私がこの世界から抜け出すまで

夜桜月乃

プロローグ

 ある日、私の友人である咲喜に廃校探索に行かないかと誘われた。


 どうやら彼女の知り合い数人で、肝試しのようなものをするらしかった。


 最初は私も難色を示したけれど、結局彼女の押しに負けて参加することになった。我ながらなさけない。


 メンバーは、私たち中二と、様々な学年の先輩たち合わせて八人ということらしい。

 ちなみに私の知り合いは咲喜以外いない。


 そんな訳で、廃校探索をすることになった私たちは問題の廃校にたどり着いた。

 思っていた以上にボロい。


 崩れたりしないよねなんて思いつつ、私たちはそこに入った。


 窓はほとんど割れていて、尖ったガラスが立っている。

 校舎はいたるところにひびが入っている。


 中は当たり前だがほこりが降り積もっていて、暗い。


 懐中電灯やスマホのライトで照らしながら前に進む。


 そうして進んでいた時だった。


「あっ……!」


 誰かが声を上げて、みんなが一斉に壁に目を向けた。


 少し遅れて私がそちらを見ると壁のひびが大きくなっていて、上を見上げると嫌な感じにそちらもひびが入っている。


「これは……危険だから帰った方が良いんじゃ……」

「まだ来たばっかじゃん」

「でも……」


 そんな会話をしているうちにもひびは少しずつ大きくなっている。


「どうする?」


 咲喜がそういった時だった。


 壁のひびが一気に長くなって、天井に到達した。


「「逃げろッ!」」


 誰かが同時に叫んで、それを合図にみんなが一斉に駆けだした。


 それと同時に、ものすごい音を立てて天井が崩れてくる。


 私たちは間一髪でそれを回避した。


 


「ぅあっ……」


 声にならない声を上げる。


 逃げ遅れたのは私の同級生の男子だった。


 完全に体が埋もれていて、彼がどうなっているかは全く見えない。


 けれど、二階の床が落ちてきて、無事でいるわけがない。


 それで完全に探索する気を失った私たちは、しかるべき人たちに報告するために入口へと引き返す。


 小走りで、もはや半泣きで逃げ帰ってきた私たちだったのだけれど、昇降口の惨状を見てもう一度絶望を味わった。


 こちらも、


 窓は尖ったガラスがあるから乗り越えるのも一苦労だ。


 私は、何かないかなとみんなを放置して少しうろつく。

 この異常事態に焦っていたのかもしれない。


 そして、とあるものに目を留めた。


 一枚の鏡だった。


 無意識のうちに歩みを進め、その鏡に近づいていた。


 何も考えず、吸い込まれるように。


 そうして、鏡の目の前に立ってそれに映る自分を見つめる。


 鏡の中の私が、


「……え?」


 次の瞬間、伸びて来た何かが私をつかみ、鏡の中に引きずり込まれる。


 その時にポケットから落ちたハンカチのみが、私がそこに居たという事実を物語っていた。

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