第31話 唐突の恋愛相談!?
いつもの高校生ライフ、一人ぼっちで教室の隅で読書をしていると、俺よりも身長の高い男子生徒が声をかけてきた。
「ちょっといいか?」
「え…………」
思わず、声が漏れた。
それもそのはず、俺に友達と呼べる人は少なく、ましては男子の友達なんてゼロだ。なのに、なぜか、一人の男子生徒に声をかけられた。
(た、たしか、このクラスのカーストトップの一人、須藤くんだっけ?)
「今日の放課後、暇か?」
「あ…………うん」
「よし、じゃあ、放課後、体育館に来てくれ」
「え」
「じゃあ、約束忘れんなよ」
そう言って須藤くんはほかのグループのほうに行ってしまった。
「ど、どういうことだ」
流れるままに承諾してしまった千斗は内心、後悔していた。
(断るべきだったかな。でも断った断ったらで、何されるかわからないし…………うぅ、もうどうにでもなれ!!)
そして気づけば、放課後になっていた。
「千斗…………大丈夫なの?」
「大丈夫じゃないけど、まあ断れなかった俺が悪いわけだし、大人しく行くよ。梓はどうする?」
「え、普通について行くけど」
「いいのか?無理してついてくる必要はないんだぞ?」
「千斗、明日が何の日か?覚えてる?」
不安そうな目で見つめている梓。
俺はフッと笑いながら超えた。
「覚えてるよ、忘れるわけないだろ?」
「そうだよね」
「もしかして、前日に迫って緊張しているのか?」
いたずらっぽく言ってみると、梓は俯きながら頷いた。
「…………可愛いな」
「なぁ!?急に何!!」
「いや、素直にそう思っただけだ。でも、緊張するよな。でも、梓はなら、きっと大丈夫だ」
俺が言えることなんて限られていて、こうして、勇気づけることしかできない。
でも、それで梓の緊張が不安が少しでもなくなるなら、いくらでも言うし、できることは何でもするつもりだ。
「なんか、いける気がしてきた」
「急にすごい自信だな」
しかし、表情が少し前向きになったところを見て、千斗はホッとする。
とはいえ、それでも当日が心配だ。
果たして、梓はちゃんと梓のお母さんと話せるのか、伝えられるのか。
「というか、千斗。約束はいいの?」
「やべ、ここで突っ立って話してる場合じゃなかった」
俺は急いで体育館に向かったのであった。
体育館に到着すると、ドンドンっとボールがバウンドする音が聞こえてきた。
「なんだろう」
俺と梓はこっそりと覗いてみると、須藤くんがバスケをしていた。
滑らかな動きで軽やかに動き、そしてバスケのゴールリングに向かって、綺麗にシュートし、スポっと入る。
(め、めっちゃかっけぇ)
正直、すごいというか、見入ってしまった。
「お、来たか」
こっちを見て爽やかに笑う須藤くんは、まさにイケメンの中のイケメンだった。
「って、春野ちゃん?」
「ご、ごめん。そのついていくって聞かなくて」
「迷惑だった?」
「いや、むしろありがたいよ」
嬉しそうに笑う須藤くん、それもまたイケメン。
(くぅ、なんだろう。イケメンと一緒にいると、心が締め付けられる)
ぎゅっと心が締め付けられる感覚に襲われ、思わず膝をついた。
「ど、どうした?どこか痛いのか?」
「ま、眩しい」
「うん?」
咄嗟に友達でもない相手に気を遣うなんて、イケメンに加えて、性格も完璧ときた。
(これはモテる、モテない理由がない)
俺は気を取り直し、咳払いをしながら須藤くんに話しかけた。
「それで、そのどうして俺を呼んだんだ?」
「実は、俺、雫ちゃんが好きなんだ」
「「え…………えぇぇぇぇぇぇぇぇええええ!?」」
唐突なことに、俺と梓は思わす声を上げた。
「千斗、千斗、私…………」
「落ち着け、梓!落ち着くんだ」
「そんなに意外だったか?」
「意外というか、なんで俺なんかにそんな大事なことを」
「最近の柊くんはよく目につくだろ?しかも、篠崎三大美少女なんて言われている渚ちゃんとも仲良くしたり、雫ちゃんとも…………」
「ま、まあな」
(やっぱり、最近目立っていたのか)
できるだけ気にしないようにしていたが、やはり最近、俺は目立っているようだった。
「多分だけ、雫ちゃんと距離が近い男子生徒は柊くんだ」
「え…………それはないと思うけど」
「ふふ、柊くんはやっぱり知らないんだね」
「え?」
「雫ちゃんは基本、渚ちゃんにべったりで渚ちゃんがいないときはそれはもう冷たいんだ。でも、俺は見たんだ。渚ちゃんがいないとき、楽しく柊くんと会話しているところを」
俺の頭の中は”?”で埋め尽くされた。
(俺が秋藤さんと楽しく会話?そんなことあったっけ?)
