第11話 ブンヤ流
敵が口走った「チョウサ」とは何者だろうか、それをお付きの騎士に聞くと「侵攻を始める帝国軍に対抗する為組織された反乱軍の指導者」と言う答えが返って来た。
なんでも、このダンジョンで何かしら成果を上げればそれを手土産に我が国もその反乱軍に同調するとのことだ
マックに振ると「ゲバラみたいな奴だったらどうしよう……」と震えていたが、聞くところによると黒髪黒目で痩せた男であり、自分の事を「探偵」だと言っていたそうで、騎士の扱いもかなりのものらしい……ひょっとしたらマジでか?
「そのチョウサって人に会いたいな。ヨシ!こんなダンジョンはさっさとクリアするか。マック、ついてきな!」
「あいあい」
最初にアクシデントがあったものの、底の浅いダンジョンであり、すぐにボスエリアに到達し待ち構えていたデカい猪を狩った。
「す、すごいな……いくら規模が小さいとは言え、ダンジョンのボスだぞ?」
お付きの男の方が驚きを隠せない様子で聞いてくる。まあ、ここに呼ばれる前に居た所ではデカい牛と闘ってたからな、牛に比べたらまだ優しいよ。
──────王城にて
「ご苦労。首尾はどうだ?」
騎士団長の男が俺たちが牽いている荷車を見上げながら笑っていたので、こちらも調子良く答える
「なかなか馴染んで来ましたよこの騎士も、おかげで良い素材が手に入りました。オマケで騎士も2つつけてくれたから帝国ってのは太っ腹ですね!」
「なにっ?騎士がか。なんとも無かったのか?」
「えぇ、ここに置いときますね。それと、敵が「チョウサの手先が!」って言ってまして、お付きに聞いたら反乱軍の指導者って話じゃないですか。自分もぜひ一目会ってみたいんですが」
「良いだろう。ダンジョンのイノシシを狩る程の実力があれば足手まといにはなるまい」
「はっ!ありがとうございます!」
そして翌日──────になるか、ならないかぐらいの深夜
「敵襲ーーッ!」
カンカンカンと鐘を叩く金属音と伝令の叫び声で目が覚める
戦線がすぐそこだからこういう事もあるか、と頭の中を切り替え戦闘服を着込んで格納庫に走る
途中でマックと合流するがマックはかなり眠そうだった
「バカマックシャキッとしろ、さもないとお前は今日からフレッシュネスって呼ぶぞ」
「勘弁してくれ、意識高いのよりジャンクなのが良い。ドムドムと呼べ」
「嫌がらせじゃないと嫌味にならないだろ?フレッシュネス」
「オーケー目が冷めたよバルーン」
「てめぇ、カイトとバルーンはちがうだろ。あと海の人って字を書くから海を皮肉るならスワンプとかだろ」
「スワンプマンって怖いじゃん」
馬鹿な言葉の応酬を繰り返す。お互い怖いのだが、それを誤魔化す為のちょっとした傷の舐め合いだった
騎士に飛び込んで格納庫から出撃すると城門の先で騎士の一団が交戦していた。
「近づくのやだなぁ。ここから石投げない?瓦礫ならたくさんあるし」
「フレッシュネスよぉ!味方に当たったらシャレにならないだろ。それに卑怯者ってイメージが付いたら立ち位置が悪くなるだろうしな…………突撃ィィィィィィィィ!」
俺はダッシュで城門を潜ると目の前の騎士を飛び越え敵の前に躍り出た。
基本的には敵の方が高性能かつ、むこうは集団戦に長けているから、こっちのダンジョン殺法を当て嵌めにくい………だがやりようはある!
「文屋秘伝!八送飛びィ!」
集団戦とは、一対一の状況を作れず、強制的に多体1を押し付けられるから強いのだ。そしてそういう陣形は正面からは強いが方向転換に弱く他から攻められると弱い。まあそれは基本だから当然左右や背後にはそれなりに対策されているはすだが……
「うわっ!」「なんっ?」「このっ!」「貴様ッ!」
「俺を踏み台にしたっ」「なんとーっ!」
そう、敵騎士を踏み台にして敵集団の「上」を走り抜けるのだ。これぞ文屋秘伝の一つ「八送飛び」だ
イベント等で大人数がすし詰め状態に集まっているときに1人転ぶと、押された人間の逃場が無いから人がドミノ倒しに何十人もが転ぶ大事故になったと言う話はみんな知ってるだろう?ソイツをここで再現する
いくつかの騎士を踏み台にし敵陣を駆け抜けた後には敵集団は混乱状態となり、マックと騎士団の皆さんが各個撃破に持ち込めているようだった
「キサマ………その動きはブンヤ流だな。この国はまだ反乱軍と手を組む前だったハズだが……かの指導者ブンヤに踊らされたかな?」
俺の目の前には雰囲気の違う騎士が立ちふさがっていた。この男……分屋秘伝を知っている?
「俺の名はブリック・ロールスだ!帝国騎士として反乱軍の貴様を討つ」
「名乗られたら名乗らねばな!俺は渡・海人、カイトだ!帝国だか反乱軍だかは正直分からんが人を泣かせる様なヤツは許さん!」
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