4 思い出の味

過去に書いていたものの再掲。

お題:早い不動産

必須要素:ラーメン

制限時間:15分



2月。

大学の後期試験期間が終わり、レポート課題も全て出し終えた。

しっかりと講義には出席していたし、手応えも十分ある。

このまま3月初めの卒業論文の発表会を終えれば、晴れて新社会人として企業に勤めることになるだろう。

という訳で、卒業論文も早くに書き終えスライドの作成も終わった俺は、新居の物件探しをする為に不動産屋へと向かった。


「…じゃあ、ここで」

「早っ」


会社周辺で駅近く、という条件以外は特に拘りは無く、いくつか間取りと部屋の内装を見せて貰ってすぐに、2DKのアパートに決めた。

車を出してもらうために一緒についてきた友人も、ここまで早く決まるとは思っていなかったらしく驚いていた。


「案外いい物件が残ってたな」

「…ねぇ、マジでそんなに即決しちゃっていいわけ?」

「いいよ、別に男の一人暮らしだし、駅近かったし。特に家に拘りがある訳でもないから」


結局不動産屋にいたのは1時間程度で、車を出してくれたお礼にそのまま昼飯でも食べて帰ろうと、大学の学食へと足を向けたのだった。

1人暮らしの金の無い学生には有難い、安くてボリュームのある学食のメニュー。

昼飯の時間は、4年間毎日のようにお世話になっていた。

中でも特に気に入っているのは、豚骨スープに野菜炒めをのせた「五目ラーメン」で、いざ大学を離れるとなると少し名残惜しくなって、注文することにした。


「お前またそれか」

「うん、好きなんだよね」

「これももう少ししたらら食べ納めかなー」

「そうだな」


試験でキツいとき、実習の時…いつもお世話になっていた味をかみしめるように、麺を啜った。

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