第13話 精霊の客人代理 Ⅲ
精霊を気絶させた後、アムの居るフォーネスへと帰還し、宿屋を取って寝かせていた。
戻った時に案の定、アムから激しい攻撃を負わせ過ぎ、と叱られてしまったが。その自覚は僕の何にも勿論存在しており、流石にやり過ぎだな、と反省している。しかし、言い訳をさせてもらうなら、近頃の相手が原因だと言わせてもらいたい。
最近真面に戦ったのは、少し前の親玉猿程度であり、そんな親玉猿よりも遥かに強いこの精霊と戦ってしまえば気分が上昇してしまうのも仕方ないと思うのだ。
「それ、何方にしてもポセイドン様の責任では?」
見事な正論に言葉が出なかった。もしかして僕は戦闘狂のバカである武神を馬鹿にできないのかもしれない。いや、確定で不可能である。
戦いの最中で面白い、楽しいと感じてしまったのだから。その事実に気づいた僕は、床で寝っ転がり、ネガティブモードを全開にし、呻き声を口から出す。僕よりも上に顔を位置しているアムからは呆れたような視線が__事実として呆れているのだろうが__突き刺さる。
視線だけでは無く、口からも「何をやっているんですか」と呆れたような口調が飛び出る。しかしそれすらも聞こえないようにし、床に伏したままでいれば、僕の右側にアムが近寄り、囁くように口を開く。
「起きてください……だ、ダーリン」
「はい!起きます!……あ、精霊くん」
日頃から恥ずかしがって、中々僕の事を夫だと明言しないアムが、『ダーリン』と呼んだ事で反射的に床から起き上がってしまった。そして最初に目が合ったのはアムでは無く、ベッドで寝ていた精霊とだった。
精霊の瞳は困惑と警戒だった。警戒に関しては当たり前だろう。先程も言った通り、僕にだって自覚はある。精霊という格下相手に少し
もしかしたら、初撃のトリアイナだけで魔力に還ってしまうかもしれない。……いや、あれでも危なかったかもしれない。プリミラが夢幻の精霊王の事、その息子の事を知っていたから加減が可能だったのだ。もし知らなかったら……命が絶たれている可能性は十二分にある。
昔から精霊の基準がアムと
「君、名前は?……あぁ、そういえばある地域では自分から名乗るのが礼儀なんだっけ。僕はポセイドン、ただの海神だよ」
「何処がただの海神ですか……私はアムピトリテ、半精霊半神であり、ポセイドン様の眷属です」
先程僕の耳に『ダーリン』と呟いたのに、精霊へと紹介する時に伴侶だと、嫁だと言っていないのは恥ずかしがっての事だろうか。もちろん、僕がそれを見逃す筈も無く、「そして僕の可愛い可愛い嫁だよ」と言葉にする。
その言葉に赤面をし、隣に居る僕にポカポカと可愛らしい攻撃をしているのだが……其方の方が恥ずかしい事だと思うんだけど。あれかな、目の前の友人の義息子の目の前で甘ったるくイチャつくのは恥ずかしくない事なのか。うーん、アムの基準が良く分からないや。
「俺はシュンです。夢幻の精霊王の息子、義理ですけど。……すみません、ポセイドン様。俺
勘違いしてしました。義父さんがため息吐いてて、その後に届けて欲しい物がある、と言われたんです。それで、ポセイドン様が義父さんを困らせている人物かと思って。自己紹介をしてもらっている最中に義父さんから連絡が来て教えてもらいました」
これは何と言うか……誰が一番悪いとは言えないな。全員平等で悪い。僕も
一方を見れば、シュンに大きく非があるように見えるかもしれない。けど、
僕と
……というか、戦闘しに来たのはミスって事か。昔なら故意でしたと思うんだけど……。
変わったんだね、
昔は誰かに見てもらいたくて、僕に捨てて欲しくなくて、悪戯小僧だった。まだまだ子供だから、見て欲しかったんだ、と言いたかったんだと思う。
それが、今はこれだ。肉体は育ってきたとしても、精神は子供だった
子供の育つ速度、本当に速いよね。頭に浮かぶ
ゼウスお兄様やハデスお兄様、クロノスお父様やレアお母様、ウラノスお爺様、ガイアお婆様、ヘラお姉様にデメテルお姉様、ヘスティアお姉様。アテナちゃんやアポロン君、
僕、僕に師事した事しか知らなかったからね。
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