待ち遠しい成長
あれからシャルロッテは悪夢を見なくなったという。
シャルロッテのためにスライムを探して、クゥが邪魔したりと色々あった。
結局シャルロッテはスライムのテイムは出来なかった。代わりに、セラピーからの分裂体のエスティを護衛として、シャルロッテに与えた。
学生たちの滞在も終わりが近づき、学生たちに一日まるっと観光時間をあげた。
息抜きは大事だからね。
まあ、俺がシャルとデートしたかったってのもあるけれど。
デートでは領都を観光をして回り、最後にポーヴァ商会に来ていた商人から髪飾りを買って、シャルロッテにプレゼントした。
マルスもハンナに買っていたので、しばらくはお互いに上機嫌だろう。
そして今日、学生たちの滞在期間が終わり、学生たちは王都に帰っていった。
シャルロッテには、父上からの手紙を持たせた。
そして、彼女は別れ際に驚く行動をとった。
まだあのときのことを思い出すと、頬が熱くなるのを感じる。
数日経ってから手紙の返信が来た。シャルロッテの手紙は何枚も入っていた。
この量を見るだけで驚きと喜びが表現されているのがわかる。
無事に帰りついたこと、父親から聞かされた婚約の話。
それにとても驚いたこと、帰り際に言ったことはこのことだったのですねと、貴族らしく書かれている。
全部読み終えて、この可愛くて愛しい人に早く手紙を返さねばとペンをとる。
そして、気づいてしまった。貴族らしい手紙の書き方を知らないことに。
少し、いや、かなり悩んだがアドラに文章を添削してもらうことにした。
アドラに頼んだら、残念なものを見る目でため息をつかれて、手紙は初めてだから仕方ないですよねと請け負ってくれた。
そこからが大変だった。
伝えたい内容がこれだけではダメだとか、女心をまったくわかっていないだとか、何度もアドラからダメ出しを受けた。
このままでは埒が明かないと気付き、俺は素直にマナー講師を頼ることにした。
マナー講師の先生(年齢不詳の女性、独身)は泣きながら、坊ちゃんにも婚約者がついに出来たのですねと灰になりそうだった。
この先生もなんかダメだと思ったが、教えてくれる内容はちゃんとしたものだったので安心した。
俺は講義を受けながら手紙を書いていた。
そんな俺を見ながら、先生は何かブツブツと呟くけど、聞こえないふりをした。
たぶん結婚適齢期を過ぎてるし、下手なことを言えば絶対に怒られる。
そんなことを考えていたら、鋭い視線を向けられたので手紙に集中する。
先生、そんな怖い目しないでください。男性が逃げますよ。さらに睨まれた。
やっべ、無心でいよう。怒らせたら絶対にダメなタイプだ。
シャルと手紙のやり取りを繰り返し、夏には学生の受け入れをしている。
学生たちの接客態度も三年間で母が認めるレベルになった。
彼らも今年で学園を卒業になる。卒業後はロイヤル商会の従業員として働く。
ハンナと学生の顔合わせも終わり、商会長と従業員となる学生の仲も良好だ。
だいぶ早いけれど、彼らの卒業祝いのパーティを開いた。
アレンが揚げ油に適した植物油を見つけてくれたため、今回の料理はこだわった。
から揚げやフライドポテト、一口サイズのオーク肉のカツ。
学生たちには、王都でこれらが食べられる食事処を作ることを話した。
料理人の育成もアレン率いるポーヴァ商会が出す食堂で進んでいる。
すでに何人かは王都行きが決定している。
みんな、涙を流すほど喜んでくれた。毎年帰るのがつらかったと言うほどだ。
泣いている学生を見て、そんなに王都の食事は美味しくないのかと俺は戦慄した。
ハンナには忙しいかもしれないけれど、食事処の方も忘れずに頑張ってもらおう。
主に俺のために!
そして、今年で最後の学生たちが王都に帰っていく。
それに合わせて、ハンナの修行も終わり、マルスと共に王都へ旅立った。
マルスは王都に行くハンナのことを考え、騎士を辞めた。そして、そのまま結婚を前提とした婚約を申し込み、ハンナと共にアレンの修行を受けていた。
マルスは騎士を辞めたが、俺に対する忠誠心はそのままだ。優先度はハンナの方が上のようだけどね。
幸せそうな二人を見送った俺はシャルにこの気持ちを手紙に書くことにした。
王都では母と祖母、それから王妃様が結託して店舗を見繕っていると聞いている。
ハンナとマルスは王都の店舗で俺を待っていると言った。
俺が苦労しないように場を整えると嬉しいことも言うので、支度金も持たせた。
このお金で早く店を落ち着かせて、結婚式を見せてほしい。
そのときは盛大に祝うから。子どもが生まれたら、また祝うから。
二人がいつまでも幸せでありますように。俺は聖印に力を込めて祈った。
【技能:祝福を習得しました】
あと二年、学園が、王都が楽しみになってきたな。
シャルにも早く会いたい。手紙だけじゃ伝えきれないことがある。
あと二年、とても、とても長く感じる。
シャルはどんな成長をしているかな? 俺もその頃には成長しているのかな?
早く、早く会いたいな。
【技能:成長促進を習得しました】
【技能:加速を習得しました】
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます