第5話 禁書
一週間の奉仕活動。いわゆる掃除である。
外は寒いだろうという配慮の元、図書室の禁書棚の掃除を命じられた。
「何が禁書よ。魔法でも書いてあるのかしら」
何か現代タッチな本が落ちて来た。
あれ? これどこからどう見てもBLじゃん。
「これすごいです。こんなにもこれは」
禁書棚はそう大きいスペースではない。そうかこの禁書というのはここの学園生が代々抱えてきた煩悩を集めた部屋なのか。
「サーシャダメだよ。早くお終わらせるよ。こんなの見てるって知られたら、大変よ」
大体この部屋の何を掃除するっていうのよ。
「進んでいるか」
司書のユミフ先生だ。
「この部屋の何を掃除しろと」
「ここにある物の焼却処分だ。早く運び出せ」
私たちは初めての文献を運び出した。
まぁ、数冊無くなっても問題はないだろう。
サーシャも日本の男性の仕組みを知ってオタク文化のいい勉強になる。いいこともある。役得だ。
「そうだ、付け加えるが」
もう一度、図書室をのぞいたユミフ先生はこちらへ向いた。まさか慌てて隠した文献について突っ込まれるかと思った。
「生誕祭の説明をサーシャにしておけよ」
先生がいなくなった。ほっと安心した。
「それと」
思わず文献が手から落ちた。
「それを持っているのが分かったら、サーシャは強制帰還で、角川は停学だからな」
「一冊にしよう。それなら隠し通せるし、心配だったらうちにくればいい」
「分かりました。今日は外泊届出してきま」
昨日の今日で届は受理をされないかもしれないと思ったが頑張って外泊届を書く姿に寮の管理の先生もノーとはいえなかったようだ。
「これとこれとこれとこれとこれ」
「サーシャ、たくさんだね」
カバンから出したのはBLが一冊、GLが三冊に触手物が一冊。
「ねぇよ」
「何がですか?」
「その触手」
「日本のアニメーション文化を知るためには少し変な物も」
変ってことは知っているのね。
「サーシャいい? それをもし部屋を掃除しに来たお母さんが見つけたらどう思う?」
「うーん、こういうのもアリか」
「無いわよ!」
「じゃあ、これはポイです。処分するところ分からないから、ここに置いていきます」
「一緒じゃない」
「分かりました。他の部屋に捨てます」
「ちょっとどこに」
「ポイしてきました。赤で罰を書いてる部屋入ってません」
「ただいま、ミーちゃん連泊? 悪い子だね」
「ちょっと事情があって」
「いいのよ。毎日来てよ。今日はお肉だよ。多めに買って良かったわ。お風呂入っちゃいなさい」
「あの今日禁書室掃除してけっこうコアな本持ってきちゃって」
「それくらい掃除しても気にいないわよ」
「良かったね。藍」
「悪いのはほとんどサーシャだけどね」
サーシャは漢字は勉強してきた。わりとひらがなも分かる。ところがカタカナが絶望的に分からない。
だから当然部屋の戸に木製の看板のママは読めない。
お風呂を上がってもお母さんは降りてこなかった。
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