第7話 遅刻してからのお昼休みの過ごし方

「で、転校初日はどうだったんだ?」

 タバコを吹かし、酒を煽る相変わらずの先生との対面しながらの夕食。学校行って帰ってくるまでの時間で、何故こんなにも部屋が汚くなるのだろう。

「どうもこうも、前にいた学校と何も変わりませんよ。誰とも話さないし、寝てたら怒られるし、学校なんてどこも一緒ですね。」

 そう言いながら、先生のお金で買った最高和牛のステーキに齧りつく。

 うん、美味しい。命を戴いている感じが凄い。

「緋音、お前ぇ…才能は兎も角、魔女にゃぁ向いてるよ。」

 ケケケ、と笑いながら、4リットルの焼酎ボトルを大事そうに抱え呂律の回っていない先生は私に言った。

 かなり酔っている。昨晩の惨劇は2度と御免だ。

「はいはい、いいからお水飲みましょうね~、おばあちゃん。」

 強めに平手打ちされた。




−−−−−−−−−−−−−−−−−



「では、行って来ます。くれぐれも部屋を汚さない様にお願いします。」

 制服に着替え、玄関で靴を履く私は、いびきかいて眠る先生に届かぬ願いを伝え扉を開けた。

 転校2日目、学校までは徒歩15分。

 遅刻とは無縁の1時間前行動。

 

「で、なんで遅刻したんだ?」

 職員室で担任にこんこんと説教される私。

「野良猫さんから助けを求められました。」

 可愛いにゃんこを追っかけ回し手懐けていたら、すっかり昼になっていた。まあ、私は人生において大切なことをしていただけなので仕方ない。

「そうか…お前、学校に何しに来てるの?」

「卒業出来たらそれでいいと思ってます。」

 正直に私は答える。

「長い教員生活で、お前みたいな正直者は初めてだ…正直、そういう時代じゃないのは分かるけどさ、一発殴っていいか?」

「先生、暴力はいけないと思います。」

 スマホを掲げそう言う。

 尚、師匠たるヴェネーラ先生からは日に数回ビンタされている。

「嫌な時代…」

 担任からシッシと手であしらわれ、私は職員室を後にし、

「私が悪かったとやろか?」 

 よく分からず、首を傾げる。

 まあいいか、拳骨回避できたし。


 私は気にせずに教室に入った。

「おはようございます。」

 昼休みだけど挨拶は大事。

 変なものを見る目で私を見るクラスメイトの間を抜け、私は自分の席に着く。

「お弁当は焼き肉定食です。」

 通学用のカバンからホットプレートを出し、別に持って来た保冷バッグから特売のお肉を出す。

 コンセントは…

 ああ、ありました。

 黒板近くにある電源タップにコンセントを挿し、ホットプレートに油を引き、鉄板が温まるのを待つ。

「頃合いですね。」

 ジュワァ〜、と肉の焼ける音と香り。

 食べるだけではない。焼き肉は音と香り、命をまるっと頂く儀式なのだ。


「光乃…お前何してんだ?」

 私がお弁当を楽しんでいたら、背後には大変ご立腹な様子の担任の先生。

「お弁当を食べてます。まだお昼休みですよね?」

 モッキュモッキュとお肉を噛みしめ、味わいながら私は訊ねました。

「昼休みだよ…んでさ、ここ学校だよ…」

 私は襟を掴まれ立たされました。

「なんなのお前!!こんな生徒初めてなんだけど!!」

「私は前の学校でも同じ様なことを言われたので、初めてではありませんよ。」

 

 その日、私は日が沈むまで、いろんな先生方からお説教を受けた。



 遠い実家のお母さん、私に世間の常識と魔法を教えてくれたお母さん…

 どうやらアナタの教えは、現代社会では非常識らしいですよ。






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