第16話 岩石一族の戦士、カコウ!
「〜〜♪〜〜♪」
巨大なトレーラー、「ガレージ」のキッチンから可愛らしい鼻歌が聞こえて来る。しかし、彼女はチラリと時計を見るとおもむろにフライパンを掲げてそこに反対の手で握るお玉を叩きつけた!
「てめぇら!いつまで寝てやがる!起き………あ、洋平くんは起きてたんだね。ごめんね?うるさくして、ちょっとソラちゃんを起こして来てくれない?」
彼女の名は報瀬、パパラッチ兼配信者である。彼女の目的はいまだ明かされて居ないが、ソラの事情と武の目的の為に一肌脱いだ(エッチな意味じゃないよ!)付き合いの良い女である。
「う゛ーっす……」「ざす………」「ぞす……」
キッチンに遅れて現れた三人、武と双子のマサとヤス。彼らは埴輪の化物に生きた土を手なずけたから狙われており、それと並行して親友の渡の事を探す為に旅に同行していた。
「おはようございます」
最後に遠慮がちに現れたのが、つい数日前に地球侵略を始めた宇宙人達の姫様という事がバラされた為に街の人を巻き込むまいとこの旅を始めた張本人である。
「揃ったな。では作戦会議をしよう。」
最後に洋平。彼は傭兵であり、ソラの養父が生前秘密裏に契約を結んだソラの専属ボディーガードである。
「まず、未成年だけで移動し続けるのは無理がある上に、補給の問題もある。食料はまだしも燃料や資材は自分達の年齢の者が買い付けに来たら怪しまれる。そこで俺の古巣に行こうと思って居るんだが、問題無いだろうか?」
洋平のその言葉に報瀬は「知ってる」武は「ああ」と短く答えたが、ソラは黙ったままだった。
「意思決定は重要なんだ。思う所があるなら言って欲しい。」
洋平のその言葉にソラはおそるおそる口を開いた。あんなに特訓中や戦闘中は苛烈な彼女だが、その“熱”が冷めれば、いや、この遠慮がちな様子こそが本来の彼女なのかもしれない。
「古巣とは……どういう所なのでしょうか?そこに居る方たちにご迷惑は掛けられません」
決意を秘めた瞳で洋平を見つめ返すソラ。しかし洋平はどこ吹く風な様子で至って普通に、まるでレストランで注文の確認を取る様な調子で答える。
「よし、決まりだな。もともと報瀬には言ってあるし三バカは細かい事は分からない。ソラさん、君に情報を共有しておきたかったんだ。隠し事は信頼関係を築く上で無い方が良いファクターだからな」
「てめぇ、俺達を三バカって言っておいて信頼関係がなんだとか調子が良すぎねェか?」
そんな朝の団欒を楽しみつつ、6人は朝食を摂るのだった。
◇ ◇ ◇
「なんだこりゃあ!」
トレーラーは目的地を目指して走って居たが、いきなり土砂崩れが起きている現場に出くわし立ち往生していた。
「ヨシッ!マサ、ヤス、ここはいっちょやるぞ!」
「「アイサ!」」
3人はトレーラーから自分達のユンボールを出し、渋滞していた何台かの車を避けて現場に入ると、道路上の岩を側道に並べ始める。
しばらく撤去作業をしていると、突然ズガン!と大きな音がして岩が渋滞している車とトレーラーの上に降って来る!!
「無事か!?」「ああ!一体どうなっている!」
「ガーッガッガッガ!!俺の名はカコウ!岩石一族の戦士だ!この辺りで貴様らをあぶり出す為に網を張っていて正解だったぜ!」
崩れた斜面の上にはユンボールよりかなり大きい20メートル弱の巨大な岩の怪物がいつの間にか鎮座していた。その岩の怪物の口の中には古風な姿の男が居てこちらを睨んで来ていた。
「貴様ら3体の我岩が合体した姿、オレはアレと戦いたいのだ!早く合体するんだな!」
「なにっ!そんな事の為に道を、車を、めちゃくちゃにしたのかっ!」
「合体しないのなら俺の我岩コウガンでそこらの立ち往生している乗り物にはぺちゃんこに潰れてもらう!」
カコウはコウガンにコンクリートブロックを拾わせ、それを一般人の乗る車に投げ───
「させるかっ!ドカソイルッッ!」
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