第3話 バカ野郎がよ!



「本当にバカ野郎がよぉ!」


俺はイライラしながら裏路地を突き進む。

ゲーセンが見えて来た……やっぱ気分じゃないな


いつも立ち読みしてるブックオフ……気分じゃない


全国チェーンのカラオケ店……気分じゃない


朝まで駄弁ったファミレス……気分じゃない


ああもう!この俺様がこんなに神経が細かったとはな!自分で自分にビックリだ!


あのバカはイライラしたり納得いかない事があると天文台の坂を駆け下りてストレス発散する悪癖があるからな……昨日天文台に居て巻き込まれたって話の星乃に見てないか聞いたら「消えた」だの言いやがって………


まあ、親父さんと憧れてた男が一緒に死んじまってショックだろうし問い詰めるのも酷か。まだ死体は見つかってないってハナシだし、ひょっとしたらあのバカは宇宙人に拐われたんじゃねェのか?


「チッ………ん?」


気付いたらずいぶんと町外れまで来ていた。

ここら辺は“ウチ”とは対角線の位置になるからあんまり来た事無いんだよな


まあ、気晴らしにはなるか

知らない道をフラフラと歩いていると目の前にゴミ屋敷が見えてくる


そういや聞いた事あったな。有名な発明爺さんの家だっけ、近所迷惑だろうに


ゴミ屋敷の前を通り過ぎ様とした所で


「ちょーっとまてぇーい!そこの図体のデカいヤツ!ワシのウチに遊びに来ないか!!!」


見つかった……ゴミ屋敷に招待されるってウワサはマジだったのかよ


「ああ、良いぞ爺さん。俺も行場が無かったんだ」


どうにでもなれ。この爺さんがやべーヤツでも知るかってんだ


俺はそのままフラフラとゴミ屋敷の中に入って行った







「よぉ〜うこそ!ここはこの「発明爺さん」のラボじゃ〜」


「ケッ、何が「ラボじゃ〜」だよタダの倉庫じゃねぇか」


「まあまあ、老い先短い年寄りの戯言よ。相手してくれないか?もう時間が無いんじゃ」


「そういうのは市役所に言っとくかデイサービスにでも頼むんだな」


「まてまてまて!時間が無いのはワシじゃ……いや、まあ良い。コイツを君みたいな男に見て欲しいんじゃ」


爺さんが取り出して来たのは古めかしい籠手だった。表面に見た事も無い文字?模様?が刻まれ、妙に存在感を感じる。


手の甲部分には琥珀色の大きな宝石が埋め込まれていた。


「おい、爺さん。俺も褒められた人間じゃないけどコレが値打ちモンって事くらいは分かるぞ。どっから盗んで来た?」


「盗む?コレはあの娘を守ってくれるものだよ」


「あの娘?」



「あぁ〜!おじいちゃん!ついに誰か連れ込んだのね?!誰よこんな怪しいおじいちゃんにホイホイ着いてきたのは!泥棒?保険屋?それとも押し売………あっ!」


「あっ……お前は……」


ドアを開けて飛び込んで来た女は俺のクラスメイトの豊穣実莉だった。メガネを掛けていてクラスじゃ目立たないタイプで大人しそうな娘だ。隠れファンも多い


「あっ……剛田……」


「すまない、豊穣の家だとは知らなかった。すぐにお暇し……“ズガァァァン!”何だ?」


窓の外を見ると10メートルはある土偶がまっすぐこちらに向かって街をなぎ倒しながら向かって来ていた


「時間が無いとは思っておったが、まさか今日とは?!しかしワシも運がいい!そこのデカいの!この籠手を付けて倉庫の地下に行け!そしてそこにある守護神でこの街を、いや、実莉を守護って下されッ!」


言うやいなや、地下に続く階段に押し込められる。


そこには様々なガラクタを埋め込まれた巨大なハニワの様なモノが鎮座していた。


「おじいちゃん、あの土偶が来るの知ってたみたい……ひょっとしてあなたも何か知ってるの?」


「知らん!だがこりゃあ良い。ちょうどむしゃくしゃしてたんだ!」


「ダメよ!アレと戦おうって言うの?!おじいちゃんを連れて逃げましょう?!それとも親友が居なくなったからってヤケになってるの?!」


「まあな、そんなとこだ。ジジイと隠れてな!」


言うや右腕に籠手が勝手に装着される!そして俺は埴輪に吸い込まれ操縦席に座り込む


「なんだかよく分からんが……よっしゃ!やったる!」










ドグーの前にハニワが立ち上がる!


「どおぉぉりゃああああ!」


バシャアアアアン!ドグーを殴ったハニワの腕が砕けた

「なんだぁ?!ポンコツじゃねぇかコイツ!」


ピーッ!ドグーの目から光線が炸裂しハニワの体勢が崩れる!倒れかけたハニワを近くに居たパワーショベルが支える


「そこに居るのは若ですかい?!」


「マサ!てめぇ何やってんだ逃げろ!ダンジョンじゃねぇんだぞ!」

「それは若の命令でも聞けねぇなぁ!ここで逃げたら剛田土木の内定取り消しでさぁ!」


ドグーの後ろから別のパワーショベルが爆走して一本のアームで殴り掛かる!



「ヤスか?!お前まで!」

「へへっ!未来の社長に今からワンマン経営はダメだと教えないとな!今はコンプラってうるさいからヨォ」


「バカどもが……ちょうど良い!お前ら固まれッ!んで何があっても動くなよ!」


「「ヘイ!」」


ハニワが2機並んだパワーショベルを包んでゆくと次第にそのシルエットが変貌する!2本のパワーアームが強靭な両腕へ!4本のクローラーが組み合わさった豪快な足へと!


「やっと分かったぜ!気合いでこのハニワは動く!てめぇら!気張れよォ!」


「「あいさっ!大将!」」


パワーショベルに土が巻き付いて一回り大きくなった腕を大きく引いてドグーに狙いを定める


「なんだか知らんが!この街から出ていけェッ!バカ野郎がよ!」


パワーショベル2機と合体したハニワはその拳でドグーを粉々に砕いたのだった!












はるか地下深くの何処か


「まさかアレは……」


「ライブソイル……生きている土…ならばあそこに」


「あの場所へむかえ!アレはあそこにある可能性が高い!」

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