第5話 親たちの苦行 修行編

 石動肇にとって、平野平春平の背丈は決して大きいものではなかった。


 せいぜい、百七十あればいい。


 反対のに息子の秋水は二メートルを超えている。


 百八十センチの石動には、何故小柄な親から大きな息子が生まれたのか理解不能だった。


 

 と、春平がこんなことを聞いた。


「君、秋水の修行を受けたの?」


「は、はい」


「じゃあ、その実力を見たいな」


 そう言って春平は上座のボックスから柔道着を出した。


 道場に入る。


 天井板は無く、木とニスで出来た屋根と壁、床以外何もない。


 上座もなければ下座もない。


 

「さあ、どうぞ」


 道場着に着替えた石動は同じ服装になった春平は目の前にいる。


 まず、動いたのは春平だ。


 笑顔だ。


 だが、石動の足指の痛みが悲鳴を上げる。


 思わう膝を床に落とす。


――痛い!


「これは集中力が肝なんだよ、君がいるから愛想を振りま得ているけど……」


 何とか数分間で解放されたが腕を絡めればひっくり返って天井を見る。


 帯をとっても少し動くとひっくり返る。


 反撃をしようとすれば簡単にはいなされる。


 息が切れる石動を無視して春平は汗をかいていない。


「君の弱点は無駄な動きが多すぎる。逆に言うのなら非常に頭がいい」


 何度も倒されても石動は春平の襲い掛かった。


 それが如何にも簡単に吹っ飛ばされる。


「石動君、君は頭はいい。でも、それを戦闘に生かす気は無いみたいだね。まあ、しょうがないかもしれないが頑張りなさい」


 ロクに汗をかかずに家に戻る床に寝っ転がっている石動は目を回していた。


 ネタは単純である、


 小中学校絵が付こうなどで習った武道とハマったう違う。


 石動はこの時、武道の奥深さを知った。

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