鏡の世界
鏡に吸い込まれた先は学校だった。
廃校に居たから当たり前、という話ではない。
第一に、ここは天井が崩落したりなどしていない。ということは、元々いた場所ではない。
なら、ここはどこだろう?
鏡の中の世界?そんなことが現実に起こるのだろうか。そもそも、私を鏡の中に引きずり込んだものは何なのだろうか。
理解ができない。というよりは脳が理解を拒んでいる。
「学校の怪談……みたいな?」
乾いた笑いが漏れる。
学校で起こる超常的なことで、しかも元々いたのは廃校。
死んだら終わりのデスゲームに招待された。ついでにソロプレイ。
気休めにもならない考えが頭に浮かぶ。
とりあえず、持ち物確認だ。
「スマホ、家の鍵、ペットボトル、んでのど飴……あれ?ハンカチない」
咲喜にもらったハンカチが無かった。誕生日に貰ったお気に入りだったから残念だ。
ハンカチ以外は肩掛けバッグの中に入れていたから落ちなかったのだろうけど、ハンカチは多分ポケットからはみ出していたのだろう。
咲喜や、それ以外の人たちはどうしているのだろう。
そのことを考えると、私が独りぼっちなことが意識されて、どうしようもない不安が押し寄せてくる。
今は他人の心配をしている場合じゃない。この世界から脱出する方法を考えないといけない。
ここに来た原因は”鏡”だ。
なら、もう一度鏡を潜れば、戻れるんじゃなかろうか。
「……割れてるよね」
知ってた。ちくしょう。
周りの様子を見てみると、さっきまでいた廃校と構造は同じように見える。といってもあんまり廃校を見れていないのだけれど。
あの廃校の過去の姿とか、もしもの姿なのだろうか。
というわけで、割れていない鏡を探すということが目的として定まった。
何が起こってもおかしくない現状は、もちろん滅茶苦茶に怖いし、泣きたいし、不安でしかない。
けど、それ以上に生きて帰りたい。またみんなと会いたかった。
元の日常に、戻りたかった。
ならば、やることは一つ。
この世界を探索する、それだけだ。
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