進行停止バグ


 ガチャを回すためのアイテム、秘石。それが入った宝箱が逃げ出してしまった。


 ……下から足を生やして。


 それ以外にも色々言いたいことはあるが、とにかく今は……あの宝箱を追いかけなきゃいけない。


 理由は簡単だ。俺は▪︎▫︎※※具ァ捻


 俺が社畜だった頃、


※縺ゥ繧薙▪︎遉セ逡※〒縺励◆縺具?


 

※※※※※※??????



[エラーが発生しました]



[再起動します]



 ▼▼▼




 ガチャを回すためのアイテム、秘石。それが入った宝箱が逃げ出してしまった。


 ……下から足を生やして。


 それ以外にも色々言いたいことはあるが、とにかく今は……あの宝箱を追いかけなきゃいけない。


 理由は簡単だ。ガチャは誰だって回したいだろう。

 たったそれだけの理由だ。


「えっと……えっと……?」


 立て続けに色々なことが起こりすぎて、流石にランレイの頭はショートしてしまったらしい。


 俺がこんだけ冷静なのもヘンなんだよな。現実どころか元のゲームの常識すら通用しないのに、なんだかわくわくしている。


 これが好奇心ってやつか?


「行こう、ランレイ。あれを追うんだ」


「は……はい」


 ランレイはとまどいながらも俺の後を走る。


 ブザー音はまだ鳴り続けているし、周りは赤く点滅し続けている。


 そして、モンスターは不気味なほどに出てこなくなった。


 宝箱は異様な速さで、人間の足を動かして森の奥へ奥へと走っていく。


「えっと、速すぎませんか?」


 かれこれ10数分は走り続けたが、距離は縮まらないどころか離れていくばかりだ。


「いや、速いというより……」


 追いつけないように設定されている?


 俺たちが走るのを止めると同時に、宝箱もぴたりと足を止めた。


 疲れは全くない。「疲れる」という設定が元のゲームに存在しないためだろう。


「まさか止まるなんて。馬鹿にされてるんでしょうか……」


 ランレイも疲れている様子はないし、基本は【テロ】のゲーム内ルール、もといシステムに基づいていると考えていいだろう。


 宝箱に足が生えた理由はわからないが、追いつけない理由は察することができる。


 あれはボス撃破後に出現するはずの宝箱。そのボスが出現していない状態で、中身を入手できるはずがない。


「あの宝箱は一旦諦めよう。普通に進もう」


 とは言ったものの、ランレイが納得するか。ゲームのシステムがどうだという説明はできないし……


「……カゲさんは、考えてばかりですね」


 だが、ランレイの返答は、まったく予想外だった。


「私は考えることが苦手です。だから……」


 言うが早いか、彼女はそのまま走り出した。

 宝箱は立ち上がり、逃げ出そうとしたが……


 がしっ。


「え?」


 俺の目の前で、


「ほら、どうですか!」


 ランレイは、いともたやすく宝箱を捕まえてしまった。


(な、なんでだ?ボスは倒せていないのに……)


「考えるより早く動く!それが■■流の教えです!」


「カゲさんもそうやって、私を助けてくれたんですよね」


 まっすぐな目が、俺を見ている。


(ここはゲームの中だから、ランレイはただのゲームキャラのはずで、彼女にお人好し以上の深い設定は無いはずだし、俺を守ったのも多分そういう設定で、でも……)


(ランレイはのか?自分で考えて、自分で動いているのか?)


 俺は、考えた。


 考えて、わからなくなった。


「あ、ああ……」


 だからただ、ぎこちなく首を振ることしか出来なかった。


「じゃあ、開けます……よっ!」


 俺の内心などおそらく知らん顔で、ランレイは宝箱の端に手を添え、一気に開けた。


 まばゆい光と安っぽいファンファーレの後、中身が見えるようになる。


 黒いビー玉のような何かが、二つ並んでいる。


 これは、秘石じゃないぞ。それに、見たことがあるような……


[無名のシャドウパーツ×2を入手しました]


[クエストをクリアしました。ホームに戻ります]


「ん?」


 連続でメッセージが表示され、ビー玉を拾い上げる間もなく、白い光があたりを包み込んだ。

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