生、私未成年なんですけど。」

 深夜のコンビニに荷物持ちとして連行された私は不満を伝える。

「のわりには容赦なく買いやがって。」

 コンビニの入口付近に置かれた筒状の灰皿で一服しながら、私が両手に持つパンパンに膨らんだエコバッグを見て先生は舌打ちしている。

「半分は先生のお酒とおつまみ、あとタバコです。」

 私はそう主張する。

「師匠の金でコンビニのた◯のこの里買い占める弟子は普通いねぇよ。」

 呆れた様に溜息と煙を吐いた先生は吸い殻を灰皿に落とし、

「じゃあ帰るか。」

 頭を掻きながら私を促す。


 コンビニの敷地を出ようとした時だった。

「可愛い子2人はっけーん!!」

 大学生くらいの年齢に見えるちょっとヤンチャそうな男性が酒臭い息で私たちの側に来た。

「ヤベェー!!超美人ー!!」

「乳デケェー!!」

 ぞろぞろと仲間を連れて。

 ヤンチャな方々は基本的に先生に御執心の様子だが…

「こっちの子も可愛いじゃーん!!」

 私も目をつけられた。

 どうしたものか…私が、お母さん直伝、伝家の宝刀たるのマッハパンチを繰り出すべくエコバックを置いた時だった。

「ちょうどいい…ウチのバカ弟子に魔法がなんたるか教えてやる。」

 先生はそう笑い、

「「「ギャァァァー!!」」」

 ヤンチャさん方の悲鳴が深夜の街に響き渡る。

 火攻め、水責め、電気に風に土に金属…なんでも御座れな魔法のオンパレードでヤンチャさんたちを瀕死状態にした。


「先生、人目のある場所での魔法の行使は…」

「ダメに決まってんだろ。魔女が魔女ってバレていいのは協会の連中だけだ。」

 私の疑問に当然の様に答える先生。

「では先生はアウトです。」

 協会ヘの通報をすべく、スマホを取り出した私の頭を先生が叩いた。

「このドアホ。空間遮断の魔法使ってんの分かんねぇのか!!」

 空間遮断…よく見れば空間が歪んでいる。

「ったく…本当にお前センスゼロだな。」

 呆れた様に先生は私にデコピンし、

「この空間内なら魔法使い放題だ。まあ、オメェにゃぁ必要ねぇがな。使える魔法が無ぇんだからよ。」

 ケケケと笑いながらタバコに火をつけていた。

 やっぱり先生は意地悪です。

「でも先生、私こんな魔法知りませんでしたよ。」

 未知の魔法(使えないが魔導書で殆どの魔法は勉強している)に私はそう言う。

「そりゃそうだろ、私しか出来ねぇから魔導書には載ってねぇからな。」

「先生は理不尽です。」

 私も流石にムッとする。

「私から言ゃ、なんの魔法か分からなくても、魔力が使用された時点で勘づくのが魔女で、なんの魔法か分からずとも解析と分析を一瞬で出来るのが出来のいい魔女、私の手加減に気付けるのが一流の魔女だ。」

 私の顔にタバコの煙をワザと吐く先生。

 ケホケホとむせ込む私に、先生は続ける。

「魔女見習い、テメェは一応無限の可能性を秘めている。尤も、私の美貌と魔法は超えれねぇけどな。しかし、私は最強で最高の魔女で、世界一の美女。オメェみてぇなドクソな才能皆無な見習いでも、いっぱしの魔女にしてやる。テメェが覚悟決めんならな。」

 先生は私に本気マジな趣きでそう言った。

 私の答えは決まっている。私の夢は魔女だから。

「覚悟は決まってます。魔女になれるなら、自惚れが過ぎるナルシストなババアのイジメにも耐えられます!!」

 ペッコリと頭を下げて言った私の覚悟。そんな私の頭を叩き、往復ビンタをした先生は、

「言っとくけどな、私は呪いの関係で23の歳から老いてねぇんだよ!!永遠の23歳のお師匠様ヘの口の聞き方考えろ!!」

 そう怒鳴る。


「永遠の23歳…」

 プッ、と思わず吹き出した私に、先生は容赦無い魔法連撃を繰り出し、私は死線を彷徨ったのでした。

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