第41話 最強兄VSダンジョン探索部
鉤爪を躱し、ある程度距離取る。
瑠璃がドヤ顔で鉤爪を見せびらかす。
「油断大敵だよお兄ちゃん♪」
確かに油断した。
だけど、それより俺が思考止めるほど驚いたのは、もっと別の事に対してだ。
アレンジされてはいるが、あの技は……
「風音さんの技だろそれ。何で瑠璃が知ってるんだよ」
「ふっふ~ん♪ 実は最近シルフでバイト始めたんだよね♪ バイトの隙間時間に教えてもらってるの♪」
瑠璃は嬉しそうに語るが、事の重大さに気づいてない。
風音さんは、知り合いだからと言って、簡単に技を教えない人だ。
その風音さんが瑠璃に技を教えてもいいと判断した。
つまり、瑠璃は風音さんに認められるレベルに成長しているとうことだ。
一ヶ月で二つ名に認められるとか……
「センスの塊かよ。兄の威厳無くしそうだ」
「よそ見は厳禁っしょ☆ フレイムナイフ☆ ウォターナイフ☆」
瑠璃の背後から水魔術で出来た無数のナイフが飛んでくる。
「エンチャント以外にも使えたことには、驚いてはいるけど……」
俺は体を捻って、魔術で出来たナイフを回避する。
地面に突き刺さったナイフは、水がびしゃりと多くの水溜まりが出来た。
「弾幕避けるのは割と慣れてるんだよね」
「じゃあ、こういうのは☆」
瞬間、水溜まりからナイフが射出される。
「また、これか!?」
俺は思わず高く跳躍する。
宇佐美と似た攻撃過ぎて拒否反応が出た。
俺が避けたことで、水のナイフが背後にいた瑠璃に向かう。
「えっ!?」
バシャリと瑠璃の顔に水のナイフが当たって弾けた。
瑠璃はポタポタと水を滴らせた、ずぶ濡れ状態となる
「冷たい……でも、チャンスだよ♪」
「任せるデス! ランドメーカー!」
地面から盛り上がった土が、俺に迫る。
成程、牛山さんは斧術と土魔術のスキル持ちなのか。
的確に状況判断して、回避不可の空中で攻撃を仕掛ける。
牛山さんは集団で光るタイプだな。
「いいチームワークだ。だけど、まだ負けてあげられないな【スキル:鉄壁】発動」
体にオーラを纏わせる。
前回のレッドドラゴン戦で、俺は空中での回避手段がなく攻撃を食らってしまった。
その経験を活かし、俺は練習に練習を重ね。
ついに俺は空中での回避手段を手に入れた。
足にオーラを集中させる。
「疑似空歩!」
空を蹴った瞬間、弾かれたように体が横に飛ぶ。
土塊の攻撃から外れ、俺の横をすり抜ける。
仮想ダンジョン外に出ると、効力を失った土塊はボロボロと崩れた。
領域から出ると魔術の干渉が出来なくなるのか。
なら、領域外からの攻撃は警戒しなくてよさそうだな。
しゅたっと、地面に着地する。
どうやら牛山さんの目の前に着地したようだ。
牛山さんが訳が分からない様子でこちらを見る。
「い、今のどうやったんデス!?」
「鉄壁の応用だよ。実体のない風魔術も弾けるなら、風圧も弾けるかなぁ~て」
「滅茶苦茶デス!?」
「それよりも――」
俺はメイスで斧を振るう。
瞬間、斧が破壊され、液状に戻る。
「一撃入れた後、油断はしない方がいいかな?」
「しまったデス!? 驚きすぎて戦闘中なの、すっかり忘れてたデス……」
牛山さんはガクリと肩を落とす。
まず、1人目っと。
「お兄ちゃん♪ よそ見してていいのかな♪」
鉤爪が俺を狙って振るわれる。
「心配どうも、だけどもう見切ったよ」
俺はメイスで鉤爪を受け止める。
