第18話 ハーフエルフのフェルミ


 俺の名は渡海人わたりかいと、一般的な学生さ!俺はある日、ひょんな事から別の世界に来てしまったんだ。

 そこでは巨大ロボットサイズのデカい甲冑を着て戦争を起こしてる悪い奴らが居て、俺を呼んだ王様はその戦争を止められる人を探してあちこちから世界をまたいで人を集めたらしい。


 しかし、俺を呼び出したドブル王の居る城が戦争を広げているコメク軍に襲われて、そこを俺と俺の少し前に呼び出されていたマックと言うアメリカ人の2人で辛くも撃退したんだ。


 そして今は対コメク反乱軍を指揮しているチョウサと言う男を探して旅を始めて数日後の頃───




◇ ◇ ◇




「だぁぁぁぁ!マック!もっとスピード出せねぇのか!」

「やってる!そもそも後ろに騎体を乗せてるんだからスピードなんて出るワケ無いだろ!」

「クソッやっぱこうなったらリフターで」


「やめんかバカ!この森に入る時に村の爺さんに言われたろ!この森にはエルフが居て森を荒らす奴らには容赦しないって!」


 俺達海人一行は絶賛森イノシシ(クソデカ)に追われていた。それも一匹や二匹じゃなく数十頭にだ。ちょっと縄張りの水飲み場を使っただけなのにみんな荒ぶるんだもの……一匹だけなら狩って食料にするんだが、こう大量に居るとな………


この森に入る前に森の近くに住む爺さんにキツく言われたのだが、食料なら見逃されるが食いもしないのに邪魔だからもしくは遊びで殺す、なんて事をするとこの辺りに住む地元民とこの森に住むエルフとの関係が悪くなるからむやみに森の生き物を殺さないで欲しいと言われたんだ。


「ええい、こんな事もあろうかとォ!魔獣避けスプレー業務用プロトタイプ、起動!」


 マックがシフトレバーの横のボタンを押し込むとトレーラーの下から煙が散布され始める。するとたちまちイノシシ(クソデカ)が目を回して逃げ惑い始めた。


「ぶぇっ!ブフォッ!気密が!気密が甘くて逆流してる!」


 俺とマックは2人仲良く車内でむせ返る、なんだよコレ目と喉がヒリヒリする!玉ねぎの目に染みるのを強烈にしたバージョンみたいな、これは催涙ガスか?


「猛獣も居るだろうから熊よけスプレーに着想を得て作成した魔獣避けスプレー業務用を起動したんだが……スプレーじゃないな燻煙だよコレは。」


 休息をしようとなり川べりを探して車を停める。急いで服を洗い車内を拭き掃除して今日はもうここで休もうとなりキャンプ道具と1匹だけ狩っていたイノシシを捌いて火にかける。………よし、もう食えるかな。「それちょうだい」「はいよ。」


「マック、食うのは良いが洗ったの干し終わった……の………か?いや、お前誰だ!」


 俺は咄嗟に剣を構える、しかし目の前の女は悪びれた様子も無くイノシシの串焼き肉をムシャムシャと貪っていた。どうも訳ありと言うか凄く草臥れた感じで身なりがボロボロな娘だな。本来なら綺麗な紫紺の髪であっただろうにボサボサな頭も勿体ない。良いから食え………俺はそっと新しい肉を火にかけるのだった。




◇ ◇ ◇



「で、お前はハーフエルフで父親の為にこの森を通り掛かる人を見張っていて、騎士を持って、いてイノシシを殺さずに撃退したから悪い人では無いと思って話しかけたと、そしてお父さんを助けてくれと?」


「はい、私はフェルミと言います。私のお父さんはエルフと人間が仲良くなれる為にいろんな研究をしている学者でした。でも母さんが病気になり、父さんはコメク軍って怪しげな人と何かを始めてて………でも、凄く危ない事な気がするんです!ものすごく嫌な感じがお父さんの研究所からしてて、それで、誰かに助けて貰えればなって」


「カイト、どうする?」「そりゃ、行くだろ」


 どちらからとも無く拳を突き出しグータッチをする。決まったな。


 そして翌朝、俺達はフェルミの父親の研究者があると言う方向へとハンドルを切るのだった。

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