皇国の守護者
「汝は如何なる理由で余を襲う」
細見の男が大神さんに理由を問う。
「私は善神も悪神も一通り屠ってきた経験がある。その経験から判断すれば貴様は悪神だ」
大神さんが細見の男に対して当たり強かった理由って本当に勘なんだ。人喰いの匂いがするからとか答えるものと思っていた。
「なるほどなるほど。それでは仕方ないな。変身解除」
細見の男は幾らでも弁明ができそうな大神さんの理由に納得したようで、人間の姿を捨てて、この地下都市を埋め尽くすばかりの大百足になった。
「
元細身の男現大百足、契約とか律儀に守るタイプだったんだ。どう見ても菩薩より
大百足は蠢き、僕の燃え滓どもが吹き飛ばされる。燃え滓だから生前よりだいぶ
僕は大百足の動きで吹き飛ばされないように祈る。僕は硬い分再生遅いんだって。
大神さんが僕に当たりそうな大百足の胴体を切り裂いてくれた。感謝。
「誇り無き悪神よ死ねえい!!」
大神さんは音速を超えた速度で突撃する。大百足は身体の端を押しつけて、大神さんを叩き潰そうとした。大神さんはそれを軽々と貫く。
「余はそもそも神であるつもりも無いのだが……種別として神と解釈できるということで今回の役割を振られただけで……どうでもいいことだが」
身体が寸断されても大百足は余裕そうだ。僕の感覚が人間の頃よりだいぶ鈍くなっているみたいな理屈だろうか。それとも身体が長すぎて末端が切れもあまり痛くないのか。
「言い訳はそれだけか!!」
「弱肉強食は自然の摂理だ。それを捻じ曲げているのはニンゲンの方であろう」
大百足の主張って、人間が付き合いにくいタイプの神みたいな理屈じゃん。
「減らず口を叩くな!!」
それからの大百足と
僅か十分ばかりの戦闘で地下都市の全ての建物は崩壊し、大百足の節々もバラバラに切断された。それでも残った頭部だけで二百メートルほどの長さがある。大神さんはまた肉片になった。本気で暴れ回っただろうし今日はずっと肉片のまま動かないような気がする。胴体もくっついたし僕も戦うか。
「さて。汝も抗うか?抗わぬなら苦しまぬように喰い殺してやろう」
頭部から遠い部位で大神さんと戦ってきたからか大百足はまだ余裕がありそうだ。身体の九割は微塵にされたのにね。僕は
「いやいやいや。普通に戦うし、こっちが狩る側だからね」
僕が地獄から解放した燃え滓もペンギンの残党も、だいたいコイツと大神さんの戦闘に巻き込まれてペシャンコになった。燃え滓をもう一度出す体力無いし、サシの殴り合いで出しても役に立たないな。
「
僕自身の耐火性を超えた超高温の拳を相手の頭部に叩き込む。一万度オーバーの拳に耐えられるかな?
「耐えたぞ」
甲殻は砕けたから打撃は通っている。肉が焼けているようには見えない。
これやると拳が融解するから二回しかできないんだよ。どうすんだよ。
「嘘だろ……僕の自傷損じゃん」
さっきの菩薩で殴り合いは満腹なんだけど片手で地道に殴り合うしかないか……菩薩で思い出した。後で菩薩食べておかないと。
「いや汝は我が贄となれ」
大百足が頭を振って地面に落とされ、喰い付かれた。僕の生体装甲を砕かれて、腸が啜られる。僕が大百足の上顎を殴り壊すのが、先か大百足が僕を喰い尽くすのが先か。身体が痺れてきた。毒か?
「
大神さんの声が聞こえる。神剣部分だけ再生が終わったみたいで僕の方に飛んでくる。
馬鹿みたいに長い剣の刃を握り、大百足の頭部を突き刺す。もうこれ以上の攻撃はできない。これで殺せなかったら僕は死ぬ。
「かけまくもかしこき百足の神よ、かしこみかしこみ謹んでお命頂戴
無駄に長い刀身を大百足の頭部に深く押し込む。突き刺さった神剣から雷が迸り、大百足は感電死した。敵味方識別していたのか僕は感電ダメージを受けなかった。今日も死にきれなかったな。
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