第12話 リフター
ブリックと名乗った男は強かった。
「クッ……俺の技が通じない?!」
おそらくは実力だけで言えばそう変わらないだろう。しかし、ヤツの騎士はおそらく専用騎。
自分のクセに合わせて最適化をされてる上に、独自の調整がなされているようだった
「ハハハハッ!ブンヤの門弟と言えどその程度か!実力は申し分なさそうだが、そんな間に合わせの騎士でどれだけやれるというのだ!そぉらっ!」
一際鋭い剣戟で左腕が肩から飛ばされる……ヤバいな。俺は大丈夫でも騎士が持たなくなって来てる。八艘飛びの駆動が騎士の足腰に相当負荷が掛かって居たみたいだな。だが
「バカやろ!お前らの奇襲って強みを消せりゃあそれで充分よ!立て直す時間があればこっちの勝ちだからな!」
俺の後ろからマックが、背中に背負った大砲をブリックの騎士に向けてぶち込む!
「ジャストミート!カイト、お前だけ良いとこ取りはずりぃぞ!俺が持たせるから一旦下がれよ」
「マック!助かる。だがお前声震えてるぞ」
「そりゃ前に出て戦うタイプじゃないからな怖いさ!俺はスパイダーマンでいう椅子の人で、フラッシュでいうバイブだからね。震えるのは仕方無い」
「どっちの意味で震えてるんだよ……わかった。しつこく問答するのも野暮だしな。死ぬなよ。すぐ戻る」
俺はガタが来かけてる騎士の足腰の調子を取りながら陣地に戻って来ると近くに居た技士に騎士の余りがないか確認を取るが、全て出払って居るとのことで、見れば他の手隙きの技士が総出で先程まで乗っていた騎士の修理にすでに取り掛かっていた。
-----------------------
前線ではブリックの攻撃を受けてボロボロになって居るマックの騎士が転がっていた
「ふむ…………キミは先程の彼とは親しいようだが、実力はさほどでもないな。」
「ガッ……コイツぁ……ヤバい……な。変な意地見せるんじゃなかった」
ジリジリと森の方へ後退するマック。それを己の嗜虐心を満たす様にあえてゆっくりと追いつめるブリック。
「いや……やめろ……く………くるな………く………」
「不様だな貴様は、貴様の首を持って先程のカイトに見せてやればさぞかし楽しいだろうよ」
「く………くくく………きき………」
ジリジリ、ジリジリと後退し、ある瞬間!
「キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!」
左腕からウインチを射出し木に引っ掛けて高速で森の中へ突っ込む!
「俺の騎士が太ってるのはギミックが入ってるからさぁ!イーーィヤッホォー!」
「おのれ!騎士なら剣で戦えっ!」
ブリックが森の中に入った瞬間、ブリックの駆る騎士はつんのめって盛大に転ぶ。足元には鋼線が貼られていたのだ。さらに転んだ所に丸太が倒れ込む!
「罠かっ!バカにしおって!」
「戦いに卑怯もクソもあるかってんだ!自分より強いやつに力で対抗するなんてバカのやる事だって俺はグランパに教わったんでねっ!」
丸太を剣で弾き飛ばしこちらに追いすがるブリック。対して器用さを活かしワイヤーをめぐらせ、時にウインチを駆使し樹上を突き抜け何とか渡り合うマック。しかしワイヤーなんてこの世界ではまだ貴重品でありすぐに尽きてしまい、気づけば始めの場所に帰って来ていた
「ハァ………ハァ…………この俺をここまで手古摺らせるとは、騎士とは認めたくはないが戦士としては貴様を認めよう。貴様名は?」
「ゲホッ………ブハアッ………お……おれは………マック………マック・モスだ……敵とは言えど騎士サマに認められるとは光栄だね………」
「冥土の土産に教えてやろう。俺の名はブリック・ロールスだ。せいぜいあの世で自慢すると良い」
ブリックの騎士が剣を振り下ろす瞬間ー
ギィン!
「持たせた!ちょっと使える騎士無いからって国宝パチって来たぜ!」
カイトの駆る騎士はブリックやマックが乗っている一般流通されている騎士とはずいぶん違う趣であり、ずいぶん古めかしくもあり荘厳な作りをしていた
「その騎士は……ずいぶんな骨董品じゃないか。一品物といえば聞こえは良いが、量産技術の無かった時代のモノ、クセが強くてとても乗ったその日に動かせるようなものでは無いだろう。負けても騎士のせいにしないでくれよ?」
「かわりに安全装置も無い上に作りが頑丈で無茶が効くんだよ見てろ騎士サマよここから叩き出してやる」
ダッ!と土煙を上げながらブリックを押し返す!
「パワーでは私のギルツとて敵わぬか。だがっ!」
滑らかな動きでブリックは攻撃を繰り返す。
カイトは対応出来てはいるものの、その操作に騎士が追いつかず細かいキズがどんどん増えていく
「ハハハハッ!これでは先程の戦いの再現ではないか」
ブリックが決める為に剣が大振りになった瞬間!
ガッキィン!振り下ろす形のブリックの駆るギルツの“剣ごと”腕を破壊して天高く剣を掲げるカイト
「そうか!この騎士の名前はリフターか!ドリフターな俺にはピッタリだな!」
「ドリフター………?しからば貴様が勇者か!本国へ伝えねば!」
数騎の残ったギルツを引き連れて撤退を始めるブリック。
戦いは終わったのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます