驚きの白さ!ホーム画面を模様替えせよ

虚無の空間、さらにキス?


 主人公と影のランレイ達を退けた、俺とランレイ。


 白い光が収まり、俺とランレイは別の空間にいた。


「ここは……?」


「なんだこりゃ……」


 なにからなにまで真っ白だ。少なくとも、草原ではない。

 壁も地面も空もわからない。とにかく、全てが白かった。


「……」


「……」


 しばらく無言のまま、二人で歩く。

 ただの社畜が格闘少女となんの会話をしろって言うんだ。

 目の前はいつまでも白が続く。


 いや、この白。まさか。


「ホーム画面か……!?」


 チームキャラ4人のイラストが並んでいるその下に、クエストへ向かうボタンがあるだけの簡素なホーム画面を思い出した。


 その背景は真っ白で【テロ】というゲームがいかに手抜きかよく表していた。


「カゲさん、なにか知ってるんですか……?」


「いや、ううん……」


 どうしたものか。この世界がゲームであること、俺が転生してきたこと……

 言ってしまうのは簡単だが、良い結果になる気がしない。


「私は……草原の前、どこにいたのか、何をしていたのか、上手く思い出せないんです。ぼんやりとした記憶はいくつもあるんですけど、全部ぼやけていて……」


「なるほど……」


 無理もない。【テロ】にはストーリーらしいストーリーが無いからだ。


 主人公は理由も無く美少女たちをあごで使い、クエストを進めていく。そしてクエスト中もイベントらしいイベントはほとんどない。


「ん、あれは?」


 横たわっている、黒塗りのシルエットのような何か。いや、あれは……


 影トーカか……?


 いち早く駆け寄ったランレイが、それをのぞき込み大声で叫んだ。


「う、動きません!」


 すぐに影トーカの上に、メッセージが表示された。


[木工屋トーカの浄化:シャドウパーツ×4]


「は……?」


 シャドウパーツだって?しかも浄化というテキストも知らないし、本格的に元のゲームと違う要素が増えてきたな……


 これも女神の言っていた世界異常ワールドバグとやらが関係しているのだろうか?


 浄化という言葉は気になる。しかしシャドウパーツを手に入れる方法は分からないし……


 いや、このゲームでやれるのはクエストに向かうこととガチャを回すことだけだ。


 それを考えると、今はクエストに向かうのが最適解さいてきかいというやつだろうか。


 クエストに向かうためには、クエストボタンを押さなければならない。この空間でクエストボタンに当たるものは一体……?


「カゲさん!考え事してないで手伝ってください!この人に人工呼吸を!」


 見るとランレイが必死に影トーカの胸あたりを押していた。心臓マッサージをしているのか。一度自分に襲いかかってきたやつを介抱とはなんと優しい……


 ……人工呼吸!?


 そう、言いかえればキスだ。


 ……無理だ!


「あの、ランレイ。手伝うから、その位置を変わってくれないか?」


「え?なんでですか?」


「えっと……」


「?」


 そういえば、お姫様抱っこの時も動じてなかったな……

 ランレイの純粋すぎるまなざしに耐えきれず、俺はトーカの顔の前へ座った。


 以前コ◯ンの犯人のようだと表現したように、黒塗りでも鼻や口の位置は大体分かる。


 仕方ない。この方法で助けられるかも分からないが、とにかくやってみるか。


 ええと、まずは首を持ち上げて……


 ズオッ……


「な、なんだ!?」


 妙な音の後、何かが俺の体から出ていく感覚がした。


[ダークバットの力を失いました]

[木工屋トーカの浄化:シャドウパーツ×3]


 たてつづけに、目の前に2つのメッセージが表示された。


 さっきよりシャドウパーツの必要数が減っている。

 恐らく、影トーカに触れたことで、俺の取り込んだシャドウパーツが彼女の体に移ったんだ。多分。


 だが、シャドウパーツはあと3個もいるらしい。

  

 いや、どこで集めろってんだ……


 ガチャン!


 心の中でぐちった瞬間、鍵が開くような音と共に、少し奥に何かが現れた。


「扉……?」


木の扉のようだ。

とまどう間もなく、頭上にメッセージが出現した。


[新しいクエストが解放されました]

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