1-2 真実を君に




フィロメールに声を掛けてきたのは、朱色の髪色でロングウルフカットで尻尾を三つ編みにしており、アイスブルー色の瞳色をした切れ長なキツめのツリ目をしていて左目の下には泣き黒子がある。

左耳には翡翠色の石で作った逆さの十字架が吊り下がったピアスをして、白と青色の司祭のような服装を着ていて首には空色のマフラーのようなモノを緩く巻いた背の低い青年がフィロメールを見つめていた。



「えっと?」


「ここじゃ、話をしにくい内容なんでね……“隠れ屋”に案内するよ」


「あ、うん」


(何処となく、ヴェテルさんに似ているような気がする……?)


「名乗ってなかったよな?ボクは、“トネリコ・ヴァーミリオン”」


「トネリコ、ね」



トネリコに連れられ酒場を出ながらも、周りの街並みをよく観察してみれば明らかに数十年前此処へと来た時とは違っている。


“見慣れない感じの人達”は、数十年前には見かける事なんて一切無かった。

それに、あの“機械仕掛けの塔”も見た覚えもないのだ。



「アンタ、フィロメールでしょ?」


「知ってるの?」


「周りのヤツらよりかは、幾分かは知っているよ」



トネリコがフィロメールを連れてきたのは、首都の郊外にある渓谷の地下へと通じる隠し階段の奥にある屋敷のような建物である。



「此処は、“リコリスの研究所”とも呼ばれていた場所だ」


「えっ!?り、リコリスの?」


「リコリスって人は、色々と研究していたらしい……まぁ、それがボクでもあるわけだけど」


「え?」


「まずは、何処から話をしたらいいかなー……取りあえず、そこのソファにでも座って」


「あ、うん……」



トネリコは居間にあるソファへとフィロメールを座らせると、テーブルの上に置いてあったティーカップと紅茶の入ったポットを掴みティーカップの中に紅茶を注ぐ。



(リコリス達は、あれから何をしていたんだろう?)


(それに、目の前にいるトネリコって人に関係しているってのも気になる……)


「はい、紅茶」


「あ、うん」


「砂糖とかは、そこの小さなポットに入ってるから好きなように入れると良い」



トネリコは紅茶の入ったティーカップの1つをフィロメールの前に置いてから、向かいのソファに座っては自分の分の紅茶の入ったティーカップを持つと紅茶を飲んでいる。



「さて、まずは……ヴェテル達について先に話しておこうか」


「ヴェテル達について?」


「彼らはフィロメールと共に、100年前に“北の魔皇”を討伐したらしいじゃないか?」


「あー、うん」


「………王国が自分の子供を向かわせなくないがために、冒険者ギルドに無理を言って集めさせたのがヴェテル達ってのは知ってるよな?」


「あー、まぁ……無理を言って、というより脅しに近かったねーアレは」



トネリコに言われてフィロメールは同時に当時の事を思い出しては、なんとも言えない表情をしては“そういえば、そんな緊急クエストだったよなぁ?”と呟いていた。


無茶苦茶な内容の緊急クエストで、ギルドの皆で愚痴を言ったりしていたのを今でも鮮明に思い出せる事だ。



「それについて、それ以外にもフィロメールには気づかれないようにヴェテル達は隠していた事があった」


「え?」


「多分、それはフィロメールを“生かすために隠していた事”だと思うけど」


「ど、どういう事……っ?い、生かすためって!!」



フィロメールが少し焦りながらも立ち上がったのをトネリコは見ては、紅茶を一口飲んでからティーカップを軽く揺らして紅茶を見つめていた。



「ヴェテル達は途中から自分達が、“北の魔皇”を討伐した後に王国が自分達を処刑するのを知っていた」


「っ!?」


「フィロメールが買い出しへと出ている時に、王宮を眺めていたヴェテル達は“見慣れない裝束の集団”を見かけていた……そうだなぁー、今の状態で言うと例の塔の中にいるヤツらと同じような“スーツ”とやらと似たような服装だったと思うけど」


