第2話 流れ星



私は今とても落ちつかないんです。


お父さんに呼ばれて山の上の天文台に向かっているんですが、お父さんの部下の研究員で光輝さんって方が居るのですが……会うといつも緊張してしまい、上手く話せないんです。


でも、あの人の瞳を見ると何故か酷く懐かしい様な、でも物凄く寂しい様な……物凄く不安な感情が渦巻いて……何も言えなくなるんです。


ふと窓の外を見ると向こうから自転車が結構なスピードを出して坂道を駆け下りて来てました。

あれはうちの制服?危ない人も居るなぁ……と眺めてたら突然バスが揺れ始めました!

 

「キャッ?!」


バスが道の中央の黄色い線に乗り越えて加速してる?!え?運転手さんがグッタリしてる?!


私は急いで運転手さんを起こそうと駆け寄ろうとしましたが、運転席の足元に血溜まりが出来ているのを見て絶句しました


ガシャアアアン!


自転車を跳ね飛ばし、さらにバスもガードレールを突き破り山の斜面に投げ出された私達の乗るバス

少し向こうには空中に投げ出された少年が………消えた?


「お嬢様ァァァァァァ!」


空中に居るバスに飛び込んで来たのは……光輝さん?!どうやってここに?!


「失礼します。」


そういって落下中のバスから私を抱え上げる山頂の天文台へと飛んで行く光輝さん……飛んで行く光輝さん?!


「えっ?あっ?光輝さん?何で飛んで……」

「申し訳ありませんが、喋らない様にお願いします。舌を噛んだら大変ですので」







「ソラ!無事だったか!」

「お父様!いったい何が起こっているのですか?!バスの運転手さんが殺されてて、光輝さんが空を飛んで!」

「うむ……ついに話す時が来た様だな……光輝、しばらくここを頼む」

「ハッ!」


お父様に連れられて天文台の中を進むと、いつもは「絶対に入ってはならない」と言われていたドアをくぐる。そこには見た事も無い機械が並び、ガラスの向こうでは変わった形の飛行機といくつもの防衛用機動兵器ガルドが並んでいた。何人もの人が忙しなく行き交っている。


「神よ……ついに娘の因縁の日が来ると言うのですか…………」

「お父様……いったいあの飛行機は……ここはなんなんですか!」


ドカン!この天文台のすぐ近くで爆発が起こる!

外からは何度も爆発音が鳴り響き、警報装置が作動する!


「姫様を守れッ!光輝様は!光輝様を呼べッ!代わりに応戦するぞ!」


バタバタと天文台の職員だった人達が銃を手に取り部屋から駆け出して行く!


入れ違いにさっきまで戦っていたであろう光輝さんが来て私の前で跪く。


「お嬢様……いえ、ソラール姫様。この様な姿でお目汚し失礼致します。ついに狂ったステラリスがここを見つけました。………ここはもう危険です。ダンジョン探索本部か防衛隊基地、とにかく安全な場所へお逃げ下さい!事情はあの飛行機に全て記録しています!」


私をお姫様だと言う光輝さんの目はいつもの優しい雰囲気は無く、決意と後悔、悔しさを湛えて居ました。「パアン!」突然銃声が響き光輝さんが!!

そこにはいやらしい顔をした天文台の職員が拳銃を持って立って居ました。


「いけませんねぇ~騎士団長の息子という者がそんな逃げ腰でぇ〜だから背中から撃たれるんですヨォ〜」

「グッ……貴様は…デステラの手の者だったのか……」

「光輝さん!!しっかり!」


「他にだぁ〜れも来ませんよぉ〜今は緊急事態で外から来る対応に手一杯なんですぅ〜だから姫はこんな出来損ないの騎士崩れを捨てて私と来て貰いま「パン!」グッ……」


「お前はヨシダか……俺が居ることを忘れていたのか?それとも老人一人を処理するのは造作も無いと侮って居たのか?」


「グハッッッ!もはやこうなれば貴様らごと……」


ヨシダと呼ばれた人は懐から何か取り出してスイッチを入れた!


光輝さんがその隙に私を抱えて飛行機まで走り出す!背後からは何度も銃声が鳴り響き、その度に光輝さんが苦悶を表情を浮かべる……

そして飛行機のコクピットにたどり着くと私をシートに押し込んでキャノピーを閉じる


「姫様、どうかお許しを。そして真なるステラリスに栄光あれ!」


その言葉の直後、物凄い音と衝撃で周りが真っ白になりました。

真っ暗なシートで私は涙を零してました、父親と憧れの人を一度に……いったいどうすれば………






「ここか!俺もプロ失格だな。だが騎士団長は最後まで護ったか。おい、シートに座って居るんだろう?機体を起こせ!このまま死にたいのか?!」


「こ、今度はなに?私もういっぱいいっぱいで」


「死にたいのかと聞いている!死にたく無ければ起きろと叫べ!」


キャノピー周りのガレキが取り除かれ、防衛用機動兵器とはカラーリングが違う砂色の機動兵器がこの飛行機を掘り出していた


「ソレは貴様でないと動かないと聞いている。まさか動かせないのか?」


明るくなったキャノピーの前面にはべったりと血がついていて、その中に光輝さんが付けていた星型のペンダントが引っ掛っていた。そこで私の意識は完全に切り替わる


「よ………よ………よ………よくも………!よくもよくもよくもよくもよくもよくも!」


「お父様と光輝さんを!みんなの天文台をよくもォ!お前か!お前がやれと言ったのかァ!」


飛行機が輝きだし、そのシルエットを人型へと変える!


「俺じゃない、俺は外部の協力者だ。敵は……ヤツらだ!」


砂色の機体が空中に浮かんだ円盤を指す。


「 お ま え か !」


飛び上がる勢いのまま、蒼く輝くブレードを振り抜き幾つもの円盤を真っ二つにしながら空を翔ける蒼い流線型の機動兵器、いや騎士がそこにいた


「で?飛行機ちゃん?ちゃんと話してくれるのよね?」











   とある宙域

「やはり玉座と姫があそこに!」


「でかした。全軍!進撃せよ!目標は太陽系第3惑星!地球!」


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