第6話 サプライズ.2

 顔を赤くしたまま気まずそうに睨むオーシュは、気持ちのやり場に困り果てて声を荒らげる。


「ばっ、お、お前が言えって言うからだろうがっ!」

「だ、だからって、そんな棒読み……ひ、ひどっ……っ! あははははっ!」


 アリーナもセレジェイラも、涙を流しながらお腹を押さえて心底おかしそうに笑い続けている。

 憤慨だと言わんばかりに、オーシュは眉根を寄せ居心地が悪そうに顔を顰めていた。


「う、うるせーな! 何だよ、悪かったな! 不器用で!」

「あははははっ! ほんと不器用っ! 信じられないっ!」

「ふふふふ」

「だーっ! もう、しつけぇな! いつまで笑ってんだよ! ったく!」


 いたたまれず、オーシュは怒りを露に怒鳴りつけると、セレジェイラはまだこみ上げる笑いに肩を震わせながらも涙を拭い、彼を見上げた。


「なんだか、別人みたい……」

「……は?」

「だって、オーシュはそう言うのに慣れていそうだったから」

「……悪かったな。ベタで」


 赤らんだ顔のまま不機嫌そうに視線をそらしたオーシュに、セレジェイラはニコリと微笑んで首を横に振った。


「久し振りに会っていきなりオーシュの意外な一面を見られたから、私はなんだか得した気持ちです」

「……お前、随分変わったよな」

「そう、ですか?」


 セレジェイラは目を瞬き、じっとオーシュを見上げる。するとオーシュは片手で自分の顔を覆い隠し、顔をそらす。


「……悪い。別にお前が悪いわけじゃねぇけど……、直視できねぇ」


 そんなオーシュを見ていたアリーナは、困ったように笑うと彼を代弁するかのようにセレジェイラに話しかけた。


「ごめんなさいね、セイラ。この人、気づいてない時には恥ずかしい事でも割りと素で何でもやって退けるくせに、誤魔化しが利かないくらい自覚すると途端にダメになるタイプみたいなのよね」

「そうなんですか……」

「意外とそう言うのには慣れてて、平気そうだと思ったでしょ。でもね、実はそうじゃないお子様なのよ」


 いたずらっ子のように目を細めて笑うアリーナがそう言うと、オーシュは彼女に噛み付いた。


「余計な事言うんじゃねぇよ! 馬鹿かお前!」

「はぁ? 恋愛下手な人がよく言うわよ。見た目とのギャップがあり過ぎよ、あなたは」

「うるせぇ! ほっとけ!」


 不機嫌そのものな顔を浮かべ、オーシュはいよいよ居ても立ってもいられず踵を返した。


「ったく、相手してらんねぇ!」


 吐き捨てるようにそう言うと、彼はズンズンと足を踏み鳴らしながらその場を去っていってしまう。

 そんな彼を見つめ、セレジェイラは少しばかり気まずそうに呟いた。


「少し、悪い事しちゃいましたね」

「いいのよ、別に。あとでちゃんと二人で話しをする時間作るからね。あ、そうだ。皆にはまだ会ってないんでしょ? セイラが帰ってきたって知ったらみんな喜ぶわ! 新しい子たちもいるんだけど、会ってあげてくれる?」

「はい、もちろんです!」


 アリーナはニコリと以前と変わらぬ優しい笑みを返した。

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