「っ………」



フィロメールの様子を気にしながらも、トネリコは残されていた“ヴェテルの手記”も“リコリスのメモ書き”を思い出しながらも、フィロメールに当時“何があったのか”を説明していく。









この屋敷を密かに作っていたリコリスは、ヴェテル達を此処へと呼び寄せては5年ほど過ごしていた。


その間に、外の情勢は明らかに変わっている事にヴェテル達は情報を得ていた。



『ヴェテル、手に入った研究結果としては“可能”だよ』


『じゃあ、其々の“因子”を混ぜられるって事だな?』


『あぁ、皆が了承するなら全員の“因子”を含ませるのは可能だね』



リコリスの言葉を聞いてからヴェテルは、後ろを振り向いてはアマリリスとザーフィを見れば二人共大きく頷いていた。



『それで、後にフィロメールの手助けになるならアタシは賛成よ』


『あぁ、俺様もだ』


『だと、さ?リーダー』


『なら、其々の“因子”の解析と“器”の準備をしようか』


『“器”のレプリカは、ヴェテルで良いんじゃないかしら?其の方が、フィロメールも安心するんじゃないかしら?』



アマリリスの提案を元に“器”はヴェテルのレプリカとして作るため、ヴェテルは自分の“因子”を多く提供していた。

其々の“因子”を与えたのは、“記憶”なども“器”に引き継いで貰いたいという気持ちからである。



『なんだか、悔しい気持ちだわ』


『アマリリス?』


『こんな形でしか、フィロメールに残せないててのが………一緒に、旅をしたかったってのがアタシの本音よ』


『………そうだね、それについては皆も同じさ』


『アンタは、違うでしょ?ヴェテル』


『え?』


『…………アンタは、フィロメールの事を愛していた………そうでしょ?』


『!…………ふふっ、バレバレだった、かな?』



ヴェテルはアマリリスの言葉に少し驚いては、目の前に広げている紙達を見つめては微かに笑みを浮かべていた。


もしも、こんな事にならないなら自分は彼女に告白をしていた可能性もあっただろう。

そうしたら、“幸せの家庭”を築いていたのだろうかって少しでも考えてしまう。



『可能性も、あったんじゃねぇ?』


『ザーフィ』


『俺様的には、ヴェテルの旦那とフィロメールちゃんは似合ってると思うぜ?それについては、此処に居る俺様等はわかっている』


『…………ふふっ、そうなのかな……』


『よし、“因子”については完了したよ』


『!、本当か?』


『あとは、眠っている“器”に移植するだけ』



リコリスが“器”に“因子”を与えては、大きな水晶の中へと“器”を封じるとヴェテル達は“器”を見つめていた。



“どうか、彼女の手助けをして欲しい”


“目が覚めたなら、彼女フィロメールを捜して欲しい”



『さて、自分達から出向こうか』


『なぁ、ヴェテルの旦那』


『ん?なんだい、ザーフィ?』


『少しは悪足掻きってのを……やらないか?』


『ははっ、それは名案だ』



自分達は、“タダ”で死のうなんて思わない。

このセカイを愛した自分達は、フィロメールとの想い出のあるセカイを護ろう。


それは、確かに悪足掻きなのかもしれない。



『もしも、輪廻転生というのがあるなら……彼女の下へ、再び集まろう』


『そうね、きっと』


『あぁ、絶対に』


『まぁ、それはそれで楽しそうだけどね』



“隠れ屋”を出ていったヴェテル達は渓谷の上にて王国の兵士と共に、その場に居合わせたなのか同行してのか分からないが見慣れない姿の人物が一人立っていた。


そこに居たのは赤寄りの黒色の髪色をした少し長めのショートで、切れ長なキツめの目をした紅色の瞳をしている。

赤黒色のマフラーを首に緩く巻いて、白色の軍服のような軽騎士のような服をキッチリと着ている背の高い男性だ。



『お前達が、“叛逆者”だな?』


『ははっ、“外部者”のくせに』







つづく→

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