†神聖なる森†の冒険

初クエスト、さらに異変

突然目の前に現れた木の扉。そして、その上に表示されたメッセージ。


[新しいクエストが解放されました]


「クエスト……?」


「へ……?何ですか?」


「ほら、あそこに書いてあるだろ……」


扉の方を指さす。


「何も見えませんけど……」


ランレイにメッセージは見えてないのか。


「いや、見えなくても大丈夫だ。どうやら、あの扉に入ればいいらしい。行こう」


「この人はどうするんです?」


ランレイは茶髪をふり乱しながら未だに心臓マッサージを続けている。

しかし影トーカはぴくりとも動かない。


「その人を助けるためには、シャドウパーツが必要だ。そしてそれは、扉の向こうにあるはず」


はっきりとした確証はないし、俺がゲームの外からきたことを喋っても混乱させるだけだ。

この言葉を信じてもらえなければ、一人で扉に入ればいい。


だが、ランレイは心臓マッサージの手を止め、うなずいた。


「……分かりました。カゲさんの言うことを信じます」


ランレイと共に扉をくぐり抜けると、そこは森の中だった。

チュートリアルの草原に比べて、かなりできが良い。

木々の間をふきぬけていく風がリアルだ。


「確かに、最初のクエストは森だったっけ?」


まあ、戦闘時の背景が違うだけでストーリーなんかないんですが。


「本当に何が起きてるんです?頭が痛くなってきました……」


うっそうとした森の中を進む。木漏れ日がさしこみ、草がおい茂っている。


どこまで歩けばいいんだ、これは。

後ろをふり向いてみると、木の扉は消えていた。

先に進むしかないらしい。


10分ほど何もない森を歩き続けると、突然の不協和音が流れてきた。


これは、戦闘音楽だ。


[ウッドソウル×2が出現しました]


そして出現するメッセージ。


すぐに、緑色のヒトダマのようなものが2つ、目の前に現れた。


「この嫌な音……敵ですか」


ランレイが構えをとる。ゲーム内キャラもBGMは聞こえるんだな。


「はぁっ!」


ランレイのハイキックが片方を倒し、もう片方は俺のパンチで倒した。

燃えてる見た目なのに熱さすらないのは、手抜きか?

まあ、ノーダメージで戦闘は終わった。


[勝利 戦利品をドロップ]


【森の破片×2】


シャドウパーツはなしか。仕方ない。


「あっけないな」


「あっけないに越したことはないですしね」


それはそうだ。元のゲームだともう少し強かった気がしたが、まあ気のせいかも知れない。


元のゲームだと最初のクエストはこの戦闘で終わりだ。


『†神聖なる森ホーリーフォレスト†を汚すものめ……』


「え?」


「今の声は?」


ああ、また知らない声だよ。


『それ以上先に進んでみろ。お前たちは†大自然ガイア怒りレイジ†を知ることになるぞ!』


それは壊れたマイクを通して喋っているみたいな声で、男か女かもわからない。


だから、こんなストーリーみたいな展開は元のゲームにないってのに。


「えっと……どうします?」


「どうするって言っても……」


進むしかないだろう。

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