ストロングロボティクス界戦 UG

コトプロス

第1話 俺は自転車をがむしゃらに漕ぐ



気付いたらだいぶ緑色が増えた景色が周りを流れている


日々のストレスをペダルにぶつける様に、自転車を軋ませながらガッシャガッシャと、一心不乱に漕ぐ


ふと長い下り坂に差し掛る、これだ


ペダルから足を浮かし顔を上げる。一気に圧迫感から解放され頬を切る風を体全体で感じる


「ぃぃぃいいぃぃぃやっッッッほーーードちくしょーーがァァァ!」


俺は腹に溜まったモヤモヤとしたものを青空に叩きつける様に叫ぶ

ここは街からだいぶ離れた山あいの坂道だ。周りには誰も居ない。


イライラするといつもここに来る、ここは天然のジェットコースター


自転車がかなりのスピードを出して坂道を滑る様に駆け抜ける。このスリルと快感だけが俺を解放してくれるッ!


「タケルの野郎!俺が爆死したのいつまでも笑いやがって!な〜にが「フウカちゃんおりゅ?」だよジャガイモみたいなツラしやがって!あ〜悔しい〜!」


そう、友人の猛とソシャゲのガチャを引いていて、アイツは配布石で来たのに俺は一万入れても出なかったのだ


気晴らしに自転車をカッ飛ばしに来たのである


しばらく坂道を下っていると対向車がやってきた

歩道なんて無い山道だから出来るだけガードレールに寄っておく。


やって来たのは山の上にある天文台へ行くバスだった

たまにすれ違う星の模様をラッピングされたバスがどんどん近づいて……いや、運転手が気を失っている?!


真正面から運転手が気を失っているバス、こっちはかなりスピードを出している自転車だ。

ヤバいな、焦ってハンドルを切るとバランスを崩して転倒する、かといってこのままだとぶつかる……


ええい、ままよ!


「う、うぉぉぁぁぁぁ!」


俺をガードレールから山の斜面へ投げ出された。打ち所が良ければ、助かる可能性ある。それに掛けて


その瞬間、俺は空中で世界がスローになった様に感じていた。後ろで自転車がひしゃげる音が聞こえる……だんだん地面が近づいて来て……





「お願い!助けて!」





俺の姿は忽然と消えていた。












気付いたら俺は牢屋の様な場所で目覚めた


「ここは何処だ?天国じゃ無さそうだが」


「ヘイ、ジャパニーズボーイ!お目覚めかい、不思議の国へようこそ!だ。日本人的には竜宮城とか言った方が分かりやすいかい?」


金髪のくせっ毛のある男が俺を覗き込んでいた


「あんたは?」


「おいおい、ジャパニーズは礼儀正しくて奥ゆかしいんじゃなかったのか?名を名乗る時は自分からってママに教わらなかったかよ」


「あいにく、礼儀ってのは時と場所、相手を選ぶらしくてね。気付いたら牢屋の中。って状況じゃ奥ゆかしさも恥ずかしくて出てこれない。アンタが何者なのかも分らないからな」


最大限嫌味っぽく、苦虫を噛み潰すように吐き捨てる。


「まあ、借りて来た子猫ちゃんみたいだな。だがそれもそうか。ワケが分らないよな。日本に居て気付いたら……ってクチだろ。俺はマック、マック・モスってんだ。友達は俺の事を「どっちつかずのバーガーマン」って呼ぶ。よろしくな」


「ああ、よろしくマック。アンタは何でここに居るんだ?」


「ジャパニーズ、それはすぐに分かる」


「あとそのジャパニーズってのはどうにかならないのかよ」


「だったら名乗れよ!子猫ちゃん」


「………カイト、渡海人だ」


「あぁ、よろしくカイト」



すると向こうから西洋鎧に身を包んだ男が2人やって来た


「すまないな異邦人。我々としてはこの様な所に押し込めたくは無いのだが、あなた方が信用出来ないと言う人も居るのだ。許せ」


「許せだって!だったら俺をどうやって、牢屋に「まてよ、カイト。そうまくし立てると聞ける話も聞けなくなる。」


「ついてこい」


マックと一緒に連れられて城らしき石積み建築の廊下を歩く。いったいここは何処で彼らは何者なのだろうかと考えていると豪華な扉をくぐり玉座の間らしき場所に通される。突然、轟音と共に城が揺れ始める。


「始まったか!異邦人をここへ!彼でダメならこの国はもう……」


「海人、アンタ試しにあの玉座に座ってみな!急げよ!」


「異邦人!とにかくあの玉座に座ってみろっ!」


「何が何なんだよ!もう!座れってったってさぁ!」


兵士らしき人に抱えられ、玉座に座らされる。


「だからこのデカい椅子がなんだってんだ!この音は!この揺れは!どうな「だから騒ぐなってんだろジャップ!こっちも余裕が無いんだ!」


兵士達は覚悟を決めた顔をして何処かへ走って行く


「カイト!死にたくなけりゃついてきな!地獄へご招待だ。ちなみに……乗り物は得意か?」


「…………自転車なら」


「上等!こっちだ!」


マックに連れられて来たのは大きな倉庫の様な場所、5メートル程の巨大な甲冑の腹部に先程の兵士が乗り込んでいた。


「予備は?今日来たコイツも乗せたい」


「あっちの角だ!頼む」


俺とマックの前には塗装されてない先程の兵士が乗り込んでいた物と同じ巨大甲冑が鎮座していた。


「バタバタして本当にすまないと思って居るが、手取り足取りする余裕が無いんだ。乗り方はバイクと変わらない、分かったら剣を取れ!」


騎士の腹に飛び込むとハッチが閉まり明かりが灯る


「俺だってウスノロってワケじゃないんだ!察する所ぐらいある。出口は何処だ?」


すると轟音と共に格納庫の天井から別の形の騎士が降ってくる


「騎士団の紋章も無しに騎士を塗り替えている。お前か!勇者は!」


目の前の騎士が剣を振り下ろしてくる!

咄嗟に近くにあった剣で応戦する!


「てめえナニモンだ!いきなり切りつけやがって!覚悟は出来てんだろうな?!」


「何者だ?何者かだと!貴様らが街を!民を焼いておきながら眼中に無いだと!」


咄嗟に足元にあった騎士用であろう工具箱を蹴ってぶつける!


「ここだーっ!」


ザン!と音を立てて敵騎士の右腕が落ちる。


「まだだ!コイツぁメカだろっ!腕くらいでーっ!」


バットを振る様にして敵騎士の頭へ剣をフルスイングする。


「いったい何なんだここは………」


騎士が開けた穴から外に出ると、そこには戦火に焼かれる異世界情緒溢れる街があった。

遠くの空に島が浮き、見たこともない奇妙な生き物達が人々と共に逃げ惑っていた。


「ようこそアリス、不思議の国へ」


隣で黄色い騎士に乗っているマックがニヤリと笑ってい

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