第7話 配信開始



「さぁ!みんな!今日も調査してる?ダンジョンの内情をぶち撒けて行きたいモンスターパパラッチ!パラ子だよー!!」


「今日は話題の剛田土木の秘密兵器のパイロットにしてあの特級探索者ガンテツの甥っ子さん!しかも剛田土木の次期社長?!剛田猛くんをお呼びしてまぁ〜す!」


 ここは大然市の真ん中にあるダンジョン。そこに入ってしばらくして開けた場所にて。

 

 カメラに向かってにこやかに、朗々と語りかける分屋識瀬ぶんやしらせは慣れた様子でこちらを促してくる。


「あ〜言わなくていい事まで……紹介に預かった猛だ。っても紹介出来るのは俺の事だけであのドグーもハニワも説明出来ないんだけどな」


 剛田がカメラに写るとコメントが加速する。大半はあの時の話の詳細を聞きたがっているものであり、他には宇宙人のことを聞いているコメントもあった。


「そうそう、今コメントで流れたけど俺が識「ワーッ!」チッ……パラ子のオファーに答えたのはその宇宙人の情報を集めててな、俺の親友があの日から行方不明なんだ。ニュースじゃ怪我人や死人の確認が進められているが、一人だけまだ見つかって無いんだよ。渡海人って奴を見かけたらパラ子チャンネルに一報頼む」  


 俺はカメラに向かって頭を下げる。コメント欄では概ね好感を持ったり心配をしている様子のコメントが流れているが中には「パラ子ちゃんに近づくな」や「お前は知らない、見たくない」等のコメントも散見された。


 少しイラっと来たが、ここではお客様の立場だ、こらえろ……と思っているとダンジョンの奥から声が聞こえた気がした。


「おい、パラ子」

「えぇ」


 阿吽の呼吸でそれぞれの探索機に乗り込む。


 探索機とは防衛機体ガルドや土木機体ドカタンをベースにダンジョンを探索する用に装備を調整した機体群の総称であり、まとめて「エクスプロン」と呼ばれる。


 上級のエクスプロンはモンスターの素材や装備を取り入れてカスタムされており、次第に乗り手の探索者の専用機の様になって行くのである。


 2人は配信の背景になっていたそれぞれの機体に乗り込み声のした方に走り出す!


「行くぞユンボール!」「ライカ!スクープよ!」



◇◇◇



 星乃ソラは焦っていた。

 父親と憧れの人が殺され、無我夢中でUFOを落としたがその後のシュミレーションでは惨敗。


 なんとしても戦える様になりたかった彼女はまだ慣れないベール・ポップを駆りダンジョン探索をしていたのだ。


 ダンジョンに入るのは、小さな頃に光輝さんに「何事も経験だ」と連れられて来た以来であり、思えばそれも私に戦いと言うものを見せるためだったのかと感じる。


「ハァ……ハァ………次は?!」


 5メートル程の大きさの“オーク”がベール・ポップを取り囲む。


 仲間を数体切り倒され、近づくのは危ないと判断したオーク達は手槍や石を次々と投げつけ、次第に彼女を追い詰めていた。


 手槍の一本がコクピットブロックに当たった事でバランスを崩し、激しい音を立てて倒れ込むベールポップ。


 あれよあれよという間にオーク達によって押さえ付けられ装甲を剥がされようとしていた!


 よく見るとオーク達が装着している鎧はここで朽ちた探索機のモノであり、ベールポップもまたその戦利品の一部にされようとしているのだ!


「クッ!私はこんな所でやられる訳にはいかないんだ!父さんや光輝さん!天文台の皆の敵討ちをするまでは死ぬ訳にはいかないんだ!動け動け動け!動いてよっ!イヤっ!動いてっ!」


 次第に半狂乱に叫ぶソラ。しかし、ベールポップが解体される事は無かった


「その機体、UFOに突っ込んで行った奴か?この豚どもを片付けたら聞きたい事がある。答えて貰うぞ」

「スクープ発見!独占インタビュー!厄介ファンの方はご退場願いますっ!」


 そんな声が聞こえた瞬間、頭上に居たオークの頭部に土木機体用のスコップが突き刺さっていた。


 その隣のオークには小柄な探索機のドロップキックが炸裂していた


「おぉぉらぁぁッ!そこの青い機体は声からして女だろ!男がよって集ってってのはカッコつかねぇだろオークさんよ!」


 残りのオークに黄色と黒のストライプが入った角張った探索機……いやほとんど土木機体ドカタンの鉄拳が炸裂する。


 巧みなクローラーワークで地面を滑る様に動き、アームの力だけでなく旋回するヒネりも加えてのパンチは生身の人間が繰り出す様な美しいフォームでまだ生きているオークの顔面に吸い込まれて行った。



 なお、その様子は分屋の探索機“ライカ”の眼を通して配信され、爆発的な拡散を見せた。



◇◇◇



「ふぅ。片付いたか。で、アンタに聞きたい事がある。アンタはあの時に天文台に居た人間だろ?渡海人って知らないか?こういう奴なんだが」


 俺は青い流線型の探索機に情報を送る。

すると青い機体はチャンネルを開き通信を初めた。


「その質問は2度目ね。クラスメイトの顔くらい覚えてるわよ。特に有名人のアンタ達のはね」

 

「おま……星乃ソラ?!なんでアンタみたいなお嬢様がこんな所に?その機体はどうしたんだ?」


「これは私の物らしいわ。お父様と光輝さんが用意してて、UFOを落とした時は無我夢中で………そうだ、海人さんなら……信じてもらえないかもだけど、坂道を駆け下りてる所をバスと接触してガードレールから山の斜面に投げ出されて……消えたの。」


「消えた?」


「確か前にもそう言ってたな。」


「そう。私の乗ってたバスが暴走してて、彼に突っ込んで行って跳ね飛ばされて……空中でフッと消えたのよ。嘘じゃないわ。今命を助けて貰った人に嘘を言うなんてあまりにも恩知らずだもの」


「疑わねェよ……なあ識瀬」


「えぇ、ひょっとしたらパパの時と同じ可能性がある。」


「やっぱおじさん案件かよ」  



そして配信を切り、3人は帰路についた。




──────


読んでくれてありがとうございます(/・ω・)/

良ければフォローや☆をよろしくお願いします!


後に剛田無双とパラ子の本名バレの所が切り抜かれバズり散らかした



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る