第2話 友達

「こんにちは」


「Hello」

 私は首を横に振った。


「こんにちは」


「こん、ち、ち、わ」


「good」


 あれから明里はまるでだれかが意図的にそうしたように成績が悪化してしまった。補習の毎日でサーシャの世話が出来ないというになり、特に英語が得意ではない私がサーシャの世話をしている。


「わ、わた、たし。friendなり、たい、あなたと」

 私は笑顔で首を縦に振った。

 サーシャの顔は明るくなった。学校はなぜか留学生を受け入れるのが十月から三月になった。これからもう冬だ。


 私はもう日課になったサーシャと寮まで行って家に帰ることにした。


「ただいま」


「藍か。おかえり」


「じいちゃん、母さんは?」


「下竹の親父さんが寝込んだから、買い物補助で裏に行っとる」


「下竹さん、この前も」


「まぁ、いいじゃねぇか。あの親父にはもう女をどうこうする元気はねぇよ」


「最後の力を出すかもしれない。それにさ、家でタバコ吸うのやめてよ」


「これでしまいしまい」

 タバコが山盛りの灰皿にしまいのタバコを差し込んだ。


「その彼氏とやらは」


「じいちゃんセクハラ」


「やはり父親代わりとしては気になるわけよ」


 お父さんは学校から見える大きな山から滑落して亡くなった。山登りが好きだから、いつか連れて行ってやると毎日のように言っていた。


「そういやそろそろだろ。交換留学生」


「何でじいちゃんが知ってるの?」


「瀬川の娘が海誠に通っとるからな、面倒な役回りなんだってな、愉快だ」


「性格悪いよ。すごく寒いよここ。上に行くね。ガスファンヒーターあるでしょ」


 二階に上がって廊下を進んだ。あちらこちらにお父さんの写真が飾ってある。全部お母さんのこだわりでこんなことになっている。悲しい、こんなにお父さんは戻ってこないのに、それがすごく寂しい。


 ガスファンヒーターは見つからないので自室のエアコンをつけた。制服のままベッドに転がり天井を見た。


「そうだもんな。もう十月だもんな」


 お父さんの命日はどんどん近づく十二月二十五日。

 お父さんと同じメンバーだった人によると昼の二時ごろ。


 メンバーさんによるとすぐに見えなくなった。悪天候だからやめておこうと言ったのにお父さんは首を横に振らなかった。


「娘に山を好きになってもらいたい」

 結局、お父さんを奪った山を嫌いになった。


 サーシャはこの山を見てどう思うのか。美しい、素晴らしい、ワクワクする。そのどれもが私の心に突き刺さるだろう。


 他の人から見たら美しい山、私から見たら暗く憎い山。週明けにサーシャに聞いてみよう。山についてどう思うか、十中八九プラスの意味を言われ、先生にサーシャ係を辞退したいというつもりだ。


 次の日、サーシャに会いこの辺きれいな山は多いでしょう。観光客も多いのよね。と、話をした。

「山は恐ろしいです。誘い込むように魅了して入った人間を容赦なく殺します」

 理由をサーシャは私に話す事が無かったが、同時に私の計略は失敗に終わった。

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