殺人ペンギンの竪琴
四肢が吹き飛び再生中の大神さんをお姫様抱っこしながら、僕はネオ熱海に向かって走っていた。お荷物を抱えていても僕はそれなりの速度で走れる。車と同じくらいの速度で。ペンギンの自爆攻撃や光線攻撃は僕にそれほどダメージを与えなかった。転んで膝を擦りむいたくらいのダメージしか受けていない。
さて僕たちがどうしてネオ熱海に行くことになったのか思い出してみよう。
そういうわけで僕と大神さんの二人で侵略者を補足し速やかに殲滅するように命じられた。
僕は課長のことを世の為人の為に戦えるヒーローとして尊敬しているけれど、これで発狂しているだけだったらどうしよう。どうしようもない。単純な殴り合いでは勝ち目がない。
「済まんな、紅世」
手足が吹っ飛んでいると大神さんもしおらしいなと思った。普段は人間の犯罪者を食べるなと五月蠅いけれど。これだけしおらしいとは、僕に食われると思われているのだろうか。僕が暗殺部の刑事になった理由は怪異や犯罪者を好きなだけ食べるためだけど、仕事仲間を食べるほど分別が無いわけじゃない。
「いえいえ。こういうときはお互い様ですよ」
それからしばらく走って日の沈む頃にはネオ熱海まで到着した。
大神さんも運んでいる間に全快した。霊的にだいぶリソースを吐き出して疲労が見えるけれど。
ネオ熱海の土産物店を見てみると、ペンギンの意匠が入った饅頭やペンギンのぬいぐるみなどペンギングッズばかりが並んでいた。これは間違いなく侵略されている。先程僕たちを襲ったペンギンたちはたぶん侵略者かその眷族だろう。大神さんはペンギンのぬいぐるみを熱心に見つめていた。
「ふっ。なかなかだな」
大神さんはお土産屋で普通にペンギンのぬいぐるみを買っていた。ちなみに僕はペンギンが絡みついた剣の形のキーホルダーを買った。
「良い……」
大神さんは購入したペンギンのぬいぐるみを上に持ち上げ、下から覗いていた。よくわからないが満足そうだった。
そのまま土産物屋の隣にある武器屋で銃器を補充する。持ち出しの銃は全部最初の襲撃でダメになったので新しく調達しなければならない。僕は素手でもどうにかなるけれど、大神さんは銃が無いと獣に変身しなければ攻撃力が無い。人間形態だと人間並の攻撃力しかないらしい。
「少し休みますか?一晩寝れば体調良くなると思いますよ」
ペンギンの形をしたホテルを指差す。ホテル『金星』。金星要素が一切わからない。
「分かった」
大神さんは言葉少なで、かなり体調が悪そうだった。怪異や人間を食べたりして回復できないタイプの神は大変そうだ。
僕たちは普通に一泊泊まることになった。敵地のど真ん中で。
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