第24話 目的

24話 目的


カイト視点


ガシャアアアン!と大きな音を立ててリフターが俺の目の前に突っ込んで来た!パーフェクトだマック!すかさず俺はコクピットに飛びついてリフターの目を覚ます。さぁ、相棒、アイツら何か企んでいるからここを切り抜けるぞ!


「劣等種め!神聖なる謁見の間をよくも!」


玉座に座っているエルフの王はブチギレて杖を床に叩きつける。すると玉座の周りが競り上がりあちこちの壁に飾られた装飾が飛んできて鎧や武器を構成し始め、一瞬で狩人の様な弓騎士の機体が姿を現す。


ここでやる気か?生身のエルフだっていっぱいいるのに?というか、コイツら全然動じてないのおかしくないか?リフターが突っ込んで来た時に何人か跳ね飛ばされてたのに目もくれないじゃないか!


「異世界人よ!異界の知恵を渡す気が無いならばここで死ね!帝国の思い通りにはさせんぞ!」


こっちの考えもお構いなしに室内で弓に矢をつがえながら凄んでくる。マジかよ!余波で騎士に乗って無いエルフとかミンチになるぞ!


「それらに遠慮をすると言うならば都合が良い!貴様達に命令を下す!死んでもそこの青い騎士にしがみつけ!」


その声が響くと先ほどまで無言で槍を構えていたエルフ達が一斉にまとわりついて来た。これじゃ一歩歩く度に誰か踏み潰してしまうじゃないか!


「ははははは!貴様は人間を救う為に異界から呼ばれたのであろう!何の罪も無い我が国民を意に介さずに動けるか?!」


十分に引き絞られた矢がこちらに放たれる。正気か?!俺は魔力を盾に集約し矢を防ぐ。なんとか一射目は防げたが、エルフの王は2射目の準備に入っていた。イカれてやがる!王も!親衛隊も!

ええい!南無三!戦争やってんだ、恨むなよ!

エルフの親衛隊がまとわりつくのもお構いなしにエルフ王に斬りかかる。だってこの親衛隊達マトモな状態じゃなさそうだし、先に王を叩くぞ!


「なんと野蛮人であったか!虐殺が趣味とはな。これは人間の国と国際問題になるぞ!」


何を言ってるんだコイツは?森の蛮族に言われたくねぇな!俺は剣で斬りかかるが、腐っても前線に立つタイプの王の様で弓を二本の短剣にしヒラリと躱しては短剣の切先を差し込んで来る!


ええい!チョコマカしたスピードタイプには足場崩しと相場が決まってる!それにこの謁見の間でこれ以上戦いたくないからな!場所を変えるぞ!

肩に短剣が突き刺されるが、その短剣ごと腕を掴む。


「おのれ!離せ!騎士なら正々堂々勝負せい!」


そのセリフ………頭に来たぜ!持ってけリフター!俺の魔力を!うおぉぉぉ!俺は全力で部屋の奥、玉座があった方向の壁にエルフ王の騎士を抱えたまま突進する!一枚、二枚と壁を破壊しその度にエルフ王の機体を叩きつけながら城の中を移動する。膝関節が軋みを上げ、足首のパーツがガタつき始める。だが、止まらん。止めてなるものか!止まるなぁリフター!

青い輝きを上げながら突き破った先には巨大な木の洞の様な空間が広がっていた。


「ハッ!この部屋は………ここまでだ!貴様は殺すっ!」


左肩を深く傷つけていたナイフを引き抜き、合体させて再び弓へと形を変える。この部屋は?まるでこの空間に都合が悪いモノがあるみたいじゃないか………ッ!真ん中奥の祭壇に檻があって、中に誰か居る?アレは……そうか。てめぇ!


「ハッ!怒るのか?エルフが尊き種であるためにあの様な紛い物はいてはならないのだよ!だから生贄に新たなる精霊を呼び出すのだ!」


精霊?そんなモンに頼らないと自分の国を守れないのかよへなちょこエルフさんよ!尊いとか言ってるが、自慢できるのは偉そうな態度だけだな!


「偉そうなどではない。“偉い”のだよ劣等s


ゴガァァァァン!


木でできた壁がぶち破られ、そこからヴリトラが顔を出す!そしてそこからはマックと連携してエルフ王の機体を打ち破ったのだった。



────────────




俺はリフターで切り捨てたエルフ王の機体を探す。コクピットは無事なはずだ。それに爆発もしていない。もしかしたら話が聞けるかもしれない。


何故彼女を祭壇に捧げていたのか、何故異世界を敵視するような態度だったのか、

何か知って居なければあの様な態度は取らないだろうと思うからだ。

それにエルフの親衛隊の人たちの反応も気になる。まるで洗脳されていたかの様な………


「居たぞカイト!」


マックの声の元に行けば、ヴリトラの掌の中にエルフ王が握りしめられていた。で、お前の名前は?まずはそれからだ。


「劣等種に名乗る名などn『久しいな?エルヴィスよ。そして異界からの戦士カイト、この度は本当に迷惑をかけた。この男は好きにして良い。だがこの娘は赦してはくれぬか?』


うおっ?ヴリトラが喋ってる?いや、中に何かが宿ったのか?


『左様。我はこの森の精霊にしてこの樹の写身。そうだな、ゆぐトラとでも呼んで貰おうか』


「ゆぐトラ?キミそんな名前だったのか?」


マックも知らないのか?………というか誰?!めちゃくちゃスタイルの良い半裸のアメリカ人が居た。なんなのこのハリウッド俳優みたいな奴?


「相棒の顔を忘れたのか?カイト」


…………マック?コイツマックか!随分痩せたな?


『ヴリトラの神経と癒着していたので一度その部分から切り落とし、余分な肉体の部分で切り落とした手足を補ったのです。これならエルフの姫を娶るに相応しい肉体でしょう?』


姫?誰が?それで娶るってマック、この数時間の間になにがあったんだ?



「その混じり物を姫だと!そしてその異界からの蛮族をあてがうだと!」


エルヴィスは激怒した





──────────





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