第5話 カオスの影
俺の名は渡海人!何かチャリで事故ったら異世界に居たんだが、何の説明も無くデカい騎士に乗せられて戦わされたんだ!踏んだり蹴ったりだよね!
今はその戦後処理……片付けが終わって、偉い人が居るっぽい所に通されたところ。何か牢屋から出されてすぐに座らされたあの玉座に今はくたびれたおじさんが座って頭を抱えていた。
俺が入って来たのに気付くと威厳を出す為か背筋を伸ばし、渋い顔をする。
「君が新しく来た戦士か。私はここマグリ国の王、ドブル・マグリである。さて、貴様は戦の心得があるようだな。慣らしも無く、初陣で敵騎士を討ち取ったそうではないか。その思い切りは良いが、騎士捌きは何処で覚えた?如何によってはここで拘束させてもらう。見ての通り我が国には余裕が無いのでな。」
王様の言葉の後、左右の兵士さんが槍を構える。
まいったな……騎士を動かした事のある動きをしたから怪しいと思っている……?
いや、この国はもう首都陥落寸前のドロ船みたいだからな……呼び出された用事によってはトンズラこいたほうが良さそうだし、どうするか………
いや、ここは1つ、掛けてみるか。
「一つ、よろしいでしょうか?」
「許す。しかし、戯言の類であればその限りではないがな」
「ドブル王は私が騎士の扱いを心得ているのが気掛かりとおっしゃいます。しかし私は、国元においてはダンジョン攻略をする探索者の真似事をしていました。騎士の扱いはそこで師匠に仕込まれたモノでございます。なにぶん、私の知る機体……騎士とは勝手が違ったものの、扱いには慣れております」
俺は出来るだけ堂々と、自信のある風に語る。
こういうのは言葉の内容より言い方で判断される事もあるからな……剛田のおやっさんに腹から声出せってドヤされたっけ………
「………貴様の前に呼び出した者はその様な事は一言も言って無かったが……嘘では無さそうだが……以前に異界から呼び出した戦士はその様な事は無かったぞ。これはどういう事か。マックを呼べ!」
あ、やべ。マックは明らかにアメリカ人だったからなアメリカだとダンジョンは軍人しか入れなかったよなぁ
しばらくするとマックが引き摺られながら現れた。この一瞬の間にか殴られた様で顔に痣が出来ている。
「マックよ、貴様は確か自分の居た所ではこの様なモノを動かす人間は居ないと、そう言ったな?だが同じ世界から呼び出したこのカイトによるとダンジョン攻略をする人間が居るらしいではないか。貴様は嘘を述べたのか?」
マックは青い顔をしている。仕方無いな。ここは同郷の……は意味が違うから同界のよしみで助け舟を出すか!
「待って下さい!ドブル王!彼は嘘を言ったワケではありません!」
ここでマックが目を見開く。流石アメリカ人、オーバーリアクションだなぁ……
「彼はアメリカ人だ!我が祖国と違ってアメリカと言う国は過去に邪教徒がダンジョンを占領し大きな事件となった歴史があり、ダンジョンに入れる人間を制限していたのです!」
「なに?それは本当か?」
「はい。我らの世界では、アメリカと言う国は世界そのものを左右する超大国であり、実質的に世界の支配者たりえる国家です。ですがその大きさの分不埒な奴らも多く、その様な者達が集まって出来た「カオス教」なる宗きょ「カオス教だと?!」
俺の言葉を遮り王が叫ぶ。頭を抱えしきりに辺りを見回しながら何かを警戒していた。
………え?この世界にもカオス教あるの?マジで?
「まあ、異郷の者の国の話だ。我らの知るカオス教では無かろう。続けろ」
「は、はい。アメリカと言う国が軍人……兵士にしかダンジョンの調査攻略を許して居ないのはそのカオス教が「ダンジョンは新しい世界へ行く為の架け橋であり、それをいたずらに暴いたり処理したりする事は不敬である」と……ダンジョンの入口のある街一つ占拠しようとした歴史があるのです」
「同じだ……」
俺は思わず「は?」と聞き返す。しかし王は側近と何やら話を初めてしまう。
「まさか異郷にも教団が?」
「可能性はあるかと、現に向こうからこちらには呼べるのです。こちらから向こうへ渡る法も何処かには存在するのでは?」
「やはり貴様もそう思うか……では……ああ………それで……よし」
「マックと言ったな?ひとまず貴様への疑いは保留とする。しかし、新たな問題が出てしまったな……カイト、貴様には悪いと思うが、この国の為に戦ってはくれぬか?」
「ハッ、謹んで」
俺はマックに肩を貸しながら玉座の間を後にする。
正直言えば王様の様子やらカオス教の反応やらこの世界に呼ばれた理由やら、いろいろ聴きたかったが、聞ける雰囲気じゃ無かったからな……
「マック、すまない。お前と話を合わせとくべきだったな。普通のアメリカ人はガルド乗らないもんな」
「へへっ、乗らないんじゃなく“乗せさせてくれない”が正しいかな。カイトは日本人だからダン証があれば入れるんだろ?良いなぁ」
その後も他愛ない話をしながらマックを休憩室に運び、そこにパンと野菜、干し肉を差し入れて一緒にかじる。
マックが、マックだけにハンバーガーが食べたいとこぼすがそんなものは無い。
この日は部屋に帰り大人しく就寝した。
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