第14話 砂漠ととっとこ歩くよ機械さん Ⅰ

「砂だね」

「それは此処が砂漠だから当たり前では?」


僕とアムはシュンと離れた後、旅を続けていた。森の街であるフォーネスかr遠く離れ、海を渡り、辿り着いたのは砂漠だった。


そして、膨大な砂漠地域を見て出た感想がそれだった。僕の感想にアムは当たり前、と答えたが、僕の脳内には違和感が全開で襲ってきた。この砂には魔力が込められている。


自然物には魔力が最初から込められる事象など存在しない。他の世界ではありえるかもしれないけど、僕はそんな世界を創った覚えはない。


少し、嫌な予感がする。世界が滅ぶほどの強烈な危機ではない。けど、この地に厄災が降りかかるような気配がする。これは世界を創った創造神である僕の勘。これが僕の気のせいならいいんだけど……。


「ポセイドン様、何か考え事が?」

「いや、何でもないよ。気にしないで。……あ!見て見て、砂漠名物の砂漠守護竜王デザート・キング・ドラゴンだよ」

「それ普通なら恐怖する所では?」

「ま、そうかもね」


突撃してくる砂漠守護竜王を僕は天力を手に纏って受け止める。うーん、守護竜王という割には弱いんだよなあ。多分幼いんだろうけど……それより幼いシュンと会ってきたからかな。ちょっと弱く感じるな。


受け止めている右手の人差し指以外を離し、魔力と天力を混ぜた力を指に収束させて発散をする。衝撃が砂漠守護竜王の頭部に突き刺さる。僕によって与えられた激痛で砂漠守護竜王は体が震え、足が覚束無い。


圧倒的な格差を見せつけられ、強烈な威力を受けても尚、僕を瞳に据えている。そんな砂漠守護竜王が次に起こした行動……それは人化をして僕の目の前に跪く事。その行動に隣にいるアムはつい警戒態勢を解いてしまい、僕はため息を吐く。


僕がその性質を創造したとは言え、見事に初代竜王の誇り高い性格が伝わってるよね。普通の感性を持った強い竜、どこかに居ないかなあ。


「流石の強さですな。海王星の主君、ポセイドン様」

「君たちは普通に会えないの?何で毎回戦いにくるのさ」

「それが竜の本質ですので」

「……どこかに性格が突然変異の竜居ないかな」














極式『真言神言』


「全ては契り。全ては契約。今この時は古の時代に生きていた旧友英雄との誓いによって存在している。その誓いが壊された今、我々を止める者は何も無い。世界の崩壊よ、来た……」

「ポセイドン様!?ポセイドン様!?」


ブチ切れ状態の僕を必死で止めるのはアム。僕が今使用しようとしているこの極式。それは僕が持ち合わせている式の一つであり、ある言葉……所謂詠唱を口にする事で威力を底上げする僕のオリジナル式だ。


他の神や天使等の上位存在の中にも、詠唱という全開で羞恥心が襲ってきてしまう式を使う者は居る。だけど、極式で使用する者は居ない。


それには極式を使用可能な者が少ないのもあるのだが、態々する必要が無いのも理由だ。それは僕にも適応する。


ならばどうして、という事になるのだが、僕の実行しようとしている行動が原因だ。


その行動とは、世界から此の砂漠を全てを消失し、崩壊させるというもの。破壊なら可能だが、消失→崩壊は『真言神言』を使用しなくては不可能である。


「何で止めるの。アム!」

「そりゃ止めますよ!愛しの夫が『人の子』として愛しているのに奪おうとしてるのですから。私はポセイドン様に怒りでそんな行動をして欲しくありません。それをして後悔するのはポセイドン様でしょう?」


その言葉に、頭が冷やされる気がした。流石に怒り過ぎてしまったかもしれない。けれど……。









       許せる筈も無い。








『此の女の名前?ありませんよ。態々付ける必要が分かりませんからね。……何故、と言われましても、呪いの子なんですから。母親を殺すという近親殺しの罪を被った罪竜です。むしろ生かしてやってるのだから感謝して欲しいですね』


下劣な笑みだった。意識も無い状態で、己ではどうする事もできない状態で、母親を殺してしまったのが罪?


その母親は竜にしては体力がなさ過ぎる事など、皆知っていただろ。


『気色悪いなあ、おい!竜がチビでガリガリとかマジで有り得なくね?お前は創造神様に、竜神様に見捨てられたんだよ!なのに何で生に縋り付いてんだよ。生きたいって足掻いてるのか?そんな権利お前にはねえんだよ、カスが!』


カスは何方だ。


何が気色悪いだ。お前達竜が悪魔の事を嫌いだからって、その悪魔達が使う力、悪力を持っているからって何だ。常識など、いつかは崩壊するものだ。お前達の古く腐った常識を若人たちに押し付けるな。


そして容姿に関しては碌に飯を与えなかったせいだろう。そんなお前達が、あの子の容姿を語るでは無い。


『生きている価値が無いと思いません?彼奴。俺たちがお前は罪竜だと言っても死のうとしない。

それどころか醜く生きようとする。本当に無様っすよ』


それはお前が決める事では無い。生きている価値が無い、それを決めるのはこの世界の創造神である僕の役目だ。お前が身勝手に決めて良い事では、判断して良い事では無い。


怒りは少しあるが、治った。ならば次僕がやる事は一つ。


「あの子を救出する。その為には、あの竜共下水道の犠牲も厭わない。アム、夜天誅を呼んで」

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