「正直最初は嫉妬した。でも柊くんには春野ちゃんがいるし、ならまだチャンスはある!」
「なぁ、その須藤くんは何を言いたいんだ?」
「つまりだ。頼む!雫ちゃんと付き合えるように協力してほしいんだ!」
カーストトップのイケメン、須藤くんが両手を合わせながら頭を下げてきた。
「他をあたったほうがいいのでは?」
「いや、柊くんにしか頼めないんだ。言っただろ?雫ちゃんは渚ちゃんといないときは冷たいって、でも柊くんには楽しそうに接していた」
言いたいことはすごくわかる。
きっと秋藤さんは基本的にガードが固いのだろう。だから、俺を使って付け込もうとしているんだ。
(なんて、場違いだ)
そもそも、俺と秋藤さんは全然仲良くない。話せば、口悪いことしか言わないし、最悪だといえる。
「…………普通に無理」
「え?」
「だって、須藤くんが言うほど、秋藤さんと仲良くないし、手伝うにしろきっと何も出来ない。だからまあ、他をあたってくれ。もちろん、須藤くんが秋藤さんのことが好きなことは心の中でとどめておくから。じゃあ」
俺は手を振って帰ろうとすると、ガシッと腕をつかまれる。
「ま、待ってくれ!」
「まだ何かあるのか?」
「わかった。協力はあきらめるよ。でもせめて、どうやって雫ちゃんと仲良くなったのかだけ教えてほしい」
「いや、全然、仲良くないよ。なぁ、梓」
「全然、仲いいと思うけど」
「え」
予想だにしない返答が梓から返ってきた。
「いやいや、全然仲良くない。仲がいいように見えるのは渚がいるからだろ?」
「そうかな?」
「そうだよ」
秋藤さんは渚がいるとすごく機嫌がよくなるから、きっとそのせいで仲良く見えるだけだ。
「ただそうだな。秋藤さんとかかわるきっかけになったのは、渚としゃべるようになってからだから、須藤くんもまず、渚と仲良くしたら、いいかもな」
「なるほど、たしかにそうかも。ありがとな、柊くん、そうだ、連絡先教えてよ」
「え、別にいいけど」
「梓ちゃんもいいかな?」
「私は遠慮する」
即答で拒否するツンツンモードの梓を見て、俺は驚いた。
(梓が拒否するなんて意外だ)
「そうか、まあそういうと思った」
だがそんな反応に須藤くんは納得した表情を浮かべていた。
こうして、俺は須藤くんと連絡先を交換した。
「わざわざは呼び出して悪かったな。それじゃあ、また明日な、千斗!」
そう言って須藤くんは体育館を後にした。
「もう名前呼びか…………これが陽キャか」
「なんか、すごい人だったね」
「なぁ、なんで連絡先の交換を拒否したんだよ。せっかく友達が増えるチャンスだったのに」
「…………なんでだろう。私にもわからないや」
「そうか、わからないならしょうがないな」
こうして、俺と梓は帰ったのであった。
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