第47話 進捗100%(後編)


名前:優梨(15) 人族 

性別:女

レベル:7

職業:学生 テイマー

HP:4897/5078

MP:9780/10500

力:73

敏捷性:82

知力:83

精神:88

攻撃:76

防御:97

回避:92

幸運:97

スキル:生活魔法

    自動地図作成

    探索

    鑑定

    翻訳

    テイム:従者プペ

    



「け、健ちゃん」


「お前も見えたか?」


「うん。わたし、魔力ある」


「俺も」


「わたし、テイマーだった」


「え?」


「プペが従者」


「プーペ!」





《演技だよな?》

《ステータスオープンでステータスボードが現れるって小説の話だろ?》

《アリス、テイマーだって》

《国のボードでは調べて出てなかったって言ってたじゃん》

《だから驚いてるんだろ》

《嘘だ。そんなことあるわけない》





「マスター、わたしたち魔力あるみたいなんですけど。魔法使えるってことですか?」




《魔力がある……》

《すげー》

《超うらやましーんだけど》




『スキルを使うときは使ってると思いますよ。でもこの世界ではそれ以上は使えないかもしれないですね。この世界は魔法を使うことを推奨していないから』


「この世界が魔法を使うことを推奨していないんですか?」


『ええ、この世界は界渡りも非推奨ですよ。〝世界〟の性格が出ますねー』


 ええ、世界に性格とかあるわけ?





《世界が魔法を使うことを推奨していない?》

《どういうことだよ》

《何話してんだよ、ドラマならマスターの言葉訳せよ》




「健ちゃん」


「優梨」


「「魔法だってーーーーーっ!」」


 わたしたちは手を取ってピョンピョン飛び上がる。

 魔法ってそれだけでテンション上がるよね。



 

 ものすごく大きなため息をマスターがついた。


「なんですか、そのため息」


『私も私の世界に帰りたいです』


 聞いてみると、ある日突然、異界渡りというのは起こるそうだ。

 知り合いのダンジョンも無くなったり、突然戻ってきたりすることもあるそうで、一番笑えなかったのは、菌類しかいない世界に行ってしまったマスターの話で、エナジーを集めるのに、ものすごく時間がかかったとか。


「エナジーを集めると、元の場所に帰れるのか?」


『絶対とは言い切れませんけれど。異界において、私はいつまでも異物です。ですから、世界は排除しようとするものなんですよ。エナジーがあれば、排除され、元の世界は私が一部ですから引き寄せようとする。そのタイミングが合えば、帰れると思うんです』


「本当に俺たちを害したりしないな?」


 健ちゃんが再び尋ねると、拗ねたような口調になる。


『エナジーを集めてもらえるのに、どうして害すると思うんです?』


「それなら、俺たちもドロップ品や魔石でリターンがあるから、エナジーを集めるよ」


『健太!』


 マスターは喜ぶ。

 今日はいっぱい知ったことがある。


「プーペ」


 ん? 


「きゃあ!」

「優梨!」


 そっと目を開く。おさまった? どんと突き上げられたような感じがあった。


「マスター、何があった?」


『信じられません』


「何だよ?」


 健ちゃんに手を貸してもらって立ち上がる。


『界渡りしました』


 はい?


「あ?」


『私の……元いた世界です』


 はい、何言ってんの?


「どういうことだ?」


『で、ですから。私にもよくわからないのですが、戻ってきたようです。優梨と健太も一緒に』


 健ちゃんに手を引っ張られる。走って走って上の階に出る。居間のように整えた空間を通り過ぎて、階段を登る。

 作業部屋ではない。どこかの森の中のようだった。

 日の光りが木々の間から差し込んできていた。

 雲で陰ったと思えば、それは飛行機で、その飛行機は羽を広げた蜥蜴のような形をしていた。ご丁寧に尻尾がついている。


 健ちゃんがわたしの手を離して両手で顔を覆った。


「嘘だろ」


 蹲み込んで呟く。





《……個人でこんな映像作れるものか?》

《でもマジで異世界とかないだろ。しかも配信したままって》




 わたしたちはしばらく動けずにいた。

 世界が違う、とかそういう発想はおきなかったけれど、土の匂い、風、音はリアルだった。急に森の中に通じてしまったみたいな。


「プペ?」


 プペがむくっと起き上がって、慰めるように触手でわたしの靴を撫でる。

 確かに、ダンジョンを上がってきて、見える風景はいつもと違った。

 空を見たことのない飛行物体が飛んでいた。

 さっきから聞こえるさえずりのような鳴き声も、聞いたことのないものだ。

 ただ、それ以上考えることを脳が受け付けない。


 健ちゃんが立ち上がり、パッとわたしの手を取った。

 ダンジョンの中に入っていく。

 居間スペースの椅子にわたしを座らせる。


「マスター」


『はい、何でしょう?』


「俺たちの世界に戻ることは可能か?」


『それはわかりません。界渡りのメカニズムは実のところよくわかっていないのです』


「俺たちはこの世界では異物だ。エナジーを集めれば、元に戻す力で戻れないかな?」


『可能性はあるかもしれません。でも確かではありません』


「そうか。ってことだ、優梨」


「え、うん」


 なんかぼーっとしている。

 帰れないってどういうことだろう。頭がはっきりしない。


「優梨、試すぞ」


「え?」


「アプリ使うんだ。片っ端から。有効なのはあるか」


 あ。

 健ちゃんはピザをとったみたいだ。すぐにピザが届く。

 わたしも水を買ってみた。

 ホームセンターで買い物をしたことがあるのはよかった。

 トイレを買った。

 排水のことなど設置できるわけないんだけど、そこらへんはマスターがうまくやってくれて、日本の洋式トイレが設置された。お風呂もだ。

 各自の部屋も地下一階に作ってもらった。

 健ちゃんが椅子に座ったわたしの前に座る。そしてわたしの手を取った。


「衣食住はなんとかなりそうだ。後は帰れる方法を考えよう」


 そう言ってニカっと笑った。


「ごめん」


「何で謝るんだよ?」


「わたしが巻き込んだ。こんな状況に巻き込んだ!」


 健ちゃんが立ち上がって、わたしをギュッとした。


「心から思う。お前一人じゃなくてよかったって。お前一人でいなくなってたら、俺、どうしたらいいかわからなかった」


 わたしはぎゅっーっと健ちゃんにしがみついた。




《これ、ドラマだよな?》





<第2章 相棒・完>




お読みくださり、ありがとうございます!

次章は異世界探索となります。

お伝えしておきますと、異界には行っていますが現代ファンタジー予定です。

次章までしばらく間を置きますが、またお付き合いただけますと嬉しいです。

ここまで読んでくださってありがとうございました!

御礼申し上げます!

seo 拝

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