「確かに前よりは速くなってるけど、ただ速いだけなんだよ。動きにもっとフェイントを入れて、工夫した方がいいって、風音さんに言われなかった、かな!」
メイスに力を込めて、鉤爪を押し返す。
押し返した勢いで、ズザーと瑠璃は滑りながら、後ろに下がった。
「やっぱパワー勝負じゃ、全くかなわないか……だったら二人ならどう!!」
「おっけ☆ ウォーターナイフ☆」
猫宮さんの周りに無数の水のナイフが生成され、浮遊する。
本当何から何まで宇佐美の攻撃そっくりだな。
その後ろで瑠璃が手で指鉄砲の形を作り、指先から電気がバチバチと帯電する。
「銃の補正なしで撃てるのか?」
「今だに撃てないよ? でも、電気を作ること自体が目的だから」
浮遊していた水のナイフの一本が瑠璃の手に近づくと電気が水のナイフに移り帯電し始める。
そこから放電し、連鎖的に無数のナイフが、電気の線で結ばれ、電撃の鎖が出来上がる。
「避けられるのなら、逃げ場をなくしてしまえばいいんだよ!」
電気の鎖が網状に変わり、俺を捕えんと迫ってくる。
上下左右塞がれたな。
後ろに下がったら、領域外に出るし……
「やっぱり正面突破かな」
そのためにはリーチがいるし、武器変えるか。
俺はメイスを手放す。
「大身槍」
俺がそう言うとメイスが空中で形を変え、俺の身長を超える程の大槍が現れる。
両手で握りしめて突く姿勢で構える。
ちょっと、お前の技借りるぞ。
「模倣……槍穿!」
勢い良く刺突し、電気の網に当たる。
そのまま感電する……わけはなく。
水ごと電気を吹き飛ばす。
流石の瑠璃も想定外だったようだな。
「電気の網ならスライム感電するはずなのに、何で!?」
「簡単な話だよ。当たる前に突きの風圧で、帯電してる水のナイフを吹き飛ばした」
「やっぱ無茶苦茶だ!?」
瑠璃と猫宮さんは距離をとろうと背後に下がろうとする。
でも、逃がすと思う?
俺は駆け、槍を横に構える。
槍を横薙ぎし、瑠璃と猫宮さんの武器の刃を切断する。
距離あっても、武器のリーチあると当てるのは楽だな。
「あぁぁぁ!! 距離感ミスった!!」
「流石に槍は想定外☆」
二人ともガクリと膝をつく。
攻撃自体はよかったんだけどね。
前に似た攻撃を防いだ奴を、俺は見てるからな。
相手が俺じゃなかったら通じていただろう。
「さて、後は……」
俺は槍を構え、藍ちゃんの方を見る。
「あとは藍ちゃんだけだよ? 降参してくれると助か――」
俺が歩きだそうとした瞬間。
『ヒットを確認、勝者ダンジョン探索部』
「はっ?」
スマートウォッチからそのような機械音が流れる。
「えっ、何で!?」
俺はダメージも攻撃も受けてないのに!?
藍ちゃんがフフと笑う。
「ごめん、ね? ちょっと、卑怯……だけど、勝ちたかったから」
俺の足元を藍ちゃんが指差す。
目を凝らしてよく見ると何かいる。
草に擬態してる……アイアンフクロウのコノハか!?
いや、確かに自然に擬態するモンスターなのは知ってるけど、気配が全くなかったぞ!?
藍ちゃんが珍しくニヒルに笑う。
「私が、出した……指示。お兄さんに、遊んで……もらってって、言った。お兄さん、感はいい……けど、敵意ないと……気づかないから」
コノハがくちばしで俺のズボンの裾を引っ張り、遊んでほしそうにこちらを見ている。
これが当たり判定になったのか……
「やられた……」
勝敗の結果は、まさかの藍ちゃんの一人勝ちだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます