7 突然の非日常

過去に書いていたものの再掲。

お題:急な超能力

必須要素:漆黒の翼

制限時間:15分



朝起きて、背中の感触に違和感を感じた。

何となく重いような、凝っているような…それでいて、背中よりもう少し先の方に、何かしら感覚のあるものがくっ付いているような。

鏡で見て確認してみようと、洗面所へと向かった。


「は?」


言葉が出なかった。

俺の背中についていたものは、烏の羽根のような漆黒の翼。

は?翼??

何で??

考えたって理由なんて見つかるはずも無く。

俺は昨日までは地元から出てきて数ヶ月のただの大学生で、もう少しすれば期末試験があるからと、友人と試験勉強をしていた訳で。

普通の人間として普通に生きて、普通に寝て普通に朝を迎えていた筈で。

ましてこんな急に超能力のような、翼が生えてくるような、何かしらの要素を持っているなんてことは有り得ない。


ピンポーン


洗面所で放心する朝7時、1人暮らしの大学生の男の部屋に明るく鳴り響くインターホンの音。

これだけならまだいい。

俺には今、この背中に漆黒の翼が生えているという、摩訶不思議で有り得ない状況下にある。

さて…どうする。


「あれ?居ないんですかー?」


そっと近付いた玄関からは、聞き慣れない若い男の声がした。


「いや、生体反応はあるな」

「ほほう?じゃ、ちょっくら強行突破させて頂きますかねぇー」


キュイィィィンという、機械音だろうか、エネルギーを補給するような音が外で響いている。

身の危険を感じた俺は、咄嗟に玄関の扉から距離をとった。

途端、目の前でドロリと溶けて無くなる玄関の扉。

入って来たのは、俺とは少し違う尖った龍のような翼の男と、獣のような腕をした男。


「やぁ、なんだいるじゃん。初めまして?」

「強行突破するまでも無かったか?」

「ま、この様子じゃあ出てきてはくれなかったろうさ。仲良くしてね、お仲間さん?」


ニコニコと笑うその翼の男に、日常が崩れていく予感を覚えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る