第22話



「マック、アレじゃないか?」

「ああ、それっぽいな」


 今俺はマックの操るヴリトラの肩に乗り森の中を歩いている。指差した先には一際大きな広葉樹が淡い光を放っており一種の幻想的な光景が広がっていた。

 

 おもむろにコメク軍の旗にバツ印を書いた物を取り出し、大きく振る。


「エルフの皆さーん!自分は反乱軍の者だ!この森のエルフに少し聞きたい事がある!それだけだ!侵攻の意思は無い!繰り返す!侵攻の意思は無い!手土産にこの森を焼こうとしてコメクに入っていた女を連れてきた!話を願う!」


 俺はヴリトラの肩からせいいっぱい声を張り上げ、敵では無いと叫ん………ぅえ?!旗に矢が刺さってるんだが?


「マック、止まれ。向こうも気付いた。」


 フワリと目の前に光球が浮かぶとそこから声がした。


『止まれ。何奴だ。』


「俺はカイト、渡海人だ!ドブル王にコメク軍と戦う為に異界から呼び出された戦士、そしてこのデカいのに乗っているのが」


「マック、マック・モスだ。同じく異界からの戦士をやらせてもらってる」


『して、要件は?』


「コメクに居た研究員とその娘のハーフエルフにしてやられてな。怪しげな実験をされてこのデカブツと親友が一体化してしまったんだ。しかも上手く切り離す方法が無いと来たから、近くの魔法に詳しい者の知識を頼ろうと訪ねた次第で、これがそのハーフエルフだ」


 マックが左手に持っていた檻を掲げると涙と鼻水とよだれとその他いろんな液体でびちゃびちゃになっているフェルミが入っていた。光球を目の前にしビクリと身体を強張らせる。


『コレは、あの時の忌み子か。厄介な事をしてくれる。』


「なんでも化け物の身体に人間の頭脳ってのをやりたかったらしい。手足を切り落として神経やらを繋げてるってんで無理に引き出せないんだよ」


『それだけでは無い。魔力のパスも化け物と中の人間の間でぐちゃぐちゃに繋がれているな。よく発狂しないものだ。だが、貴様の言葉嘘ではなさそうだな。歓迎しよう我らの里へ』


「ありがとう。」




◇◇◇




「ようこそ、勇者様」


 大きな木をくり抜いた大広間にてエルフの族長に呼び出されたんだが……どういう事だこれは?


「歓待痛み入る。しかし族長殿、自分は友人の安否が気になるのです。この様な催しは自分には勿体無く。」


「まあまあ、座って。そして君の友人については詳しい者に調べさせている。その間に君の話を聞きたいな」


 その後、エルフの人達に根掘り葉掘りこの世界に来てからの事を聞かれたのでドブル王とのやり取りから敵将ブリックの戦い、そして先日のフェルミとのやり取りを話した。まあ、閉鎖的だから外の話が聞きたいのかね?


「それで、貴方が元居た世界について聞いても良いかな?」


 何だ?少し雰囲気が……それに一瞬嫌な感じがしたな。詳しく話した無いな。


「元の世界については語るのを止められているんです」


「誰に?」 


「それも、止められていまして」


「では君の友人は助けられないな」


 いきなり周囲のエルフが短剣を抜いて俺を取り囲む。二階の窓から狙ってる奴も居るな。


「まいった、降参だ。俺をどうするつもりか知らないが、せめてこんな事する理由を教えて欲しいんだが」


「連れて行け」「「ハッ!」」


 俺はエルフの村の牢屋に連れて行かれた




◇◇◇




(ねぇ………ねぇってば!)


 ん……何か聞こえる……?


(エルフどもは協力なんてしてくれないわよ?それより貴方の友人が危ないかもね)


 あれ?猫が喋ってる?いや魔法か。俺が喋ると目立つから指先を僅かに動かして反応を返す。


(私ならここから逃げられる。協力しない?)

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