第19話 オウ ジーザス
「ついたぞ!」
俺とマックはフェルミと名乗る少女の案内で森の端にあるデカい砦にやってきた。
「ここが……マック、コメク軍が居るって話だからすぐに騎体を動かせるようにしておけよ」
「分かってるよ」
砦の様な面構えの建物だが、実際この建築物は大昔の砦なのだそうだ。(フェルミ談)実際使って無い部屋やデカい倉庫もあるそうだ。
裏の搬入口には確かに親子二人暮らしとは思えない様な大量の人間が出入りした痕跡があった
「トレーラーはどうする?こんな所に置いてて敵に取られたりしないか?」
「大丈夫、こんな事もあろうかと!魔法認証のキー作ってある。このキーに個人が登録した魔力を流さないとキーが回せない仕組みよ!」
「なるほど、ヨシッ行くか!」
搬入口から侵入する俺達。父親の居場所はと聞くと「こっちよ」と複雑な通路をコメク軍の研究員に見つからずに案内してくれるフェルミの助けもあり、さほど掛からずに父親であろう人間の居る部屋に到着した。
「誰だ?」
「お父さん、私よ。勇者とオマケを連れてきたわ」
隣にいたフェルミがそう言うやいなや俺達2人の居る場所に上から檻が降ってきて閉じ込められる。
「ハアッハッハ!お疲れ様、フェルミ。これで私の研究が完成するかもしれない!少なくとも勇者と言う材料があればかなり良い結果が得られる筈だ!」
「やっと、やっとお母様を見捨てたクソエルフ共を根絶やしに出来るのね!」
俺達は衝撃の事実に動揺を隠せないでいた。フェルミは最初からコメク軍とグルで俺達を罠にハメる為の芝居だったのか?父親を助けてくれと言うのも?
「嘘だったのか!貴様の父親を助けてくれと言う願いも嘘だったと言うのか!」
「嘘じゃないわ?父親の研究の助けになって欲しいのは本当よ?」
「よくもっ!」
檻を魔力を込めた力で斬りつける。しかし効果は薄いようだった。ふと隣を見るとマックは必死にポケットの中を探り何か小さい物を組み立てている。
(そのまま暴れててくれ)
マックのアイコンタクトを汲み取り、ガンガンと檻を斬りつける。無駄なあがきと分かっていようが、マックの何かの時間稼ぎとばかりに大立ち回りした。
「ハハッ、無駄だよ。その檻は忌々しいクソエルフが大昔にドワーフから貰ってきたと言う“ミスリル”が使われている。騎体ならいざ知らず生身で壊せるものか!準備が終わるまで大人しくしていて貰おう」
フェルミの父親が偉そうに椅子の上で勝ち誇っている……マック、まだか?!
ガン!グゥィィィ………ゥゥゥウウウガン!ガゴン!
「何事だ?!」「ハッ、奴らの乗って来た荷車がひとりでに動き出して基地内に突っ込んで来てます!」「おのれ!」
即座に俺達が何かしたと勘づいた父親は檻の隙間から何かを投げつけ……てき………た
あれ……クソ………ねむい………
「静かになったか。こっちの小間使いが何かしていた様だ。バラバラの場所に繋いでおけ」
「ハッ!」
◇ ◇ ◇
「うぅむ、ここは」
「気がついたようね?小間使い。アンタみたいな女の子にモテない太っちょからしたら一瞬でも私みたいな綺麗な娘の隣にいれたんだから感謝しても良いのよ?」
目の前にはフェルミたん。気づけば俺は上半身裸でなんか生臭い場所に繋がれてた。マジかー俺ってば実験体コースですな
「ありがとうございますフェルミ様!ところで……我らが勇者様はどちらに?」
「アイツは異世界から呼ばれた人間でも数が少ない上物よ?万が一にも失敗は許されないわ。だ・か・ら、アンタで予習するのよ。パパはそう言ってた」
なるほど……しかるに、この生臭いのは実験体か何かですかな?首だけで後ろをチラリと見るとボコボコとした肉の塊が鎮座していた。
「気になる?クソエルフどもは魔法に長けて弓の名手が多いの。有名だから知ってるわよね?そして、あの村で抱えてる騎体もご多分に漏れず射撃が強いタイプよ。だからねうんと固くてうんと重い騎体を特別に用意したのよ。でも特別誂えの鎧は重すぎて普通の騎士じゃ一歩も動けなかったの。だからとびきり腕力のある騎士を1から作ってたのよ」
この子、勝ちを確信したら饒舌になるタイプだなぁ、足元掬われそう。ここにクッソ頑丈な騎士鎧があってエルフの森に侵攻しようとした。で重くて動けないからって中身から作ったのか?
「俺も異世界から来た口だから良く知らないんだが、騎士の中身ってあんなにナマモノじゃなかった気がするんだけど?どうせ死ぬなら教えてくれよ」
「そうね、騎士はもともとは巨大な魔物相手に戦う為に鎧を大型化して中に乗り込める様にしたものよ?巨大な騎士と言う概念が出来たばかり黎明期にはさまざまなアプローチで作られたの。その中には当然生きた魔物をそのまま使った物もあったのよ。そして貴方は死なないわ。コメク軍の偉い人が言っていた頭脳を司るパーツ、たしか“しーぴーゆー”と言ったかしら、それになって貰うのよ?」
オウ……ジーザス……
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