第3話 三人でデート
「図書館行きたいです」
十一月、少しずつ雪が積もってきた。
「なんで?」
「お友達と遊びたいので」
「どうせスタッドレス履くなら、隣の県に行こうよ。でも知り合いで履いてる人いないしな」
「山を越えるのは怖いです」
それは私も同じだ。パニックにはならないけど、山は恐ろしい。
「じゃ、スーパー銭湯に行こう」
週末にじいちゃんが車を出してくれた。
「まさか藍が友達連れてくるとはな」
「こんにちは初めまして、サーシャと申します。よろしくお願います」
「サーシャちゃんあいさついいね。俺もばあちゃんとの初めての旅行は温泉だったよ」
「ありがとございま、す」
「露天風呂にサウナ楽しむといいよ。じゃ、二時に集合ね」
服で見えてなかったが完敗だった。詳しく言うとなんだか余計惨めなので、私は裸のままのサーシャをお風呂場に連れ出した。
「寒いです」
かかり湯、体洗い、大きなお風呂と露天風呂にサウナ、一番テンションが上がったのが壺風呂だった。
丸いコップに入っているのが楽しいですという声で私は嬉しくなった。体をじっくり見てしまった。
「なんですか?」
「その秘訣は?」
私は理性のある日本人なので、おっぱいの大きい女の子を見て「ぐへへ、お姉ちゃん。おっぱい大きいね」とは、言わない。
触った。
「どうしたんですか?」
「いや、何でも無い」
「これ邪魔です。服も選ばないといけないし、何より重いです。藍のは軽そうなので羨ましいです」
分かっている。サーシャに悪気は無いのは知っている。この心にズバズバ刺さる嫌味なところ。
ここで這いつくばってどうやったらおっぱいが大きくなるかとは聞けない。
「どうやったら大きくなるの?」
「遺伝です。それと、あっ」
「あ?」
「こういうのは男性に揉んでもらうより、女の子同士の方がいいです」
「そうなんだ。初めて知った」
「夜に教えてあげます」
お風呂を上がるとおじいちゃんが「今日は泊まってもらいな」と、言ってくれたがこのサイズだ。
入るものはきっと無い。それを見越してか「セクハラになっちゃいけねぇが」と、いうのでサーシャに「これから大きい服の店に行くよ」と、言った。
「デートですね! ドライブして、温泉入って、ショッピング」
「そうだね」
話半分で聞いていた私は車の外を見た。きっと後ろにお父さんの本当のお墓がある。
また冬がやって来て、暗い食卓にお父さんの写真が乗る。そんな暗くて悲しい家、ずっと夏だったらいいのに、盆地だからすごく暑い夏、それでもと思ってしまう。
服屋さんに行ったら、サーシャはこれがいいと言って着てサイズが小さいからこれこれこれ、最終的にサーシャの体に入るのは作業着しか無かった。
「何でです。違うます」
「上下セットはキツイだろうな。上だけ買おう。それくらいはあるだろう」
無かった。
「作業着じゃ寝れないからな、どうしたもんか。おっ、電話だ」
「おじいちゃんしながら運転は」
「そこのコンビニ入るよ。はいはい、もしもし」
おじいちゃんはもうすぐ帰ること、サーシャに泊まるようにお願いしていること、そのサーシャの一部分が大きくて入る服がないことをお母さんに伝えた。
「お父さんの服を着ればいいじゃない大きいし」
あの服が服としての役割をこなすのは少し複雑だった。それを読んでかサーシャは今日は帰りますと言った。
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