第21話
ガラガラと音をたてて、先程まで砦があった場所は更地になっていた。
「カイト!すまない、どうやって降りたら良い?」
「わかるか!人体実験されたようなモンなのに緊張感無いな。しかも知ってそうなフェルミの親父さんはお前がぶっ飛ばしちまったんだろ!」
「………ジーザス」
とりあえず大人しくなったヴリトラを背に生存者を探す。しかしまあ派手に壊したな、ちょくちょく瓦礫の下敷きになってる一般コメク軍研究員が居る……しゃーないなホトケさんになった奴には恨みは無い。瓦礫とミンチを分別して……ん?
俺がリフターで撤去作業をしていると、足音が変わるポイントがあった。ひょっとして隠し部屋か?非常時の避難シェルターかもしれないな。
しかし取っ手が見当たらず、持ち上げようとしてもパワーが足りないな。「おーい、マック!休憩は済んだか?手伝ってくれ!」「あーい」
「どうだ?上がりそうか?」
「うーん、たぶん魔法的な技術で入口を塞いでるみたい。力ずくで思い切りブチ破ろうとしても良いけど、万が一中の人が居てソイツが手がかりを握ってたらな。殺すのは惜しい」
「だよな。………掘るか」
「ずいぶん原始的だな……だがそういうの、嫌いじゃないぜカイト!」
◇◇◇
「お?ここじゃないか?」
あの後俺達は魔法障壁が無い辺りから地下室があるであろう辺りに向かって丸太で穴を掘り始めた。20メートルあるヴリトラならこのぐらい楽勝で掘り進める事が出来ておそらく地下室の壁であろう人工物を掘り当てたのだ。
「カイト、任せた。細かい操作が出来ないんだ。」
「まかせろ」
リフターの剣で石の壁を切り裂く。すると中には数人の一般コメク軍研究者とフェルミが真っ青な顔をしてガタガタと震えていた。………うるっさ……めっちゃ金切り声で助けてって叫んでるな。
「あー、お前らの洗脳とか巨大騎士の実験は失敗に終わった。あのデカブツのコントロールはアレに組み込まれちまった俺の友が握っている。だが一つ問題がある。アレから降りられなくなってるみたいなんだ。外に出る為の操作が無いんだと。」
「だが、ぶっ壊すのも惜しい。あれだけのパワーだ、コメク軍をぶっ飛ばすのにさぞかし活躍してくれるだろうさ。だから穏便に組み込んだ人間の出し方を教えろ」
すると一人の研究者が前に出て来た。ボサボサの頭にヨレヨレの白衣を着たいかにも“研究者です”って感じの男だ。
「い、命の保証をして欲しい!彼を無事に騎体から摘出されられたら我々を見逃すと」ガン!
俺は地下室の壁を殴った。
「取り引きをするつもりは無い。俺は「教えろ」と言ったんだ。今ここで殺されずに済んでるのは、アレが惜しいのと無理やり引き出すと悪い影響が出そうだからってだけだ。出来るのか?出来ないのか?」
「フヒッ……フフフフフ……ヒイッヒイッヒヒヒ!ヒャハハハハハ!無理よ無理!ムリなのよ!出入り口なんて備えて無いし、アイツはアレに乗せる時に手足を切り落として中身の化け物と神経を繋いでるの!アレをの首を落としたら!胸を裂いたら!その痛みもそのままあのブタが味わうのよ!ヘタに取り出そうとすればショック死、万が一上手く引き摺り出せてもマトモに生きては行けないわよ!さあ殺しなさいな!」
気が狂った様に笑い出すと衝撃の事実を告げるフェルミ。マジか………
「エルフの森を、お母様を捨てた奴らを焼け無かったのは残念です。お父様、お母様、フェルミもすぐにそちらへ……」
あ、そうか、エルフ!この森の奥地にはエルフの集落があるって話だったよな。
「おい、エルフの村ってのは何処にあるんだ?エルフってのは魔法が得意ってのは聞いたことがある。アイツを無事に出せる魔法使いも居るかもしれないからな」
「ハッ!勝手にしなさいな。アイツらは高慢ちきで他人を見下す嫌な奴らよ。そんな奴らに助けて貰おうだなんておっかしいんじゃないの?手土産の一つでも持って行かないと蛮族って言ってくる奴らよ!」
よし、手土産だな?
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