第20話 寿司、すき焼き、テンプラッ!


 ぬとぬとした生暖かい空間でおれは目覚めた。

 クソッマジかよ!俺を生体CPUにするって?冗談じゃねぇ!日本のスシッ!スキヤキッ!テンプラァ!を食うまで死ねないんだ!どうするどうする?、ヤバいぞこのままじゃ、コミックで読むサイボーグモノは大好きだが、自分がそういう存在になるのはノーサンキューなんだよ!


 おれは必死に体を動かしてだっしゅつを試みる。

 あれ、頭はからだをうごかそうとしてるのに体はピクリともうごいてない?めもかすんで……のうみそがまわらない………あったかい

 ここはあったかくてきもちいい。え?きもちいいことをじゃまするやつがいるの?それをやっつければごはんくれるんだね!じゃあ“にほんりょうり”が良いな!アメリカじゃあなかなかたべられないからね!えっ?アメ〇カ?ア〇リカってどこだろ?そもそも“にほ〇りょうり”ってなんだっけ……




◇◇◇







 ズガン!


 森の木々をなぎ倒しながらリフターよりふた回りも大きな、まるで動く城壁の様な騎士が手に持つ巨大な盾を振り回す。鎧の隙間からはドクドクと脈打つ血管が浮き出た皮膚が見え、魔法と機械仕掛けの騎士ではなく、まさしく本物の“巨人”の様相であった。


「ちいっ!なにか、何か手は無いのか!」


 マックが気絶させられた直後、マックの仕掛けによって壁を突き破って現れたトレーラーに捕まってその場を辛くも脱出できた。だが、マックを置き去りにしてしまったんだ。


「せっかく出来た友達なんだ!返して貰うぞ!」  


「クククッ!クハハハ!返して貰う?今貴様が必死に叩き切ろうとしてるのに返してくれとは!勇者とはなんと滑稽か!」


 砦の塔の上に立ち俺と戦っている巨人な騎士に何やら指示をしていたフェルミの父親が心底おかしそうにあざ笑う。


「ッ!バカにしてぇ!」


 術師の注意がこちらに移ったからか、わずかに動きが鈍くなる巨人。すかさず鎧と鎧の隙間に剣を差し込む!ちょうど鎧の留め金に当たった様で、騎士のお腹の辺りのアーマーが一部剥がれかかってい………中に何かある?!アレはコクピットか?!中に居るのは?


 まさか……コイツに乗っているのはマックなのか?!


「気付いたようだな。その騎士には無人量産型騎士操縦システム、「ポーン」のプロトタイプが組み込んである。こっちの世界の人間ではどうやっても上手く行かなかったが、異世界人を使えば成功した!やはり俺の理論は正しかった!これで頭の固い宮廷魔導士どもや、俺を認めずに追放したプルーシャ学派の奴らに復讐できる!まず手始めに勇者と思しき貴様!そして継は妻を見捨てたゴミエルフの森を焼け!城壁の巨人ヴリトラよ!」


 巨人が呼応するように唸りを上げる。本当にあの中に?!クソッ、どうすりゃ良い、どうにかしてマックを目覚めさせないと!


「クハハハッ!良いぞ!もっと不様に足掻け!ブリックのヤツと曲がりなりにも渡り合ったんだろう貴様達は!それを俺が討ち取れば軍の中でも発言力が上がる!向こう側の知識もいくらでも味わえる!その為に貴様はここで死ねェ!」


 ヴリトラが再び巨大な盾を振り回し始める。クソッ、リフター!お前は大昔に作られた一品モノなんだろ?!あんな量産型を前提に作られたヤツに負けても良いのかよ!踏ん張れよっ!


 「マァァック!てめぇなに実験体にされてんだ!大人しく利用されたままで良いのかよ!アメリカ人のフロンティアスピリッツはどうした!」


 僅かに盾の振りがもたつく 


「分かった、分かったよお前みたいなナードは一生薄暗くて生ぬるいところでボンヤリしてろよ!俺は立ち止まるわけには行かないんだ!」


 持っていた盾が地面に落ちる


「こんな所でくたばる奴には特上寿司も高級割烹も勿体ねぇぜ!こんな根性無しヤンキーを連れてったらバカにされちまう!」


 ついにヴリトラは足を止める。わなわなと身体を震わせるとヴリトラは近くの塔を殴り倒した!


「馬鹿野郎!寿司は連れてけっつっただろイエローモンキィー!」


 ヴリトラからマックの声がする!………アイツ決め手が食い物じゃなかった?


「ロボットは大好きだが、ロボットのパーツになんぞ願い下げだ!うまい飯が食えなくなるだろ!ふざっけんな!」


 先程とは一転、砦をメチャクチャに破壊し始めるヴリトラ。その破壊行動はしばらく続いた

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る