無間道

 ネオ熱海を支配した殺人ペンギン星人の骸は美味しく頂いた。首魁リーダーの菩薩や何らかの儀式の動力源だった大百足もくたばり、残党は散り散りに逃げた。それを僕と大神さんで三日間隈なく探して殺し回ったし、もう後は県警がどうにかできるでしょ。駄目だったら暗殺課の刑事がまた出張する。

 居酒屋で大神さんと夕食を取る。僕はアルコールだけ摂取する。

「いやー、今回も死ねなかった」

 食べても問題無い者を食べるために、暗殺課の刑事になったのは本当。だけどそれだけじゃない。叔父さんや火葬場の人たちを焼き殺してしまった罪を償わなければならない。悪を喰い殺す。それが僕を存在させる価値の基盤だ。

「罪を償うとは死ぬことだけじゃない。生きて悪を殺して回れ」

 大神さんはそう言って緑茶ハイのグラスをあおった。

「そのつもりですよ、大神さん」

 



 アルコールを飲み過ぎるとトイレが近くなる。僕の身体のスペックだと腎臓の解毒能力が高過ぎるからね。そして居酒屋のトイレは少ない。この店は男女共用で一つだけだった。並んでもトイレが開く様子がなかったので席に戻る。

「もう会計しましょう」

「もう一杯くらい飲みたい」

「もう会計しましょう」

 生きるとは苦しみだ。長く生きるとは長い苦しみに他ならない。それでも今日は妹が生きられなかった今日なのだから、軽々しく死ぬことはできない。僕はお姉ちゃんだからね。

 それはそうと早く会計しようよ大神さん、このままだと僕の尊厳が失われるから。


 

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