第14話 気が合わないことで気の合った二人
グリフィスが爆音を響かせ環状線二十四号線、通称が武士道を爆走していた。
引っ越し業者のトラックや普通車を華麗に追い抜いていく。
助手席に座った猪口は必死にサイドボードやウィンドウの枠にしがみついている。
話す余裕などない。
猪口には、もう『車』という生き物に思え、暴れ馬の如く暴れ狂う。
抗う術がない。
と、道路わきに設置してある標識を見て叫んだ。
「石動さん! 次の出口で降りてぇえええええ‼」
もう、半ば叫びだが、石動の耳には入ったらしい。
出口に入り精算所で会計をする。
すると、あれだけ暴れまわっていた車は飼いならされた猫のように普通に一般道に入る。
その道から見える風景は、森であった。
木々の影から細かい光が射してくる。
赤信号で止まる。
と、石動は突然、大きな声で笑った。
「ど……どうしたの? 石動……さん?」
笑い終えて石動は軽くハンドルを叩いた。
「あの改造大好き筋肉バカ親父がやってくれましたよ……今までのも時速百キロを出すのに六秒で出してましたが、その半分かそれ以上で百キロを出した……それなのに運転手への手加減はない……もう、化け物ですよ」
だが、言葉とは裏腹に充実感に満ちていた。
「まあ、文句があるとすれば、あなたがつけた香水の匂いが少し残っていることでしょう」
信号機が赤から青になりグリフィスは走り出した。
「エイトフォーの石鹸の香りだよ?」
それから、二人は少し黙った。
気が付いたことがある。
コンビニなどの商店が内容に思っていたが、それは違った。
森の色合いに合わせて店の外壁を塗っているから分からないのだ。
セブンイレブンや飲食店はある。
「……で、あなたは何者なんですか? 猪口直衛さん」
石動肇の言葉に『叔父』を名乗っていた男はあっさり答えた。
「警視庁公安二課、具体的にはヤクザさん相手の商売だ……まあ、もうすぐ、定年退職になるけどね……今は秘密のグループのリーダーしているの」
「秘密のグループ?」
「うーん……まだ、具体的な内容までは話せないけど、君たちの力が必要になる。だから、媚を売っている」
だんだん、言葉に重みが出てきた。
「この際だからはっきり言うけど、君の経歴を調べたよ。実に、気に入らない性格だ。紳士気取りかも知れないが、余計な仕事を増やすことばかりしている」
「おや、意外ですね。俺もあんたみたいな権力寄りな人間は気に入らないし、信じることもできない」
「そこは気が合うね」
皮肉なのか、少し笑い猪口は続けた。
「でも、戦闘力に関しては満点だよ。いや、それ以上かな? 俺に君を紹介した秋水君曰く『俺史上最強の
それから内心でボヤく。
――まあ、その続きが『いくら振り回してもついてくるんだよ、壊れないんだよ』
『そんなに強がらなくていいのに……』
その言葉を胸に仕舞い、猪口は言った。
「昼飯にでもする? もうちょい先に、ローソンがあるから……」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます