第9話 狙われた街




戦闘機との戦いの翌日、彼らの住む街に対してステラリスから宣戦布告が通達された。


例の第3騎士団長が広域通信で全体配信を行ったのだ。なお、配信には既存の動画サイト「ニコツべ部」から行われており、世界中の人間がその様子を目にしたのだった。


「М市の諸君!私は星間国家ステラリス第3騎士団団長のハルモスである!私がこの星に、いやこの街に来た理由はただ一つ、あの青い機体と我々の姫様を返して貰いに来たのだよ!」


「あれは我が国にとって大切なモノであり、王族に連なる者でないと動かせない特別な機体である。パイロットと機体を引き渡して貰おうか!」


動画は生配信で行われていた事からコメントが大変な事になっていた。しかしコメントの多くは釣りだのネタだの便乗だのとの指摘や冷やかしがほとんどで誰も彼が宇宙人とは信じていなかった。


『これマジ?』

『М市の宇宙人騒ぎ、人が死んでたでしょ不謹慎じゃね?』

『釣り乙』

『普通の人間じゃねーか!宇宙人ってなら証拠見せろ』

『↑同意』

『第3騎士団長(笑)』

『姫様に反逆されてて草生える』


ハルモスも馬鹿ではない。多少は生配信と言う物のしくみを頭に入れており、コメントから自分の演説が見ている人間達にどう受け取られているのかを察する


「おのれ、貴様らは信じておらぬ様だな。だが、船内やハリーの様子を写す訳にもいくまい。どうするか………そうだ、明日の午後3時に我々はМ市天文台に降り立つ。これでその通り宇宙船が降りてきたら証明になるであろう。分かったか視聴者諸君!ではさらばだ」



動画がエンドロールに切り替わる。流れている曲はステラリスの国歌であった。






────地中深く



「ステラリスじゃと?その様な国は知らんが遥か過去、我々が地上に居た頃には星の民との交流もあったと聞く。しかし都合のよい事だこれで地上の奴らは星の世界と地底からの挟み打ちになったと言う訳だ」


地底人の大将であるリュウモンが岩が転がる様な音を鳴らしながらガランガランと笑う。

リュウモンの手元にはスマートフォンが握られていた。


「しかし配信とは面白い。戦に使えるぞこれは!アンザン!アンザンを呼べ!」


「ハッ!し、しかしアンザンは岩石兵とドグーを複数連れて地上に向かわれました」


「ふむ……そうであったな……戻ったらアンザンの見た目を使った情報戦も仕掛けておけ。同情を誘う様な背景を作って流せ。それだけで組織と言うのは動きが鈍る。」


「了解しました!」




─────その頃、М市



「あーっはっはっは!イワナガヒメ!イワナガヒメは何処に居る!ライブソイルとイワナガヒメを出すんだよ!」


巨大のドグーが5体にそれらを統率する巨大な石像が街を破壊していた。

先日からの騒ぎで街に配備されていたガルドがドグーに立ち向かうが岩石兵が盾になり攻撃を受け止められ、その間に左右のドグーの攻撃で呆気なく破壊される


「やめろっ!」


岩石兵とドグー達の目の前には先程破壊したガルドより少しばかり無骨で黄色と黒のロボットが立ち塞がっていたしかし、探索機は防衛機とサイズはほぼ変わらず5〜6メートル程度であり、10メートルサイズの岩石兵とドグー相手にはあまりにも頼り無かった。だが!


「ヤス!マサ!合体だぁ!」


「「あいさっ!」」


猛の駆るユンボールが大きく飛び上がり、手足を折りたたんでゆく。その左右に2人が乗るパワーショベルが現れそれらをさらに後に待機していたダンプに積載されていた土が包み込む!


「街を支える地盤の為に!縁の下の力持ち!」

「緑の十字を心に刻み!今日も1日安全に!」


「土木拳接ドカソイル、案内通りに着工開始!」



岩石兵の眼前に同じクラスの巨大ロボットが誕生した。胸部には猛が乗る探索機ユンボールが収まっており、両腕は油圧式パワーショベルを骨格とした無骨で角張ったものへ、両足はクローラーが変化したボンタンの様な形をしており、踵から露出したクローラーによりローラーダッシュをする!


「街を壊すんじゃねぇ!必殺!ゲンノウナッコォ!」


バケットが変化した拳であっという間にドグーが破壊される!しかし、岩石兵にはガッチリと受け止められてしまった!


「なんだい!やかましいねぇ!でもあんたらみたいなのに負けるウチの岩石兵じゃないんだよ!」


岩石兵はその見た目からは想像出来ない様な機敏な動きでドカソイルに拳を叩き込み返す!あっという間に装甲となっていた特殊な土が砕け飛び散り、胸部のユンボールがあらわになる!


「人が乗ってるのはそこだねぇ?やりな!」


ゴガアアア!と岩石兵が吠え、大きく拳を振りかぶり叩きつけたと共に大きく砂埃が舞う!


「仕留めたか。さぁ!ゲンブ!何処かで見てるんだろう?出て来なさグウッ!」


岩石兵の足元を左右からパワーショベルが掬い、上手い具合にこかす!


「なにっ!お前はさっき潰したハズ!」

「残念だったな!ドカソイルは3人乗りだ!しかもつっちーのおかげで瞬時に合体分離が出来るのさ!」

「マトが小さくなって、やっこさん距離を測りかねたらしい。恥ずかしいねぇ」



そして転倒した岩石兵の上に特注ネイルガンで釘を打ち込み、その釘目掛けてスレッジハンマーを振り被るユンボール!


「砕くのは無理でも割るんなら意外と出来たりするんだぜ!岩野郎!」


パワーショベルが押さえ付けていられる短い間に釘を撃ち込んでは殴り、撃ち込んで殴る事を横一直線に!4本目の釘をハンマーで叩いた瞬間にお腹から上下に分かれた岩石兵は沈黙したのだった。


「ドカソイル!その名前覚えたぞ!」


岩石兵を動かしていた女、アンザンは悔しそうにしながらビルの影にひっそりと消えた…………


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