第30話 『まちぐるみ』


 やましんは、街のどまんなかにある、そこそこのマンションに住んでいた(そんなこと、ない!)らしい。


 夜中に、ちょっとお散歩しようと外に出た。


 今夜は、なにかのフェスティバルみたいで、駅前通りには、たくさんの人が溢れている。


 あまりに人が多すぎて、どにもならないぞ。


 やましんは、人混みは苦手である。


 で、マンションに帰ろうとしたのだ。


 すると、住宅街の入口にある頑丈な門を、係員さんが、まさに閉じようとしていた。


 雑踏がなだれ込むのを防ぐためだろうか。


 やましんは、住人だからか、すっと通過する。


 しかし、これは、夢の常なのだが、一度外に出ると、帰れなくなるのだ。


 どう探しても、入り口が分からない。見当たらないというよりは、覚えがないのだ。


 こうなったら、仕方がない、ちょっと離れている実家に帰ろう。


 まだ、電車はあるだろう。


 そこで、また、街を通り抜ける。


 周囲の建物は、なかなか、豪華な作りのものばかりである。


 人通りは少ない。


 なにやら、博物館か研究所か、どこかの役所みたいな、でっかい建物もある。表札を見ようとしたが、良く分からない。


 やがて、例の門の、通用門をくぐる。警護しているのは、ごく普通の近所のおじさんたちみたいだった。


 『どうも。』


 と、言いながら、無事、通過したのである。


 それから、私鉄の駅に向かう。


 『夢の中だと、なかなか、行き着けないよなあ、多分』、とか思いながら、歩く🚶。


 案の定、道筋は、なにやら、有るべくはずの道よりも、かなり、暗く、奇妙な塀に囲まれていて、怪しい。


 しかし、確かに過たず、前方に明るい大きな駅が見える。


 良かった。目指す駅は、そのとなりにあるはずであった。


 それは、あった。


 あったのだが、その駅は『999』の高架橋みたいに、建物が50度くらいに傾いていた。


 

  🚂🚂🚂🚂🚂🚂🚂🚂🚂



 まあ、ありがちな夢である。


 ぼくが、どこに行こうとしても、先が阻まれるわけ。


 





 


 

 


 


 


 


 

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