第25話  遺恨



エルヴィス王がブチ切れて懐から何かを取り出そうとするが、何かを操作する前にツタが伸びて縛り上げる。一体誰の仕業か?!と思ったらフェルミがこちらに手を伸ばして力を込めていた。


明らかに何か禍々しい呪物だな。何処から手に入れたのやら……破壊したほうが良い?そりゃそうだけどこういうのってヘタに破壊したら暴走しない?ああ、リフターのキーになってるこの剣なら出来るのか。わかった。


エルヴィスがツタに巻かれながらも握りしめていた謎の物体に剣を振り下ろす。バキィン!と意外な程軽い金属音を響かせエルヴィスの手の中にあったアイテムは砕け散った。


「叔父さん……いや、エルヴィス!母さんの仇!マック様のご友人の質問に答えろ!」


えっ?キャラちがくない?マック様?というか叔父さん?いやまあ、混じり物とか言ってたしたぶんお家騒動なんやろなとは察してたが、フタを開けたらありがちな話だったみたいだな。


「ええい!誰が貴様の叔父か!エルヴィス様と呼ばんか!」


バキッ!肉を打つしたたかな打撃音が響く。

怒り狂うエルヴィスの顔面にマックの拳が突き刺さっていた。よく見ると前歯が折れ、形の良かった鼻は潰れ、滂沱の涙を流し「ありえないこんな…」などと呟く様に呻く。


「詳しい時事は知らないが、フェルミたんを泣かせ、フェルミたんのお父様を狂う程に追い詰めたのは貴様でござるか?だったらばワイはお前を殴らなアカン」


「誰が誰を殴るだとこの雑種が!」


「雑種はアンタよ!だから純血にこだわるんでしょう!勝手にコンプレックスを拗らせてお母様を殺し、大叔父様大叔母様を憎み!怪しげな術に手を出してこの国をめちゃくちゃにした!大叔母様は素晴らしい人だったのに逆恨みして!情けない男!」


あー、察するにこのエルヴィスもハーフエルフで本人は自分がハーフエルフだってのが許せなかったのか?しかしそれで国1つ支配する術を使っていたのか。もっと良いことに使えば良いのに……


「なにものか!なにものか!誰かは存じませんがこのエーリンデル国を救っ……まさか姫様!フェルミ様ではありませんか!生き……生きておいでで!」


瓦礫の向こうから民族服を来たエルフの女性が現れる。親衛隊の服装じゃないから城で働く人かな?こちらから、怪しげな術を使うエルヴィス王はフェルミさんの導きで打ち倒しに来た事を伝える。


「カイト………サラッと嘘言うのは勇者っぽく無いね」


シッ!余計な事を言うんじゃない!フェルミを捕まえて来てどうこうなんて話は過ぎた事だ。そうだろ?それにこう言った方が国民の皆さんは安心するし、フェルミたんも自信を取り戻せるだろ?三方ヨシ!ってヤツだよ


「カイト様……森の入口での数々の行いを許して下さるのですか……やはりマック様の侍従となればお優しいのですね……」


その様ってのをやめていただけませんか?姫様。わたくしめはマック殿の為に働く手足であればこそでございます。……これからは貴女様の手足ともなりましょう。


「カイト!悪ノリはよして欲しいでござる!フェルミどのと拙者はそういうのでは………」


緊迫した雰囲気がだんだんと弛緩していく。だんだん集まってくるエルフ民は勝利ムード一色になっていて、俺とした事がつい緊張を緩めてしまった。


「何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故!なぜだぁー!俺を受け入れなかったクセに混じり物のソレを姫様などと!頭の悪いクソエルフどもがぁ!こんな民族の血が半分でも流れている自分自身に反吐が出るわ!!」


突如叫んだかと思うと細いツタがエルヴィスの襟から伸びて来てツタの先についていた種を彼の口に運ぶ。


ゴクン………と謎の種を飲み込んだエルヴィスは……いや、エルヴィスを養分に木が生えて来る。先程までエルヴィスを拘束する様に巻き付いていた太いツタからも養分を吸ったのか、みるみるうちにしおれていき、やもすると人形の木が一本生えるのみとなった。そんな樹人形が口を開き言葉を発する


「カ……カコン……カロロロ………コホン。」

「モットハヤクこうナれば良カッタ。清々シい気分だよ。人の身体を捨テて神の樹となった!後は古いだけの樹を伐採しなければな!だが、今はその時ではない。また相まみえよう!異界の雑種マックとカイト、そして混じり物のフェルミ!貴様らはいずれこの私が世界樹へと至る為の養分としてやる!首を洗って待っているんだな!」


一通り宣言をした後、エルヴィスツリーはドシュウゥゥ!!と跳躍力だけでその場から姿を消した。


「いったいアレは……フェルミたん!アレは何だか分かるでござるか?!」


「まさか、世界樹の種を取り込んだの?!人を辞めたのね叔父様は………だったら早く“剪定”してあげないと。あの人の暴走を止めるのはエルフとしての責務だわ。」


『ここに集まるエルフの民よ。私はこの樹の写身であり、この巨人に宿る精霊ユグトラだ。今しばらく貴様らの姫を借り受ける。彼女とここに居る二人の男はこの世界の為に戦う使命を背負って居るのだ。今日はこやつらをもてなし、明日は快く送り出して欲しい。頼めるか?』


ザッ!と音を立ててエルフ民の皆さんが跪く。まあ神のお告げみたいなもんだろうからな。




このあとめちゃくちゃ宴会した。

シカ肉とか美味かった



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