第6話 動き出す闇


 ダンジョンの奥深く───


 荘厳な神殿を思わせる石造りの空間、そこで怪しげな会合が行われていた


「第2世界の野蛮人どもが我々の世界の人間を呼び出して反抗を開始した模様です。いまだ進軍は続いて居ますが、その速度が少し落ちた模様でございます。」


 いかにも聖職者の様な姿をした男がスーツの男に異世界侵攻の概要を説明していた。


「ああ、少し面倒臭いけど、それは利用出来るね。召喚されたって事は地球じゃ行方不明者が出てるはずだよね。それをダンジョンの怒りとでも言って広めようか、これでまた社会と言うモノに打った楔が深くなるはずだ。」


「へへっ、それで宇宙人と地底人はどうするんだい?アレらも明らかにこっちの計画に呼応して出現したように見える」


 マフィアの様な、いかついファー付きのチェスターコートを羽織って葉巻を咥えた男が新しい心配事として一つの事件を議題に上げる。


「ああ、おそらくは彼らも目的は近いだろう。まだ確信を得られては無いが、私のカンはそう言っているよ。だが、あの街は剛田土木の事務所があったはずだよね。あそこお抱えの特級探索者はやっかいだ。ひょっとしたら剛田土木は分かっててあそこに事務所を構えたのかな?」


 そんなスーツの男の言葉に、チャイナドレスに丸い小さなサングラスのコレまた怪しげな女が続ける。


「今時のジャパニーズの企業はこぞって東京に事務所を構えようとするのに、特級探索者を抱えながら地元を動かないのはおかしいですからねぇ?ナニかあるんでしょうね?邪魔だったし潰してしまおうかしら」 


「良いんじゃないか?かの特級は我々の計画を狂わせる可能性のある存在だ。今のうちに対処しておくのが良いかな。その後じっくりと宇宙人と地底人の話を聞こうじゃないか」


「それじゃ、我らカオスの為に」

「「カオスの為に」」



◇◇◇



 所変わって─月の裏側、巨大円盤ステラリス


「玉座が動き出したか……」


 巨大円盤ステラリスの中央ブロック、最高指導者に与えられた会議室にて覇気のある大柄な男が円盤国家ステラリスの民へと向けた演説の配信を行っていた。


「皆のもの!我輩、フィクドスである!国民よ!度重なる調査隊の派遣によりついに我々は新たな母なる大地にたどり着いた!思い返せばこの星は15年前にあの騎士団長コーキンにより発見された星だ!」


 男は情感たっぷりに、時に拳を握りしめ時には顔を覆う仕草をしながら、演説はヒートアップしていく。



「コーキンには新しい星をまだ幼い姫様に見せたいと玉座を携え先遣隊として向かって貰っていた。あの星にはそのコーキンと姫、玉座があった!しかしこの地球の原住民の教育に染まった姫様は玉座を駆り我らの先発隊を撃滅せしめ、その渦中で先に降り立っていたコーキンは死んだ!これは戦争である!あの星の民は我らから姫と玉座、そしてコーキンを奪ったのだ!」



 巨大円盤ステラリスのあらゆるブロックでそれを聞いていたステラリスの民達はそのフィクドスの熱に当てられボルテージを上げていく


「蛮族め……」

「姫様を奪って、我らへの手先にした?」

「おいたわしや………」

「あの星は我らのモノだ!」

「原住民なぞ家畜にしてやる!」


 その興奮のまま、ステラリスは戦いの準備を再開した────



◇◇◇



地底深く───ベルグランデ帝国にて


「神話の時代が再来しようとしている」


 怪しく光る苔が敷き詰められた空間で金の装飾を付けた占い師の様な老婆が苦悶の表情をしていた。


「リョクセン!やはり神か!地上では神話ともてはやされる、我らを地下深くに追いやった忌々しい化け物が!」


 荒々しい雰囲気の男が拳を握りしめ闘志を燃やす


「あぁカコウ、長らく封印されていた我々が目覚めたのだ。あの化け物どもも気が早い奴は地上を出歩いていてもおかしくないさね。アンザン、あの土はやはりゲンブが?」


サラサラとした砂色髪の長い女が報告する。


「ライブソイルを持ち出したのはゲンブで間違いないかと、地上に出た者の報告ではイワナガヒメを娘として町外れで暮らしている様子であります」


 おもむろに真ん中に座る大柄な老人が口を開く。


「そこまで分かっていて何故取り返して来ない、貴様らは何をやっておるアンザン」


「ハッ地上に住む人間ども、神の燃料でしか無かったニンゲンどもが鉄の体を手に入れ闊歩しているのです。まったく忌々しい……岩石兵の許可を頂ければすぐにでも神の存在をを調べてまいります。」


 砂色の髪をした女は頭を垂れて姿を消す。


「よかろう。他には?」


 大柄の老人は頷き周囲を促す。すると比較的細身でありせむしの小男が顔を上げる


「リュウモン様、お耳に入れたい事がございます」


「申せ」


「現在の地上ですが、ダンジョンと呼ばれる異界への入口が開きそこで探索している者たちがおります。しかしその異界、我らの様な民がおりますれば来たる神との戦いに使えるかと」


「なるほど、ハンレイその方は貴様に一任する。はげめよ」


「ハハッ」



◇◇◇




 地上、大然高校にて───


「ヤス!てめぇパン一個多いじゃねぇか!」


 剛田猛は友人であるヤスをシバいていた。


「チッ!カイトの野郎何処行きやがったんだ!宇宙人ども、覚悟しやがれ!」



大然高校──屋上


「で、話があるって?」


「えぇ、星乃さん貴方配信者になってみない?」




─────


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