第17話 『たび』


 やましんと友人は、ある日、自転車で小さなリヤカー小屋を引き、旅に出掛けた。


 とりあえず、友人が、運転していた。


 いつしか、夜になり、見知らぬ街に入り、広い道を進んでいた。時計をみれば、もう10時である。


 やがて、川沿いの道はどんどんと狭くなり、やがて、民家の庭で行き止まりとなった。


 左側は川。


 右側には、古い民家が並んでいて、中には、お店もあるみたいだ。


 『道、間違えたかな?』


 友人は言う。


 『ナビ持ってくれば良かった。地図出すから。引きかえそうか。』


 友人はUターンし、やましんは、手元に地図を探すが見つからない。


 住民の子供の声がして、後方にはその子供や、父親らしきも現れるが、お酒を召しているらしく、声をかけにくい。


 がたがた揺れて、なにもかもが逃げるため、どうにも探し出せない。


 左側になった民家には、なにやら、絵画に出てきそうな、怪しい雰囲気の食堂や、中華料理屋さんらしい、丸テーブルが並ぶ古風なお店もあるが、お客さんの姿は見えない。   


 『入るかい?』


 と、尋ねたが、友人は止まらない。


 やがて、行き掛けにはなかったような、周囲を板張りの壁で囲んだ、薄暗い商店街になり、人影のまるでないその中を、ふたりは、ただ、淡々と進むのである。



   🐝🐌🐞🐳🐙



 この友人は、むかし、はるかな同じ街で生まれ、いまは、近所にすんでいる。


 父親が、同じようなコースを進んだからである。


 しかし、夢に引っ張り出したのはやましんであり、友人には関係がない。


 さ迷っているのは、やましんである。


 こうゆうのを、道ずれにする、という。


 かなりリアルなので、むかし、どこかでみた街、なのかもしれないが、わからない。


 


 

     🍁

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