6 友人、だったはずの

過去に書いていたものの再掲。

お題:私が愛した許し

必須要素:ゴリラ

制限時間:15分



本当に、何がどうなってこんな結末に行きついてしまったのか、自分でも理解ができない。

不意に吐いてしまいそうになった溜息を飲み込んで、隣で眠る大男を見つめる。

高校の頃は四六時中一緒に居て、一番仲の良い友人だったはずだが、大学に進学すると共に疎遠になってしまって、今日25歳の記念同窓会で、数年ぶりに再会した。

その時に聞いた話によれば、大学に進学して以降、学業とサークルとアルバイトの両立、いや三つ巴か?…とにかく忙しくて年に数日、しかも友人とはズレた時期にしか地元に戻って来ることができていなかったとかで、会うことが出来なかったらしい。

それはそれでいいとして、俺が愕然としたのはもう一つの理由だった。


彼の、高校からの想い人が俺だったということ。

そして、大学に進学して以降、その思いを拭い去ることができなくて、俺に連絡を取ることができなくなっていたこと。

衝撃的なカミングアウトを受け入れたところまでは良かったが、何がどうなってその後2人で同窓会を抜け、彼の宿泊しているホテルに一緒に戻り、一線を越えることになったのだろうか。


友人だったはず。しかもゴリラみたいな大男。

そんな俺の気も知らずに気持ち良さそうに眠るそいつ。

何だか憎らしくなって頬っぺたを抓ってやると、フゴ、という変な寝息と共に少しだけ眉を顰めるが、起きる素振りは無い。


「…ふふっ」


しかしなんだかんだ言って、俺もそんな変な顔も可愛らしく感じてしまって、自然と笑みが零れてしまう程には、こいつに絆されてしまっていることは否定はできないのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る